◆[山形市]下条 春の兆しはないものか (2017平成29年1月29日撮影)

数年前の下条しかしらない人が見たら何かが違うと思うはず。
スーパー業界の陣取り合戦はすさまじい。
ヤマザワがあった場所に、そのままヨークベニマルの看板が掛かっている。

下条の三叉路も様変わが激しい。
山形市は生きていると実感する。

でも、ちょっと路地に入れば昭和の匂いプンプン。
それが下条のいいところ。

「ちぇっとばり剪定しておぐがどもてよぅ」
久しぶりの太陽を顔に受けながら、まぶしげに作業する。

「まだござっしゃい」「ありがどさま〜」
やはり山形人に通用する言葉で声を掛けないと、自販機の飲み物も売れねんだべな。

ほっだい積もた訳でもないので、屋根から垂れる雪も力強さに欠けている。

狸?猫?カラス?
太陽が顔を出したおかげで、足跡がくっきりと浮かび上がる。

「重だいずぅ」ベンチがいう。
「オレも重だいずう」プランターがいう。
「自分が重だいずぅ」雪がいう。
雪は水分をたっぷり含んでいるので、自分の重みにもがいている。

下条の大通りを通っていては気づかない広々とした畑。
住宅が密集しているようで、下条にはこんな畑が隠れている。

あんまり天気が良いものだから、
スコップはカチカチに固まった筋肉を天へ思いっきり伸ばしている。

「頭さ掛げんなよ」
麦わらは背後の気配を察知し、如雨露に釘を刺す。
「なして気づいだのや?後ろさ目あんのが?」
冬の畑は退屈。

「気持ぢいい〜」
冬の晴れ間は清々しくて気持ちが凜とする。
蔓さえも体をくねって体中の凝りをほぐしている。

節分もまだだし、春など欠片もないのだろうなと思って雪原を歩く。
「こいずぁ春の兆してゆていんだべがなぁ?」

「春ば告げる水仙んねべしなぁ」葉っぱに疑いの目を向けながらも近づいてみる。

何が春の兆しはないんだべがと枝先にも目を凝らす。

「おまえは年越したのがぁ」
「早ぐ土に還れはぁ。そのほうが楽だべ」

「団子木ずぁあんまいし、なんの実だべ」
一冬ですっかりやつれてしまった木の実たち。

ほんの数秒後には地面へ落ちることを知っているのか、氷の欠片。

北駅西口へ向かうメイン道路は、昭和でむせ返るほどの空気をまとっている。

鈴はすでに腹の中へ春のぬくもりをため込んでいる。

観光地でもなんでもない路地には、上質の隠れた街並みがあった。
堰の流れと路地と竹林が一体となって、凍った気持ちを溶かしていくようだ。

「おらぁ、何ば掲示しったがも忘っだじゃあ。昔の話だものぉ」
掲示板の骨組みは茶色い顔を陽に当てながら、せせらぎの音をいつまでも聞いている。

軽トラが走り去る。
しばらく静寂が訪れる。かと思いきや、左沢線のガードを二両編成の列車がガーッと音の波紋を残していく。

「これこそ春の兆し、んねがい?」
「トタンの反射で枝が暖まんの早いのんねが」
枝先はメーターをこちょばそうとしているようだ。

「おまえは随分と低いどごさ張らっだもんだな」
「上から目線でいうもんでない」
下条町五丁目11と下条五丁目12はバチバチと張り合っている。

門はあっても家はなし。

遂に下条の国道112号も拡幅工事が本格的になってきた。
ところで清水町って旧町名?

この左沢線のガードは、山形市を象徴するスポットの一つだと勝手に思う。
なにげなく市民生活に溶け込んでいるものの、
見過ごすには惜しい光景が山形には数多く存在する。

「どんだげ皺ば刻むつもりや」
「んだて誰もクリームば塗ってけねものしょうがないっだず」
消火栓は途切れることの無い車の列から、恒に風圧を浴びている。

昭和の頃には見えるはずもなかった霞城セントラルが霞んで直立している。
時を経て、この光景さえも見慣れたものとなっている。

下敷きをかざして見る太陽のように、くっきりと太陽のまん丸が分かる。
いい案配に雲がフィルターになっている。ああ、春霞が待ち遠しい。
TOP