◆[山形市]山形大花火大会 鉄塔に掛かる(2018平成30年8月14日撮影)

ミラーも仕事をそろそろ終わろうかという夕暮れ時。

須川へ流れる水路には、日差しの名残が水面を漂っている。

太陽は山際へ沈む前に、今日最後の光を放って奥羽の山並みや山形の市街地を輝かせている。

光を失っていく虚空を蔓が彷徨う。

土塀の皺にも少しずつ闇が染みこもうとしている。

ゴミ分別は人間の永遠の課題になっているけれど、
とりあえず今日は西日に紛れて、一時的に忘れてしまおうか。

「今日はあたしが主役んねんだて?」
風車はカラカラ回りながら、今から始まるらしいイベントに興味津々。

いつもなら寂しくなる時間帯。
でも今日は胸が高鳴ってくる時間帯。

樹木の間からも、そのときを待つ期待感がにじみ出てくるようだ。

サワサワと鳴りながら風を受け流す竹は、今日最後の太陽を見つめている。

「んだべずねぇ」
「おらほもだぁ」
「はえずはやんばいだなぁ」
意味は不明、そんな会話を霞城セントラルは西日を浴びながら見守っている。

夜のしじまを恐れるように、寄り添い始めている。

まだまだ頭を垂れるほどにはなっていない稲穂。
夕日はその稲穂を黄金色に染めている。

「こっだな田んぼの真ん中で退屈んねがよ」
「置かれた場所で生きでいぐしかないのよ」
自販機はめげるでもなく、どっしりと構えている。

自販機のパネルに夕日が映り込む。
いつもと違う周りの雰囲気を感じ取って、じっと自販機は耳を澄ましている。

「一年に一回だげだがらなぁ」
「どっちさ上がるんだべなぁ」
「どさ上がても、こっからだったら必ず見えっから」
盆地のど真ん中に親子揃って花火待つ。

いつもはスイスイの、あかねヶ丘から伸びる金沢道路。
今日ばかりは道路の両側にびっしり車が停まり、そのときを待っている。

ガードレールにも夕日が張り付いている。
しかし、そのオレンジ色も少しずつ色を失い始めている。

「ほだごどしてボーッとしてっど、チコちゃんからごしゃがれっからなぁ」
「あ、まぢがた。花火の音にびっくりして、ひっくり返っからなぁ」
エノコログサは、これから始まるビッグイベントをまだ知らない。

重く垂れるひまわりは、
夜の影も背負って益々重みを増していく。

「こっちゃ行った方が見えっから」
東北中央自動車道をくぐって飯塚方面へ走り去る自転車。

アザミと鉄塔。
なんだが小説のタイトルみだいだな。
これから花火の撮影だというのに、人間はふとまったく関係の無いことを考えるものだ。

フェンスにこびりつく夏草たち。
疲れた体を有刺鉄線に巻き付けながら夜を迎える。

今日ばかりは、月は前座か。

いよいよ年一回のイベントが始まった。

変電所の鉄塔に花火が絡まっている。

鉄塔達も巨大な体を微動だにせず、花火を眺めている。

直立不動の冷たい鉄塔と、ドンドン空に舞う熱い花火のコラボが続く。

「あそごは鉄塔が邪魔で見らんね」とある方がいっていた。
それを聞き閃いた。
そんな面白い場所はないじゃないかと!

体にまとわりつく虫たちを振り払いながらシャッターを切る。
背中に汗がべっとりと張り付いている。
そろそろ潮時かと、担いできた機材をまとめ始める。
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