◆[山形市]四小・昭和橋 丸くなった秋(2015平成27年11月7日撮影)

山形は今、暖色系に覆われている。
葉っぱは止まっている大気の中で、引力に耐えている。

風も吹かず、太陽も薄い雲間の中で遠慮している。
街の空気を動かしているのは子供の自転車だけかと思ってしまう。

文翔館から西に向かえばすぐ四小。
今日は何が何でも四小の象徴銀杏を取りたくてやってきた。
ただ学校周辺でうろうろしていると不審者に思われる。
とにかく笑顔で笑顔でと思い、頬が引きつる。

「頭から落ぢっべな」
「これぐらいギュンギュンて漕がねど男んねべ」
そういえば、上の横の支柱より高く漕ぐのが当たり前だっけなぁ。

「今時の小学校って、どごでも正面玄関前は花で綺麗に飾てっずねぇ」
「昔はなんたんだっけべなぁ?」
昔の思い出を無理矢理脳みそから引っ張り出そうにも、脳みそは熟れた柿状態。

「ぶら下がてみっだいねぇ。」
赤い実は女の子の自転車にぶら下がって、リンリンと鳴りながら秋風を受けてみたい。

「足の踏み場もないどれ」
「タイヤの置き場もないどれだべ」

「どうもっすぅ」
「なえだて今日は穏やかだねっすぅ」
四小では何かのイベントがあるようだ。
父兄らしき人々が挨拶しながらあちこちを歩いている。

「何が匂わねが?」
「匂いていうより臭いだずね」
鼻先をクンクンさせて銀杏のある四小を向く花びら。

「オラだはなして汚水枡の上さ舞い降りでしまたんだべ」
「類は友を呼ぶだべ。ちょっと臭いが似でんもな」

「なんだべ誰も五郎丸ポーズしてねどれ」
子供たちは赤くなった木の下でサッカーに興じようとしているようだ。

四小名物大銀杏の下ではギンナンを踏むなといわれても無理。
この臭いは撮影中いつまでも後を付けてきた。

赤みの混ざった黄色に染め上がったとき、四小の生徒たちは間もなく冬が来るのを知る。
それにしても今日の大気はピクリともせず微笑んでいるだけ。
「なんだて秋も丸ぐなたもんだなぁ」

四小から西側へちょいと小路を歩いてみる。
こちらは真っ赤に燃え上がる豊川稲荷。
パッと出た太陽は、赤い鳥居に黒い影で市松模様?を造っていた。

「これは食えるんだべが?」
「ほだなごどしか考えらんねオマエは俗物だなぁ」
そんな声が餅から聞こえてくるようだ。

餅から嫌みをいわれ、振り返ると地面を何かが横切った。
「オマエは冬ば越すいんだっけがぁ?それとも終わりなんだっけがぁ?」

ちょっと赤や黄色が見えるとすぐ撮ってしまう。
目の前には赤と黄色に嫉妬している白い標識が邪魔して立っている。

「ほだな季節だがぁ」
「ハロウィン終わばりだべ」
人々は何か次のものを目指していないと生きていけない。

「んだずねぇ、おらいでもさんなねなぁ」
タイヤ交換は山形人に小さなプレッシャーを与えてしまう。

「よっくど見でみろ。段ボールさハロウィンて書がったべ」
「ハロウィンもあっという間だっけなぁ」
段ボールはまぶしげに目をしかめているだけ。

吸い込まれるように神明神社へ入り込む。
手水舎では、水流にあらがう落ち葉が、必死にふづりさたづいでいる。

現代は玉石混淆、いや、古きもの新しきものが融合している。

「なして大木が切らっだんだべなぁ」
事情を知らないため迂闊なことはいえないが、ちょっと悲しい。
八ヶ郷堰の水も気持に追い打ちを掛けるように涸れている。

窓が両目でもみじが鼻がぁ。
なんと貧困な発想。

北駅から風邪を巻き起こして電車がやってきた。
咄嗟のことに構図を考える余裕もない。

「あ〜、行ってしまたはぁ」
「ススキと一緒に手ば振るっだなぁ」
後には丸くなった秋がとろりと漂うだけ。

「手すり冷たぐないが?」
花びらを鉄パイプにくっつけて、それでもどごで工事中なんだが気になるのだろう。

右側の如雨露がいう。
「オマエ夏中水やりサボったべ?」
左側が反駁する。
「証拠あっかよ」
右側。
「夏の間巻き付いだ葉っぱが枯れっだどれ」
左側。
「目覚めたら秋だっけはぁ」

この辺りは除草剤巻きと花植のいたちごっこか?
それはともかく、なして城北の体育館から男の野太い声が響いてくるんだ?
一瞬きょとんとしたが、そういえば男女共学になたんだっけ。

「お、まだ来たどれ」
柱の隙間を縫って電車の音が届いてくる。

グオーっと唸りながら、電車はあっという間に走り去った。
残された外来種のセイタカアワダチソウがゆらゆら揺れている。
「セイタカアワダチソウなて昔は見だごどもないっけのに」
このままだと純粋な日本種が駆逐されてしまう勢いのセイタカアワダチソウ。

「危険」がギラリと昭和橋の上で目を光らせる。

昭和橋から東側(文翔館方面)を見る。
ここの道路が広がれば確かに渋滞は緩和されっべな。
山形から狭い道やクランクが次々と消えていくのは、時代に対応した動きと見るしかない。

車の流れるそばで空を見上げる。
鱗雲はゆったりと流れ、鱗の隙間から時々光が漏れる。

やる気なさげに土嚢はドべーっとブルーシートに寝そべっている。
「これがオラだの仕事なんだず」

「いつ見ても凄いずねぇ」
こんなに立体的で力強い看板は早々見られない。

銀杏の学校四小では、網目から葉っぱが脱出を計っている。

スカートを翻して左右に行ったり来たりを何十回も繰り返す。
これは逆さメトロノームだな。あー目が回る。

「おんちゃんも混ざらね?」
「おんちゃんは何十年も走たごどないもはぁ」
缶蹴りで隠れている子供が気やすく声を掛けてくる。

「缶蹴ったぁー!」
大銀杏は元気な四小の子供たちをいったい何年見守ってきたのだろう。
そして、これから何年見守ることができるのだろう。
TOP