◆[山形市]第6回 日本一さくらんぼ祭り(2017平成29年6月10日撮影)

日頃、車が我が物顔で行き過ぎる道路を、ゆったりした気分で歩けるのが歩行者天国のいいところ。

大音響が旅篭町のビルに反響する。
何故か親爺ばかりが、高級レンズを必死に構えて一心不乱に獲物を狙っているようだ。
「女の子ばかりんねくて、他にも被写体はいっぱい街中さ散らばってっべ」
同じ親爺としてちょっとは忖度するが、大きくかぶりを振ってみる。

カメラ親爺を批判した、その口の根も乾かないうちにシャッターを切っていた。
「んだて、手のひらの動きが、こっちへおいでと誘っているみだいなんだもの」

「おんちゃん、指が凍りさふ付いっだんだげんと・・・」
「ありゃ、んだっけがぁ。忘れろ忘れろ」

私が数年前に見つけた絶好の俯瞰撮影場所に先客がいた。
ちょっとおもしろくないので誰かと思って、そーっと盗み見る。
県広報課と腕章が腕に巻かれている。
無理に寛容な気持ちを作って、笑顔で挨拶する。

若さが弾けるとは、まさにこのこと。
おじさんは圧倒されて口をポカーンと開けているのも気づかない。

今頃になって気づく。
本当に若いってすばらしい。
若さがすばらしいと気づくにはあまりにも遅すぎた。
「あ〜、腰痛い。カメラ重だい」

「ターッチ」
ペロリンはずりずりと重い体を引きずって場所移動。
そんな蒸し風呂ペロリンに触れて喜ぶ子供たち。

普段は静かな議事堂前にざわめきが充満する。
人々は目的もなく、雰囲気に浸っている。

久しぶりに人々に囲まれて、噴水も緊張しながら飛沫をあげているようだ。

整然と並んだ草花たちを見る者はなく、
すぐ脇の、いい匂いの立ちこめたフーズコートに人々は群がる。

「んまいが?」
「お父さんと一緒だがら、すごぐんまい」
お父さんはもっとこの子のためにと思ってしまうひととき。

大道芸に輪が出来る。
山形人はわにるので、思いっきり近づく人はおらず、輪は遠巻きだ。

「いまからおもしゃいごど起ぎっから見ででけらっしゃいなぁ」
※山形弁しか分からない人のために通訳しました。このお兄さんは共通語で喋ってます。

「ほりゃ、玉の中さ皆さんが入ってしまたはぁ」

「そこのカメラさん、格好良く撮ってね」
突然の振りに慌てる自分。
思わず引きつった作り笑いで応じた。

「曇天よ去れー!太陽よ出てこーい!」
そんなことをお兄さんは言っていないが、空を見ればそう言いたくなる気持ちも分がっべ。

議事堂の中へ入ってみる。
ヒンヤリした空気が迎えてくれると思ったら大間違い。
戦国武将のパフォーマンスを見るための観客で熱気でムンムン。
子供は待ちきれず、退屈と友達になっている。

「お父さん、何あんの?」
「いいがら黙って見でろ。お父さんもよっく分がらね」

そこに階段があれば上ってみたくなるし、
そこに窓があれば外を見てみたくなる。

実は議事堂全体を見られる一番良い場所が二階のここ。
二人は私に気づき、本当はもっとくっついていたいだろうに間を開けてくれた。
無粋なことに、間を裂いた自分が恥ずかしい。

それでも図々しく割って入って中を見る。

議事堂が出来た頃の人々は、
今こうして戦国武将が縦横無尽に活躍している姿を見てどう思うだろう。
「俺が若いころは、こごさ卓球台が置がっでだっけがら、昼休みになっどみんなラケットば振るったっけげんとなぁ」

議事堂と旧県庁は長い渡り廊下で結ばれている。

「電球のぶら下がり具合ど、壁面の煤け具合がグッドだべぇ」

中庭に足を踏み入れる。
360度煉瓦に囲まれて、異空間を味わうことが出来る。
誰にも邪魔されたくなかったら、ここに来るといい。
「んでも、窓から誰に見らっでっかわがらねっだなねぇ」

「窓があるんだもの、やっぱり覗いでみっだぐなっべした」
「煉瓦と木枠の窓って、普段はみらんねしねぇ」

カメラの放列に緊張しながら、そして誇らしげに舞う子供たち。
「いい記念になっべよ」

「地球、持ち上げましたぁ」

すこだまつながる祭りは、すこだま髪の毛がもつれる。

「ほっだい、はんばがてぇ」
「よぐ、足上がっごどなぁ」
そんな観客のおばちゃんたちの声を背後に聞きながら、シャッターが止まらない。

文翔館の時計台は山形の栄枯盛衰を見守ってきた。
いつも重たげに回る長針短針も、今日だけは軽やかに回っている気がする。

「本当はこの赤ちゃんも還暦ば過ぎだんだべなぁ」
県民会館前の像は、私が子供の頃からあったもの。

「ほだい空ば突っついだら、雨がこぼれでこねがよ」
「ほだな心配すんの誰もいね」

「早くていも煮会がはぁ」
「まだ、夏始まったばっかりだじぇ」
「なにゆてんの。オリンピックまでは三年あっげんと、いも煮会までは三ヶ月しかないんだじゃあ。」

「くたびっだずぁ、早ぐあべはぁ」
おじさんの気持ちが分かる年頃に私もなってきた。
山銀は何も言わず、何の感情も表さず、ビシッとシャッターを下ろしている。
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