◆[山形市]霞城公園・城北 昭和橋は遠くなりにけり(2017平成29年12月10日撮影) |
束の間の晴れ間かも知れない。 ツブツブと山形人は、晴れ間を惜しむように、日差しを全身に浴びる。 |
これぞ山形。 「なにがや!」 「んだがら、このびじゃかっだな。」 あちこちにびじゃかがあってこその山形らしさ。 |
今日はいつになく霞城公園内の車が多い。 停めるところを探すのが大変なくらいだ。 隙間からこちらを覗き込んだ猫は、その後太った体を悠然と別の車の腹の下へ移動した。 山形市の公園内猫撃退作戦は苦戦しているらしい。 |
これは撮っておかねばならないと思った。 山形市民や高校球児が長年お世話になった市球場。 取り壊されるまでの間、初冬の日差しが球場の周りを包み込む。 |
落ち葉さえも勢いを無くし、色褪せて地面に突っ伏している。 その上へ被さるように、樹木の影が曲線を描く。 |
「おまえはどこの者だニャーッ」 北門を出てすぐに猫から品定めに合う。 どうやら不審者と認定されたらしい。 威嚇の表情でノソノソと枯れ草の上を近づいてくる。 |
数秒で私を無害な人間と認定を覆した猫。 カメラの構えに応ずるように、霞城公園の土手を背景にポーズをとってくれた。 |
初冬の微粒子がか弱い日差しに混じっている。 虚空を見つめる猫の視線も、大気も動きを止めた。 |
「何釣れるんだっす?」 「バスに決まてるっす。」 「山交バスが?」 相手にするのも面倒だと、少年は水面へ体を向ける。 |
初冬の北門は一幅の絵画。 その絵画の中で少年の竿さばきは堂に入っている。 |
光をぷっくりとため込んだ穂が、空中を浮遊する。 儚い夢だと知りつつも、いつまでもこのキラキラの中にいたくなる。 背後に迫っている冬を思うと、山形人には小さな光がやけに愛おしくなる。 |
霞城公園から背後に目を転じれば、パッと明るい日だまりが左の家並みの影から現れて、右の家並みへ消えた。 |
トリトマを手前に、取り留めの無いことを思う。 カモはネギを背負ってこず、お堀に波紋を広げて優雅に水と戯れる。 |
すっかり旬を過ぎたトリトマは、それでもシュンとせず、シャンと背筋を伸ばしている。 お堀の水面は、その姿をくっきりと際立たせている。 |
さっきまでシャッター音をかき消すような音はどこにも存在しなかった。 それほどまでに街は息を潜めるように静かだった。 轟音がシャーッと過ぎ、しばらく枯れ草は泳いでいた。そして、また静寂に包まれる。 |
人々は雪におびえて下を向く。 積もっている雪に足元を取られないように下を向いているんじゃない。 これから確実にやってくる雪の事を思って陰鬱な気分になってしまうのだ。 |
表通りのなんと賑やかなこと。 この賑やかさが人々の多さなら喜ばしいが、 騒然とした工事現場の中を車が行き交うだけ。 |
昭和も終わり、平成も終わりの時が決まった。 ここ昭和橋は今まさに新しく生まれ変わる付け替え工事中。 今年中に出来るのなら平成橋との改名もいいが、来年以降なら新しい年号の橋名にしたらどうだろう。 |
「城南橋みだいに橋の下さ通路がでぎるんだが?」 「わがんねげんと、なんだがすんばらすぐなりそうだずね。」 「どだごど出来っか楽しみっちゃあ楽しみだ。」 |
工事で街が騒々しいのは決して悪い気分じゃない。 なんとなく活気を感じられるから。 でもそんな時代は長く続かない。 いままでの工事といえば、新しく何かを造る工事が主だった。 これからの工事は、昭和に造った物を維持するための工事が主となる。 つまりこれからは、新たに夢を広げる工事が少なくなり、現状をなんとか維持するための工事が多くなるのだ。 |
橋一つで光景は変わる。 「目立だね野暮臭い橋だっけもねぇ。」 昭和橋も城南橋のように広々とした近代的な橋に生まれ変わり、 闊歩するのも楽しくなりそうだ。 |
喧噪の昭和橋工事現場のすぐ脇に、 癒やされるような空間がポッカリと、そして静かに佇んでいる。 |
「いづなたら出来るんだべね?」 「ほっだな、しゃねぇ」 「自分の将来だて分がらねのにがぁ」 少年たちは目の前の事に精一杯だ。 |
人生の前に立ちはだかる迷路のように、工事現場が雑然としている。 自転車の少女は、これではいけないと俯瞰すべくペダルの上に体を乗せる。 俯瞰すれば全体像が見えてくる。 |
「しょうないずねぇ。」 おばちゃんは工事を受け入れて迷路をゆっくりと歩く。 もちろん自転車に乗るのを諦めて。 |
七小がやけに近代的だ。歩道橋が無くなり、やけに物足りない。 道路が広がり、やけにスカスカ感がある。 つまりこの一帯はぐえらと変わり、昭和など跡形もない。 |
「ギンナンなんたべなぁ」 「臭っさい、臭っさい、まだまだいっぱいあっべなぁ」 落ち葉の先にはギンナンがまだまだ、ふだふだ落ちていた。 |
「ふんからふんからて歩きずらいてゆていいんだが、気持ぢいいてゆたらいいんだが」 そんな事を思いながら、落ち葉を踏みしめていると、 突然種?卵?いや鈴掛の木の実(直径3〜4センチくらい)が辺り一面に落ちている。 拾ってキーホルダーにしたくなる大きさだった。 |
落ち葉はやや湿り気を帯び、地面にひっついている。 弱々しい日差しは、やさしく撫でるように覆い被さる。 |
ブランコに乗った落ち葉は、一吹きで地面へ舞い落ちる。 刹那のブランコとのふれあいだった。 |
女子ソフトボール部の元気なかけ声も来年までお預け。 深閑としたグランドの上空に雲の帯がゆったりと伸びる。 |
西門から人の声が微かに流れてくる。 霞城公園は街のど真ん中にあるから、冬であろうが夏であろうが、 山形市民の通学路であり、通勤路であり、散歩道でもある。 |
裸になった枝が虚空を彷徨う。 点数のボードも退屈を相手に冬眠状態。 |
山形の中心部の七日町のビルを見ながら、その奥の奥羽の山並みを眺めながら、 霞城公園を散歩する山形人極上の愉悦。 |
「スケボーの選手なんだがっす?」 「んねっす。趣味だっす。」 「山形の人だがっす?」 「んだげんと、学校は仙台だっす。」 これが山形の今。仙台の学生の何割かは山形人が占めている。 私の息子も甥っ子も、みんな仙台。 もはや山形は仙台市山形区となってしまったか。 あの奥羽の山並みの向こうは仙台市だもんなぁ。 |
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