◆[山形市]七日町 年越しを待つ街角(2016平成28年12月30日撮影)

西日が傾き始め竜山をかろうじて照らしているけれど、すでに街並みに陽は届かない。

笹谷峠のなだらかで微妙な曲線は山形市民の脳裏にこびりついて離れない。

「まさが、自分の足跡がどれだっけが探しったのんねべね」
「ほっだな暇あるわげないべず。今は繁忙期の真っ最中だもの」
宅配便のお兄さんは足早に足跡だらけから脱出した。

「なんぼ年末だて、仕事のある人がいっぱいいんのっだなねぇ」
寄り添う灯油ポリタンクは噂する。

「顔面真っ白だどら」
「しょうないっだべず。羽根がどさが逃げでしまたもはぁ」

「ありゃ?あの人さっきも見かけだっけなぁ」
台車をもって行きつ戻りつ。人生も何かを背負って行きつ戻りつ。

「たまげだぁ。アイスクリーム食ったどもったっきゃあ」
「誰もこだな寒いっ外でアイスなの食ねべず。しかも今0度だじぇ」
クレープなて洒落たものを食べたことがないので大きな勘違い。

「腹くついが?」
「なして?」
「んだて年賀状で腹いっぱいなのんねがよ」
「まだ腹八分目だなぁ」
ポストはじーっと御殿堰を眺めながら、暖かい人の手のひらから差し出されるものを待っている。

すでに街は正月気分。
青いミカンの目の先を、帰宅を急ぐ乗客を乗せた山交バスが走り去る。

「渋谷は外国人さも人気のスクランブル交差点なんだてな」
「山形一の七日町スクランブル交差点だごんたら、人さもぶつからねで、ゆったりとした気分で渡るいじぇ」

「お前自分ば戒めっだの?」
「んね、おれが注意してけっだの」
何かがおかしいが、バイクはケロッとしている。

「なんだずぅ、突然後ろから声かげるなてたまげっべしたぁ」
「悪っけっす。ところで何しったの?」
「芸工大生なんだげんとも、イベントの準備だっす」
「この寒いどご大変だねぇ」
※芸工大生は共通語で話してました。ただ、そのまま共通語で表示すると山形の皆さんはチンプンカンプンだと思い、
敢えて山形弁表記としました。

YAMAGATA フレームという何やら不可思議なことをするための準備らしい。
左下にそのやり方のハガキを提示したのでご覧ください。

この寒いのに、素手で板ぱんこをたがぐのはさぞ辛かろう。
しかし、学生たちは黙々と準備する。
「ところで、さっきから気になったんだっけげんと、その数字の羅列は何?」
「おしぇっかー、んとよ、この広場の緯度経度なんだじぇえ、すごいべ」
芸工大生の発想は地球規模。

「ちぇっとネジ寄越してけろ。」
「手冷ったくて、金属は触っだぐないっす」
「ほだごどやねで、早ぐ終わすべは」

この包装紙に懐かしさを感じたら歌おう。
しあわせーをあなたにぃ、おーぬまでぱぁーと〜。

積もっていたわずかな雪は、溝に溜まって行き場を失う。

「あたし、りんごのアッポーちゃん。寒くて辛いの・・・」
「じっとしてねで動いだら、少しはあたまっべな」
おばさんは白い息を吐きながら歩き去る。

とりあえず撮っておく。
「んだて、この一角も取り壊して新しくなるったどれは〜」
「セブンプラザが丸久の頃は、大沼との梯子が楽しみだっけずねぇ」

「出したっけがぁ?」
「何ば?」
「んだがらあの人さよ」
「んだがらあの人さて何?」
「年賀状に決まてっべず」
「ほだなしゃねぇ。あたしはあたしの分だげ出したもはぁ」

「自転車は悪れぐないんだげんとねぇ。悪れのは置いた人っだず」
黄色い警告書を付けられた自転車は、主を恨んでいるのだろうか。
「て、いうが、早くて初市がはぁ。なんだてなぁ」

「腹減ってわがらねずはぁ」
「わがらねて何が?」
「んだがら腹減ってなんともならねぇていう意味っだな。わがらねずねぇ」
けっして、何を食べたらいいか迷うという意味ではないと山形人なら知っている。

「おまえ、これ以上山形ば寒くしてどうすんの?」
「んだずねぇ。自分でも寒くてよぅ」
ソフトクリームは寒気に身もだえ、暖かいところで蕩けることを夢見ている。

「しゃねっけぇ。松坂屋のビルが真っ二つだどれは」
「いづのこめ?」
二つに裂かれたビルの間を我が物顔で寒風が吹き抜ける。

「手繋ぐとさっぱり寒くないね」
旭銀座を手を繋いで歩く姿を見るなんて、映画館に行くアベックを見て以来だ。
あれ?今はアベックとは言わない?

意匠は街角に空気のように人知れず佇んでいる。

「なんぼゆたて無いものは無いっだな」
「んだて寂しすぎっべぇ」
シネマ旭の姿が消え、そこに残るのはぽっかりと空いた空間だけ。

なにやら愚痴が聞こえてくる。
「正月なの来たて、おらださ関係ないもの・・・」
片っ方のサンダルも蛇口も空き缶もバケツも、口をそろえて人々をうらやましがる。

「車輪の下」てヘルマンヘッセが。
しかし階段を上る自転車とは珍しい。
いや、山形の人々はみんな覚えていて、さほど珍しくもなくなった。

流れゆく雲が凍りそうな水面を撫でてゆく。

バスケの網が寒風をすくっても得るものなどない。
それでも空に向かい続けるのはなんのため?

「ほっだな、ボロボロになた緞帳がぶら下がったみだいだどれ」

年末でも働く人が多いことを忘れちゃいけない。
「今頃はスズラン街は忘年会で賑やかなんだべがなぁ」

山形の空があっという間に光を失っていく。
来年はどんな年になるかなんて誰も知らない。
「年末ドリームジャンボ当だてけろーッ」
TOP