◆[山形市]霞城公園 23度の気温に花びらも体も追いつかない(2017平成29年4月16日撮影)

光をまとって発光している洗濯物の脇を、霞城公園を目指して歩く人々。
この小路が、こんなに人通りが多いことはまれ。

「人いっぱい歩ぐげんと何事だ?」
塀を越えレンギョウの花びらが通りを望む。

「去年よりかなり咲ぐの遅いんねっけが?」
「ほんでも平年並みなんだど」
影と日差しが交互に続く道を、軽やかな会話が遠ざかる。

南門の石垣の上の人々は桜に誘われ、下の人は釣果に誘われ春の日差しを浴びている。

南門付近は本当に綺麗な広場になった。
何故か南門から車が次々と出てくる。
満杯になって駐車場に入りきれない車が、駅西口の空き地に誘導されているらしい。

「何釣れるんだっすぅ!」
「なんにも釣れねったて、春の日差しば浴びでんのがいいのよっす」
会話は強い日差しに紛れて消える。

「こごで弁当開きすっかね」
「眺め良いくて、なんでもんまいべなぁ」

まだまだ満開には遠いのに、公園内には次から次へと人々が入り込んでいく。
このままの状態が続けば、公園内は人で埋まってしまう。
人口減少の時代に、違和感を覚えるほどの人の波。

「済生館なて、山形市民は見飽ぎっだびゃぁ」
何か在り来たりな撮り方を打破したいと頭をひねった末に、こんな撮り方しかできずがっくり。

済生館の受付で「なんぼだっす?」と訪ねる。
「今日は無料だっす」の応え。
なんだて得した気分でシャッターを切る。

「ギーコギーコ、ゴリゴリ、グリグリ」
「痛っだいぃ」
手術の器具を見ただけで鳥肌になってしまう。

「煙」だけが生き残った看板。
錆びて剥がれたところには「愛」の文字があったのかも。
いや、あり得ない。

「俺の首ば撮っておげ」
「恥ずがしいがら、変なごどすんなずぅ」
といいながら、すでに奥様はスマホで撮る準備。
※首洗い石鉢……最上義光が谷地城主白鳥十郎長久を惨殺し、その首をのせたとされる石鉢。
病院である済生館の脇に「首洗い石鉢」があるという不思議な組み合わせ。

「一番いいポーズとらんなねっだなぁ」
親の注文に応えようと、子供は思いつく限りのポーズを作ってみせる。

「なえだて騒々しいずねぇ」
「まあ、ひがむなて。桜が主役だがらしょうがないべぇ」
土筆は首を伸ばして辺りをうかがう。

桜の季節だけは新幹線が日本一スピードを落として走ってくれる。霞城公園の土手。

「手離すなよ」
「いわんねくても離さね」
「一生離すなよーッ」
心の中でエールを送る。

「右側のおんちゃんも左側のお姉さんもそっくりだずね」
「もしかして描いっだ方は、指名手配犯の似顔絵ば描ぐ方んねよね?」

「こいに構えらんなねんだず」
「腰痛くて、ほだなごど構えらんねぇ」
「ほだなごどゆったら、コンテストで賞とらんねべな」

「あど何日くらいで満開になるんだべねぇ」
「んだずねぇ、観桜会の日と満開の日が一致するのは難しいずねぇ」
琴の音に合わせて、桜の花びらが舞うというのは、条件がそろわずなかなか難しい事なんだな。

「マスクしったまんまで頂くようなことがないようにさんなね」
風が強く、乾燥した大気が人々に花粉症というありがたくないお土産をプレゼントする。

「ウーッ、便所はどごだーッ!漏れだらなにすんべぇ!」
手すりにつかまり、我慢を通り越しながらトイレを探す少年に見えるが・・・

兜が大空に向かってキラリと光る。
「我が最上軍よ、時は満ちた。上杉軍を向かい打て!」
「何百年もほだなテンションでいだらくたびれっから、たまにはゆっくり花見でもすっべぇ」

まだまだ地に足が着かない子供たち。

「ほごのおんちゃん!ちぇっとどけでけねがっす」
「あぁ、おんちゃんの顔が入ってしまたはぁ」
舞妓さんとおんちゃんが同じ画面に収まるのも一興。

これ以上ない笑顔と、これ以上ない天気。

「どごまでしぇでってけんの?」
「本丸の入り口まで」
「本丸さは最上義光が待ってるんだが?」
「んね、次に乗る子供が待ってだ」

「どっちが綺麗に撮っか競てんだが?」
人は桜を見ると、みんな惚けたように同じポーズをとってしまう。

「ほだい走んな。ひころんでしまうべな」
「桜ば見っど走っだぐなるんだも」

「なして駄々こねっだのやぁ」
「んだて、本丸さ天守閣ないんだもぉ」
提案です。
確かに山形城には天守閣がなかった。
今となっては歴史を変えようもないが、観光地となった現在、
せっかく本丸の中に入っても何も無いので、みんな拍子抜け。
ならば本丸の中に済生館を移築してはどうか。
やはり本丸の中になんにも無いのは寂しすぎるし。でも、最上義光さんはごしゃぐべなぁ。

何回もいうげんと、今更済生館ば真っ正面から撮ってもありきたり。
そういえば、七日町にあったころは建物は東を向いていた。
なのに霞城公園に移築されてからは北向きになっている。
これはカメラマン泣かせもいいところ。だって完全に逆光なんだから。
だからこそここは最上義光さんに我慢して頂き、本丸に東向きで移築していただきたい。

捕まえた宇宙人を連れて行く姿じゃない。
これぞ家族の幸せの一瞬。

「そろそろあびゃあ。んぼこもやんだぐなたもはぁ」
桜の枝は車の真上に迫り、フロントガラスをのぞき込んでいる。
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