◆[山形市]西蔵王・野草園 花びらの中の小宇宙(2018平成30年5月5日撮影)
〈お断り〉
まったく今までとは違うジャンルの撮影に挑んで案の定失敗しました。
しかし、せっかく撮ったのだからということで掲載しました。
同じ写真とはいえ、違うジャンルに手を出すとこうなってしまいます。
以後気をつけます。

フロントガラスを滴が流れていく。
「ああ、なんだべず、せっかぐ来たのにぃ。」
西蔵王の野草園駐車場で、ハンドルにもたれかかりながら空を見上げる。
「せっかぐ来たんだがら、しょうがない行ぐが」

「野草園さどだな花が咲いでっかなの、さっぱりしゃね。
咲いっだどしても名前なのさっぱりしゃね。」
ということで渡されたパンフを見たら、シラネアオイだそうです。

水滴を振り払ってエイリアンが首を徐々にあげようとしている。
と表現したものの、実は大好物のコゴミ。
エイリアンのようにバグッと食ってやる。

「名前しやねっす。直径1センチぐらいだっす。」
滴は森の青葉を映して今落ちようとしている。

「防水のダウンジャケットだが?」
「ほいに見えっげんと、若々しい葉っぱっだず。」

子供の日だからとウサギがお出迎え。
でも、ウサギによる一切の怪我・汚れ・破損などは責任を負わないと強い口調。
なんぼ子供でも動物との接触は自己責任なんだ。

「俺ば見でうわさ話が?」
ウサギたちは寄り集まって、こっちをチラチラ伺いヒソヒソ話。
すみません、自意識過剰でした。ウサギが俺に興味を持つわけがない。

「もらていぐだいぃ。」
「無理なごどゆうなず。」
親から叱られ、子供は口をとがらせ、ウサギは安堵に緊張を緩める。

「地吹雪んねんだがらよ。傘ば下さ向げでも意味ないず。」
「んだてよぅ、すっぱね跳ねだら汚れっべ。」
「すっぱねは足の後ろさ付ぐの。」

「本物はどさいだの?」
「ほだごどやねで買ってってけらっしゃい。」
馬は無表情で横を向く。

「やんだぁ、おかないぃ。」
「ほだごど嫌がっど、お母さんさゆてけっからな。」
「馬なのなんにもやねで我慢してんのに。」

パカパカと樹木の周りをゆっくりと音が廻っていく。

「葉っぱは一枚ずつ広がるんだが?それとも一気に広がるんだが?」
いずれにしても広がったら、もう食えないコゴミ。

「ムーミンさ出でくるニョロニョロだが?」
「んねべした、だいたいニョロニョロは王冠みだいなもの被っていねし、両脇さ手みだいなものが生えでるし。」

花びらには滴がよく似合う。
ヤマブキの雄しべ達は、滴を取り合っているのか避け合っているのか分からないけれど。

時折雨が強く降ってくる。
杉木立に囲まれた一角に、似つかわしくないトイレがあったので雨宿りする。
木立の間を赤いジャケットが見え隠れしている。
こんな雨の日でも、雨の日だからこそ?草花を愛でるために訪れる人がいるんだ。

ちっちゃな花弁にちっちゃな滴。
直径5ミリほどの世界が水滴に覆われている。

「菜の花なてどごでも見るいがら。」
傘の一団は目もくれず歩き去る。
「菜の花も食うど、んまいんだじぇ。」
傘の後ろ姿を目で追いながら独り言。

「牛タンだが?」
牛がベロを出してあっかんべぇをしている。
パンフを見れば翁草(オキナグサ)。

芽がパッカーンと割れて、両腕が飛び出した。
オオバクロモジ(クスノキ科)だそうです。

「花びらのもげてしまったタンポポがぁ。」
「ほいにやねで見でけろず。」
「野草園さいるくらいだがら西洋タンポポなのんねべね。」
「わがらね。んだて私はこごで生まっだんだもの。」

「産毛を空に向けているけれど、名前は?」
「教しぇらんね。」
野草園の草花は珍しいものばかりで、名前を紹介できずに困った困った。

ワイワイガヤガヤと明るい声があちこちに散らばっている。
ウワミズザクラ(バラ科)です。

あんまり賑やかなので、もっと近づいてみる。
雄しべ達がやいのやいのと言い合いをしているようだ。

水滴の重さに雄しべ達は倒れ込んでしまった。
「なんと雄しべ達のだらしないことよ。」とツンとすまして雌しべが言い放つ。

この芽にピンときたら山形通。
「赤い実ば見っど誰でも分がっべげんとなぁ。」
山形市の木ナナカマドだっす。

「ダラーンと垂れでんのんねがら、今から勢いよぐピーンとなっから。」
トチノキの若葉だっす。

大気の中をクンクンと嗅ぐような仕草の雌しべと雄しべ。
「ツツジだが?シャクナゲだが?」
「どっちでもいいっだべ。」
「いや、いいぐないべ。」

どれを見ても、すべてが頭三つだった。
キングギドラが。いや、ウラジロモミ(マツ科)です。

「さっきも撮ったべ、おんなじの出すなず。」
「いや、さっきのはツツジで、これはアズマシャクナゲです。」
黄色い雌しべが自己主張するように強く否定する。

「可愛そうだがら、落ちでも撮ってけっからな。」
桜はポトポトと落ちて地面に還る。

「んだらば、まだな。」
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