◆[山形市]五日町・双葉町・駅西 夏ぶり返す(2017平成29年8月26日撮影)

なんだか久しぶりに青空を見たような気がする。
仙台は36日雨降りだったというし、今年の夏は煮え切らない芋煮のようだった。

サルスベリが今を盛りと、空へクチャクチャした花びらを向けている。

ぼろぼろに朽ち果てた板塀を見上げながら、
秋の使いは穂を揺らす。

少し歩けばやっぱり暑い。
柿の木の下に待避して街並みを見れば、家並みの向こうにちょこんと霞城セントラル。

コスモスが当たり前のようにユーラユーラと揺れる季節になった。
背後には白い小さな蕎麦の花びらが群れている。

「イデッ、つまむなずぅ」
「空の柔らかい部分ば挟んだら、空は破けで雨降らすべな」

生まれてから何度この光景を見たことか。
あの頃から変わったのは、ほんのちょっと空を狭くした遠くに見えるマンションくらいか。

「どさ、あるんだ?」
「んだがら公衆電話よぅ」
昔はこんな仰々しい看板があったんだねぇ。
電話のある場所に必ず看板を付けるなら、現在は皆が背中に看板を背負わなくちゃならない。

店からカールは消え、看板だけが残った。

五日町踏切を渡る新幹線。
あのでかい車両が昔ながらの踏切を通過するのは、針の穴に太い糸を通すみたいな光景だ。

藤の幹は、支柱に巻き付き飲み込んでしまった。

滑り台は夏の光を反射する。
藤の蔓は日陰を探して、滑り台を覗き込む。

「夏は終わっかど思ったげんと、まだ来たじゃあ」
樹木に同化してしまったチリトリと箒は、青空をなんとなく眺める。

五日町は東洋ソーダの陰に隠れて、なんとなく存在感が薄かった。
そして今、高層マンションの陰に隠れて、昭和の面影をそっと残している。

「真ん中さデーンと電柱が邪魔なんだずぅ」
久しぶりの陽光に体中から喜びが溢れているノウゼンカズラは、電柱に濃い影を貼り付ける。

見上げるとまぶしいけれど、なんだか嬉しい。
そんな、目がパチョパチョしてしまうような太陽を見て、やっぱり天気は体を元気にすると全身で感じる。

「まだ目の前さサルスベリが」
今咲かないでいつ咲くの、と言わんばかりにその勢いで空を突く。

葉っぱの筋が透けて見えるほどに太陽光は力強い。

「いろいろ、ゆだいごどはいっぱいあっど思うげんと、皆一斉にやねで一人ずつゆてみろ」
あんまり大量の情報を一気に伝えようとしても、どれから読んでいいかわからない。

「まだ、駅西で工事が始またじゃあ」
まっさらな空き地が白いフェンスで覆われ、再び槌音が響く町になる。

「こだいフェンスで覆わっでよぅ、確定申告んどぎどさ車止めっどいいんだ?」
毎年テルサで行われる確定申告。その駐車場がこの空き地だった。

「近頃の工事現場は変わたずねぇ」
強力なミスト発生器が、あちこちでうなりを上げる。

霞城セントラルの展望室から工事現場を見下ろす。
すでに新県民会館の形が分かるようになっているじゃないか。

もうちょっとアップで見てみる。
テルサと新県民会館が並ぶようになるけれど、建物同士を繋げて、交互に行き来出来るようにはしないのだろうか。
同じような意味合いの建物だから、その方が何かと便利だし、そうしないとテルサが浮いてしまいそう。

霞城セントラルの工事が始まった時は、どんどん鉄骨が空に伸びていく様を見て、
山形も変わるなぁと喜びが大きかった。
しかし、新県民会館の工事はちょっと感じるものが違う。
大多数の市民はサッカー専用スタジアムが出来ることを願っていたのに、
その前から決まっていたことだからと、県は耳を貸さずに工事に入った。
ならば問う。
東大手門前の空き地はどうする?旧県民会館跡地はどうする?
あかねヶ丘陸上競技場西側の荒れ果てた日本庭園はどうする?
県の事業に文句を付けたら切りがない。とにかく県民に愛される新県民会館になって欲しいと願うばかり。

豪雨のために道路が冠水したわけじゃありません。
そんな撮り方をしてみたかっただけ。

間もなく止められるだろう霞城セントラル脇の小さな噴水。
たまに通りかかる子供たちが足を濡らして、はしゃぎながら走り去る。

その一粒一粒が太陽の光を捕らえてキラキラ輝いている。

木陰の下に大量の自転車。
そしてその大量の自転車にすべて黄色い違反タグ。
「なんだがなぁ」

真っ暗の夜道と、痴漢出没の危機。
私が中学生(三中)だったころのこと。

「ほいず、けだものだべ?」
「けだものて何や。俺ば動物扱いが!」
「んねず。俺がくれてやったものだべてゆたの」
全国的にケダモノとは獣のこと。しかし山形ではケダモノとはくれてやったもののこと。
四人の少年が話していたわけじゃないが、想像するのはおもしろい。

頑張って覆い尽くそうとしているけれど、
「夏は間もなく終わっぞー!」

「こだいして見っど、たまげっずねぇ」
毎日のように見ている光景でも、いまだに信じられない駅西のビル群。
中学の頃に染みついた、真っ暗で陰鬱だったイメージが未だに脳みそにこびりついている。

「何覗いっだのや?」
「随分綺麗な花だなぁて」
自分の姿に惚れ込んでしまった花びら。

双葉公園に白とピンクのサルスベリが枝を伸ばしている。
時折散策の人が通り過ぎる。そして静寂が残されるの繰り返し。

雀はサルスベリの枝に止まっても滑り落ちないのか?
それとも相当足に力を込めて踏ん張っているのか。

このサルスベリの肌を見てくれ。
猿が登れないほどにすべすべでツルッツル。

私の中学生時代の遊びの原点。(なんと40年以上前にこの滑り台がすでにあった)
こんな前衛的な滑り台で遊んだことが懐かしい。
もちろん、その頃に霞城セントラルの一角はただの空だった。

懐かしさのあまり、大人げなく登ってしまった。
ちょっと目眩がしてタイムスリップした気分。思わず携行保水液をグビリと飲んだ。
左下隅には厳然と霞城セントラルが見える。
やっぱり昔には還れないんだな。
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