◆[山形市]馬見ヶ崎河原 夏の真ん中へ飛び込め(2016平成28年8月10日撮影)

夏はどうしても水辺に寄りたくなる。
ジャバ近くの河原にも、馬見ヶ崎の流れを見つめる人々が次々訪れる。

「なにしたもんだがなぁ」
何かを思案しているのか、何も考えずにボーッとしているのか。
馬見ヶ崎の流れを見つめたくなるときがあんのよ。山形人は。

太った蜂がギョロリと太陽を直視している。
「目がおがしぐなっから、あんまり見んなぁ」

しぶとくしたたかに熱のこもった河川敷に咲く。
誰もみてないのに、誰も関心を示さないのに。

河原沿いに上流へトボトボと歩く。
足元の周りで蝶々やバッタが、舞ったり跳ねたりしている。

ジャバから上流へ向かい、ふと振り返る。
クロネコヤマトのひょうきんな顔立ちが林の奥でジッと主を待っている。

雑木林の中でネムノキの「豆果」がぶら下がっている。
もう秋を感知しているのか、あの涼しげに咲くフワフワした花は消えている。

立秋の声を聞く頃から元気が出てくるクモたち。
あっちこっちで糸を張ることに余念がない。

リオオリンピックに一喜一憂している人間を他所に、
オニヤンマは自分の世界を生きている。

このまま上流へ向かえば、馬見ヶ崎川でも有名な滝壺がある。
でも熊が出るんじゃないかと躊躇する。
向こうから人々が来るのを見て勇気づけられ林の中を恐る恐る進んでいく。

「こだな暑いどぎご苦労様だなっす」
濃い緑を背景に、河川を維持する人々の仕事は続く。

八小や一中生なら定番の滝壺に到着。
誰も居なかったらどうしようかと心配していたが杞憂に終わる。
「あっづい山形の夏に、こごさ人がいねわげないっだなねぇ」

「あだなでっかい石ばどうやって組んだんだべなぁ」
「いやいや、そっちさ興味もだねで、水遊びする人ださ興味持でず」

滝壺側へ回り込むために草薮をくぐる。
目の前は高層アパートが建っているというのに、対岸の山側は大自然そのもの。

「水ぬるこぐないがっす?」
「いい塩梅だっすぅ」
そんな声は滝の飛沫にかき消されてしまう。

山形の中心街、七日町のビルも遠くに見える位置に、
知る人ぞ知る滝壺がある。

「誰も飛び込まねんだがっす?」
「例年と比べて水浅くてねぇ」
是非飛び込む瞬間を撮りたいと話を振りながら、自分だけ安全を確保する勝手なカメラマンでした。

「おお、すごいダイブ!」
全身の筋肉もここぞとばかりに張り詰める。

着水体勢に入る。
「痛いんだべがなぁ」

水は驚き飛沫が立つ。

緊張が解けて、悠々と背泳ぎをする。
ああ、怪我などしなくて良かった。
なにしろ飛び込んでとお願いしたのは、この私なのだから。

二人目ダイブ!
「このままでは腹ば打ってしまうべな」

おじさんは笑顔で水中から見守る。
自分が飛び込んだあとだから余裕の表情。

「お、水面ば歩いっだみだいだどれ」

しかし人間に歩くことは不可能。
盛大な飛沫とともに水に飲まれる。

「飛び込みも終わったし帰っべはぁ」
子供は常にじっとしていられない。

遠くを見つめながら青年たちは何を語る?

まだ水滴が体に残る状態でピース。
聞けば山形の人じゃないという。
是非、山形でいい思い出をわんさか作っていって欲しい。

「あ、すごぐいい写真撮れだぁ。傑作だばな」
「どれ見せでみろぉ」
「んだりゃあ、たいしたもんだぁ」
女の子は空中に足をばたつかせながら画像に見入る。

コップに馬見ヶ崎の水を汲み、そして遠くへ投げる。
風呂の水をおちょこで汲むより大変な作業に興じている。

滝壺の水で冷えた体を太陽が温める。
夏には珍しく、青い空は突き抜けるように澄んでいる。

「どれ、んだらあべはぁ」
濡れた髪の毛も乾き、川下から吹いてくる風にサラサラ揺れている。
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