◆[山形市]小白川町五丁目 遅れてきた雪(2016平成28年1月23日撮影)

愛宕山は何も変わらず、街並みにはいつの間にかコンビニなどが出来ている。

「なにフェンスさおっかがてんのや?」
「んね、フェンスど網さ挟まっで、出らんねぐなたんだはぁ」
新雪はにょろりと飛び出すところてん状態。

「バイパス越えっど雪うがいて聞ぐげんと・・・」
確かに多いような、そうでもないような小白川五丁目。

「くつぐなずぅ、痛いったらぁ」
「寒いがら歯ば食いしばていねどいらんねもの」
洗濯ばさみには食いしばる以外に寒さを我慢する手立てがない。

「山茶花と寒椿は何が違うのや?」
「花びらの散り方っだな」
「ボダって散るのが寒椿で、ひとひらずつ散るのが山茶花よぅ」

白黒を背景に、これ見よがしに赤い粒を散らす。

愛宕山は熊の背中のようにじっと動かない。
ピラカンサは寒さの中で、ゴリゴリとした塊を微かに揺らす。

「真夏はあそごで水遊びする子供がいっぱいいっげんとなぁ」
見るだけで背筋が凍えそうな滝を脇に見て通り過ぎる。

大型車がうなりを愛宕山に反射させて走り去る。
雪の重みにじっと耐えているギッコンバッタンには聞く耳がない。

薄墨色に染まった空で、蔓はこごらげでしまい、ほどける気配も感じられない。

雪の下がどうなのかは分からないが、確かに真っ白な雪が積もってきれいな堰。

今年はいつになったら雪が降るのか、いつになったらツララが出来るのかと思っていたが、
ツララは当然という顔で当たり前に育っていた。

「おまえば狙ったのんねがよ」
「んねずぅ、おまえだべぇ」
バイクと自転車はツララの切っ先を恐る恐る見つめ、狙われているのが自分ではないことを祈っている。

三本の矢を折ることは難しいが、三本の樹木の側へ寄り添ったり、雪を掃いたりするのは簡単だ。

「おだぐ随分いっぱい雪ば担いっだなぁ」
「そういうおだぐこそ、荷台も篭もいっぱいだどれ」

玉のように膨らんだ芽へ、意地悪をするように溶けかけた雪がまとわりつく。

どこの軒下も、今はツララの天下。
落ち損ねた枯れ葉はか細い糸につかまって寒さをしのぐ。

「こっだなぐらいでへこたれっだら生ぎでいがんねべぇ」
有刺鉄線にからみつくツブツブは、その棘など意に介さない。

その先は蔵王インター。
ここまで来ると随分山形の端へきたもんだと思ってしまう。

松原浄水場付近は山形市街と趣が違う。
冬でも青々とした葉っぱが空にも水たまりにも広がっている。

伐採された断面からツェンツェンと伸びているのは、新たな樹木の小さな命なんだろうか。
確かめたくても雪をもっこりと被って分からない。

松ぼっくり?それにしてはひょろんと長い。
あぁ、樹木の知識がなくて残念。

「なんぼ頑張たて、おらださは敵わねっだず」
空を突く大きな松の木から見下ろされ、電信柱はそれでももがく。

「なんだが変だど思わねがっす?」
「道路の真ん中がもっこりしすぎでっべ?」
グーグルマップで見てみたら、道路の真ん中に小さな中央分離帯があった。

なして寒いのに太陽に背を向ける?
「んだっだな、スマホ画面がまぶしくて見らんねもの」

山形の水の源がここにある。
それにしても最近山交バスのバス停標識が一回り以上小さくなった。ちょっとわびしい。

「何?温暖化が進むと氷が溶けちゃうよ?」
「春が近づけば雪が溶けちゃうよて治してもらわんねがなぁ」

狭い雪道をもったらもったらと山交バスが近づいてくる。
バスに乗るわけでもないのに、なんだかちょっと嬉しいのは本数が少ないからか、
なんとなく赤い色に愛着があるからか。

「よっこらしょっと」
「滑らねでけらっしゃいねぇ」
降りた途端すってんころりんじゃ笑ってられない。

この間、私用で尾花沢に行ってきた。
路面はすっぱり雪がなく、脇には雪が道路と直角に立っていた。
山形の除雪はこんな感じでぐだぐだとして、いまいちすっぱりとしない。

「雪なのやんだぐなるほどあっから、やんだぐなるまで遊べぇ」

誰が造ったか雪だるま。
耳付きだから単なるだるまじゃないな。

遊ぶ子供は一心不乱。
母親は気が気じゃないけれど、そんな表情を隠して面倒をみる。

「おんちゃん、写真ばっかり撮っていねで手伝てけね?」
迂闊にもそんなことを言われ、しどろもどろで逃げ帰る。
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