◆[山形市]歌懸稲荷神社例大祭 熱波容赦なし(2017平成29年7月8日撮影)

九州は大雨だというのに、この天気はなんだ!
前線が北上する前の山形には熱波が押し寄せている。

豊富な光量と水量で壁一面が緑に覆われる。
ああ、人間がちっちゃく見える。

「タイヤには申し訳ないげんと、自転車に限るずね」
「んだぁ、こだい暑いどぎは地面なの歩がんねもの」
地面で卵を割ったら、みんな目玉焼きになりそうだ。

不格好な四角形の中に、いかに車を止めるか。
パズルを解くように白線を引いたものの、再度黄色線を引き直す。

ガラス面は、もやっとした空気を映り込み、熱波を杓子定規の対応で跳ね返す。

森を形作っている三の丸は意外に大きい。
「あの左下の人ば見っど、その大きさが分がっべぇ」

暑さをものともせず、これから担がれるために全神経を集中している御輿。

「陽当だっどさなの座らんね」
御輿担ぎを立ちながら待つのもやんだし、わずかばかりの日陰にどかっと座ってその時を待つ。

「こいにだっけが?」
「んねっだな。こうっだな」
久しぶりに結ぶのか、その手が覚束ない。

「背中さ刺すのが格好いいんだじぇ」
誰かが背中に団扇を刺せば、みんなまねして同じ格好になる。

中身は熱湯か?いやいや神聖なものにそんなことはないはず。

「ほっだな、簾のない夏なて考えらんねべ」
「簾の有る無しで、体感温度や目で感じる温度は全然違うがらね」

手水舎の竜の口からは、申し訳程度にちょぼっとだけぬるい水が吐き出されている。

「みんな揃ったぁ?」
椅子の上に危なっかしく乗るのが気になって緊張するサンダル。

「こういうのば頭隠して足隠さず、ていうんだべが」

簾は風も通せば、光も通す。

「暑いのば乗り切るには肉っだなぁ」
からあげ番長の文字が目を射るほどに力強い。

歌懸稲荷神社の境内はさほど広くない。
でも、街の真ん中にあるオアシスのような存在だ。

手水舎で口をすすぐ。
これから始まる御輿担ぎに、まずは身を清めなければならないから。

気をつけして神事をジーッと見守る。

祝詞を聞きながら、あじさいは様子をうかがう。

「花びらも暑くてダレダレだどれはぁ」
「んねず。身を守るために丸まったんだず」

背中で語る男は格好いいが、
今、その背中にジリジリと日差しが当たり、悠長に語っている場合じゃない。

場が緊張する。
暑さが一瞬固まる。
玉串が暑さを払いのける。

神聖な儀式の脇で、子供たちは退屈を隠しきれない。
誰が始めたか団扇に砂利を乗せ始めた。
他の子供たちもそれに習って団扇砂。

遂に出発した御輿。
汗が出るにはまだ早い。
大通りに出てからが見せ所、汗の掻きどころ。

天狗の鼻も、元気にまだまだ高く上を向いている。

勘亭流で書くには異常に画数の多い歌懸稲荷の文字が御輿を迎える。

足取りだってまだまだ軽やか。
でもさっき誰かが言ってだっけな。足の裏が火傷するみだいだて。

担げる幸せを満喫している担ぎ手たち。
さて、この暑さをこれからどうやって凌ぐのか。

担ぎ手も一生懸命だが、警備のおっちゃんも大変。
何かあったらおっちゃんの沽券に関わる。

御輿の行列は、そのまま麦わら帽子と日傘の行列を引き連れている。

国道の車を止め、大通りへ出る。
これぞ真夏の晴れ姿。

足取りに合わせて、黒い影もアスファルトの上で軽やかに綾織り模様。

真夏の空へ、地面へ、汗が飛び散り始めた。

「なんた?」
「この顔面ば見っど分がっべ」
顔は真っ赤になり、心持ち鼻も下がり気味。

山交バスさえ避けるしかないほど熱気を発散させている。

近代的なビル群を練り歩くのもいいが、
こんな背景にも御輿は似合う。

「足はガクガクだし、呼吸はよっくどさんねしよぅ。いやぁ参ったずぁ」
事務椅子に腰掛け、苦笑いで訴える。

御輿には、すべての信号を赤に変える力がある。

日陰のヒンヤリしたコンクリートが心地良い。
「あんまりゆっくり休むど、地面から腰が剥がれねぐなっぞ」

ペットボトルは、その指先が自分を落としてしまわないかと気が気でない。

丁度やんばいに御輿と文翔館が重なり合った。
ただ単に撮り方ですが。

子供御輿の後ろには金魚の糞(失礼)ではなく、麦わら帽子がぞろぞろ続く。

神主さんもやっと一息。
青空の下には竜山と千歳山。

「くたびっだはぁ」
「やんだぐなたはぁ」
指先は気持ちを如実に物語る。

「家さ帰たら、何が食だいなぁ」
梅雨明け前の熱波は、子供たちから意欲を奪い食欲だけを残す。

どでかい広告が店のやる気を示している。
よく見れば、いや、よく見なくてもこれは今ブレイクしているブルゾン○○○さん。
「今日の気温は35億度。んね、33度」

力強すぎる日差しは、鍵盤のような模様をくっきりと地面へ造る。
御輿の声を遠くに聞き、早ぐ家さ帰て冷やしラーメンば食だいと、
鍵盤の上を歩きながら気持ちだけが急く。
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