◆[山形市]柏倉・ぼんぼりまつり(2016平成28年1月17日撮影)

柏倉八幡神社の境内に立つ。
杉木立の向こうには富神山がツンと尖っていつもの姿を見せている。

雪もなく何か物足りない街並みの中で、赤い実は手持ち無沙汰で寒気に揺れる。

電柱の灯りが灯る頃、うさぎは赤い目で暮れ始めた村を眺めている。

「じょんだなぁ」
「一生懸命に描いっだも」
一生懸命はじょんだのはじまり。

下り坂をテールランプが遠ざかる。
ウサギは身じろぎもせず冷気に包まれている。

山形の街並みに灯りが混じり始める頃、
山交バスは山形を目指してゆったりと走り去る。

柏倉ぼんぼりまつりの会場は坂の上。
その道すがら、色を失った板塀に柿の枝がからみつく。

いよいよ空が青みを帯びてきた。
遠く山形の市街地には灯りが瞬いている。

眼下に西山形小学校が見える。
昔は「柏倉ぼんぼりまつり」の会場となる丘の上の「柏倉八幡神社グランド」で運動会が行われていたらしい。
昔は西山形小学校に運動会をするほどの敷地が無かったのかもしれない。

丘の上に立ち、いきなりチロチロ揺れる小さな灯火に迎えられる。

「ながながおもしゃい趣向だな」
この灯火を近くから見てもなんだか分からなかったが、遠くから見て始めて分かった。
今年の干支、申の文字だったんだね。

「もうちょっと雪があっどいいんだげんとね」
「んだどもっと綺麗だっけがも」
「いやいや、みんなの協力で、こだい綺麗に輝いっだどれ」

ぬかるむような地面に小さな灯火を設置すべく、
芸工大や山大の学生たちが寒さの中をあっちへ行ったり、こっちへ来たり。

柏倉八幡神社の正面参道から、裏側のグランドへ誘導するための灯火が、
曲線を描いて暗がりに灯る。

柏倉八幡神社のグランドに来てこれは二倍美味しいと思った。
だって、灯火を楽しむその向こうには山形の街並みの夜景が広がっている。
夜景も楽しめる光の祭典ってなかなかないんじゃないか?

灯火を求めて枯れ草たちが集まってくる。
パキパキに凍えた体に光が柔らかく当たっている。

いよいよ闇が村を覆いはじめた頃、月が真上に現れ、淡い光を降らせてくる。

「今年はどれだげ人が来るもんだがなぁ」
「雪ないがら来るんねがよ」
パチパチ弾ける音に人々の会話は掻き消され気味。

御神酒に米に塩。
神事の三種の神器が炎に炙られオレンジ色に肌を染めている。

その頃、お柴灯を待つ灯火たちは凍える地面に微かな温もりを与えていた。

いつもなら闇の中で凍っている地面が、淡い光に和んでいるようだ。

少ない雪を集めて作られたらしい灯籠が、ふんぞり返って闇に浮かんでいる。

灯籠の炎は包み込む雪へ明かりとともに煤を振りかけるが、雪はじんわりとそれを受け入れる。

お柴灯の時間が迫っている。
申の文字も淡いイルミネーションも前座としての役割を寒さに凍え全うしている。

「ほだい予算がないがら百均なのよねぇ、この灯火も・・・」
「いやいや予算の問題じゃないべ。その心意気だべ大切なのは」
篭に入れられた灯火は、地面へ配置されるのをじっと待つ。

「甘酒なんたっすぅ」
もちろん私も頂いた。凍える体に染みこんで少しだけ元気が湧いた。

キラキラの屋台さえも出店している。
このイベントは今年で四年目という。これからもっともっと盛んになり、西山形の一大イベントになって欲しい。

神事は佳境に入り、暗闇に祝詞が響き渡る。

いよいよお柴灯本番。
背後の黒い森も緊張を隠しきれない。
そのまた背後には山形市街の夜景が広がる。

未知との遭遇で宇宙船を見守る人々のように、炎に魅入る。

「あんまり近づくなぁ、パチパチて弾げで危ないがら」
「んだて寒くてよぅ」
背後から迫る寒気と目の前の熱に挟まれる人々。

辺りが赤々と染められる。
いよいよクライマックスを迎え、冬の夜が一時燃え上がる。

月にも届かんと煙は闇夜に立ちのぼる。

「竹の棒は意外と重だいのよねぇ」
顔を炙られながら、若者は竹の棒を自在に操る。

炎に暖を取る人々の背後では、人知れずいつまでも小さな灯火が瞬いている。
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