◆[山形市]山寺 年をまたいで(2015平成27年12月31日〜2016平成28年1月1日撮影)

煙の向こうから新年が少しずつ近づいてくる。
間もなく迎える新年に何を感じるのだろう。

炎は辺りにパチパチと音を立てながらオレンジ色をまき散らしす。

静穏そのものの闇の中に、揺らめきながらまっすぐ立ち上る。
煙は年をまたいで闇夜を漂いどこへ行く。

「こごは渋谷の交差点んねんだがらね」
そんな言葉を掛けたくなるほど、はしゃぐ若者たち。
「オレも若いどぎは、こいななんだっけべなぁ」と思いながら静かに見守る。

闇夜に浮かび上がる根本中堂が、威厳の込めて静寂の中に屋根を広げる。

かがり火が迎える中、人々が白い息を吐きながら三々五々足を運んでくる。

固く閉ざした冷たいシャッターに、かがり火のオレンジ色が塗られていく。

「オラぁ、紅白なの見だどぎないもの」
かがり火は夜のお仕事。その関係で夜の番組は見られない。

「新年だじゃぁ、今年はなにすっべ。迷うぅ」
「迷ってもいいっだなぁ、路頭にさえ迷わなければ」
そんな人の会話を勝手に想像する自分の明日はどうなるんだ?

すぐ隣は日枝神社だし、いったいお寺さんと神社ってどういう関係なんだろう?
なんぼ考えてもよく分からない体に煙がまとわりつく。

束になって仲良く結束していたのに、燃え尽きるときには結束がほどけ、
お互いの体を反らせながら離れ、やがて灰になりポタポタ落ちてゆく。

小雪がちらついてきた。
二人はより一層体を近づける。

「やっぱり異常気象なんだべが?さっぱり雪積もていねし」
「なにゆてんのや。人間の10年20年ていう感覚と、気象の何万年ていう感覚ば一緒に考えでもだめっだな」
そんな事を考えながら空を見上げると、ほっぺたに雪片が間断なくくっついてくる。

「しっかし、いろんなお守りがあるもんだずねぇ」
「オレにはお守りの数ば遙かに上回る数の雑念があっげんとな」

熱が千切れておみくじの所までチロチロと舌を伸ばしてくる。
おみくじは堅く体を結んで紐にぶら下がる。

夜に支配された空間に灯りが割り込む。
苔むした岩の上で十円玉が冷たく反射する。

「なんの行列だべ?」
「んだべなぁ、玉コン振る舞いがぁ。やっぱり人は只では並ばねもんだま」
といいつつ、数分後には自分の手にも熱々の玉コンがしっかり握られていた。

「こっちの行列はなにや?」
「先着で除夜の鐘ば鳴らすいんだど」

「除夜の鐘て、なして鳴らすんだ?」
「ほっだな子供みだいなごど聞いでぇ」
「んだて子供の頃は六椹八幡様でしょっちゅういだずらで打ってだっけげんと、今考えっど何しったんだっけべどもて」

爆ぜる火の粉を、顔を赤く染めながら人々は魅入られたように見入る。

鐘楼の高さを超えるほどに火の粉は舞い上がり、新年はスタートした。

「光のロードどがて聞いだがら来てみだんだげんと・・・」
絶対に懐中電灯がないと登れない闇の中へ、凍った石段を上り始める人もいる。

これが噂の光のロードの正体。
ちっちゃなさくらんぼのコップがずっと奥の院まで続いているらしい。

普段なら鐘楼へ見向きもせずに、
すぐ脇の山門から奥の院を目指す観光客が溢れている。

静寂へヒビを入れるように響く鐘の音。

「今年もいい年だどいいね」
親子はそんな思いの中で炎を見つめる。
子供の帽子のボンボコがコックリと頷く。

「家焼げっだのんねがら。近くの火がガラスさ映っただげだがら」
その言葉にスコップたちはホッと安心し一息ついている。

「どいずいいや。」
「引いでけろ」
「ほだな自分で引がんなねべずぅ」
「二人で一緒に引いだらいいべした」
テントの中は二人だけの世界。

「こっだい寒い中大変だなぁ。しかもまだ新年になて数十分しか経っていね深夜だじぇ」
おじさんのちょっかいに目を背ける巫女さん。
今年もめげずにカメラで山形さちょっかいば出していくべと、か弱く誓った新年早々でした。
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