◆[山形市]第14回 みちのく阿波おどり 秋へ躍動(2018平成30年9月1日撮影)

天気予報は午後から晴れる、だった。
なのに一向に回復の兆しが見られない。
黒々とした地面を車が這い、山並みを雲が這う。

それでも傘を片手に、焼き鳥の匂いを我慢し、
人々は期待の阿波踊り会場へ向かう。

踊りの邪魔になると警告文が自転車に付けられる。
と、勘違いするほどに阿波おどりの期待が高まる。

しゃちほこに抱かれるようにしてスマホする。

喧噪は路地を伝って、ノウゼンカズラの鼻先をかすめる。

浮かれた人々は、食欲も半端ない。

踊りのゴールには柄杓が待っている。
「早ぐ来てけろず、雨さ濡れでしまうはぁ。」
「雨さ濡んねくても、お前は水に濡れる運命だぁ。」

間もなく始まる「激踊」を祝すように、
モンテの「激闘」看板が見守っている。

「これば無料で見られるんだじぇ、本場は有料なのに。」
「規模が違うっだず。」
徳島の総踊りなの見たら、卒倒するほど感激するに違いない。

体が足先が指先が、観客を魅了する。

小雨など雲散霧消。
その熱気に小雨はどこかへ消え去った。

今年は、今年も?阿波踊りだけじゃない。
仙台からも岩手からも青森からも、踊りに参戦して笑顔を振りまく。

スズラン街が早くも熱気に包まれている。

毎年毎年、山形に笑顔をありがとう。

雨上がりの夕刻は涼しささえ感じられる気温。
なのにこの汗。
夏の熱気がスズラン街にだけ戻ってきたようだ。

日本の粋と、踊り手の息を感じる。

六魂祭で初めてさんさ踊りを見て、いっぺんで好きになった。
カムバックさんさ踊り。

こういうのをどや顔というのか?
良い顔してる。

みんな同じ東北。
がんばっぺ東北。

細く可憐な指先が奏でる夏の終わりの音色。

空が真っ暗になる前に、すでに祭りは佳境に入っている。

光っているのは金歯か魂か!

このキリリ感がたまらない。

はっきりいうげんと、私の髪の毛をなんぼ引っ張っても、
こうは出来ない。

激しい踊りの中で時折見せる優しいまなざし。

スズラン街に輪っかが出来、つむじ風が巻き起こり、
空へ熱気が舞い上がる。

両手で街の湿気を扇いで、ひょうきんさを表す。

指先に人々の視線が絡みつく。

青森からも参戦か。
ミニねぶたが愛嬌を振りまいている。

ハネトの動きは、写真として撮ることが不可能なほどの動き。

激情が体から溢れるよう。
その口からは魂が飛び出そうだ。

祭りの熱気に包まれて、小瓶たちは体中に汗をかく。

人々はすれ違うのも大変だ。
こんなことは遠い昭和にあった仮装行列以来かもしれない。

キュウリがみずみずしいんだが?
周りの湿気がくっついっだんだが?

「オラだも踊っだい。」
ガスボンベはこっそり思う。
「イヤイヤ、おまえだから踊らっだら大変だがら。」

「金魚すくい、んねがら。」
「んだら、瓶すくいだが?」
「んねず。」

踊りの熱気を肴に酒を飲む。

ガス灯が際立ってきた。
空と祭り会場の際がくっきりとしてきた。

「ほだい手ばさだしても、餅には限りがあるんだがら!」
こんなときは体に手が何本も欲しくなる。

「まぶしくて祭りが見えねどら!」
「何がゆたが?」
「あ、いえなにも・・・」

あっちにもこっちにも笑顔、そして笑顔。

「地面ば叩ぐ仕草だが?」
背中が汗で青い、じゃなかった。背中が葵。

いつの間にやら路面は乾いている。
喉も異様に渇いている。

振りまけ笑顔。
笑顔のお裾分け。

放射状に踊りの輪が広がっていく。

圧巻の姿に、みんなお手上げ。

狭いところへ無理無理割り込んでいくように突進する。

この姿見たさに、何人の観客が訪れたことか。

潮が引くように観客が帰り始める。
これで夏も終わったんだなと、人々は心の隅に寂しさを感じている。

大バケツに入っていた氷は、
行き先もなく路傍で灯りを反射しながら溶けるのを待つ。

家で一杯すんべや。
その匂いに人々は我慢できない。

山並みはとおに暗闇の中へ消えている。
テールランプがすいっと伸びて家路を急ぐ。
よ〜し、今度は秋祭りだぁ。
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