◆[山形市]南高・市立図書館 足の向くまま(2015平成27年10月17日撮影) |
いつもなら深閑と静まりかえる子安観音様から元気な声が響いてくる。 なんぼ子供たちが公園や空き地で遊ばなくなったといっても、 これだけ太陽が燦々と降り注いでいれば足が自然に向くのだろう。 |
ギッコンバッタンの懐かしい音が、今現実にここで聞こえる。 昔のような一枚板の木じゃないけれど。 |
「なんなんだべ?腰をかがめてジーッと見入る」 「この親爺は、こだんどごで屈んでなにしてんだぁ」 自転車は私を避けるようにして走り去る。 |
ここの方には申し訳ないが、勝手に毎回撮影ポイントにしている。 いつも季節の草花が街行く人を迎えてくれるから。 |
街道を東へゆっくり歩む。 千歳山がゆっくり近づいてくる。 |
南高の西側に出た。 薄い花びらを太陽に透かして見れば、花びら自身が柔らかく発光しているようだ。 |
なんの変哲もない南高の壁面は、光を浴びる花びらたちの引き立て役。 |
日陰の向こうはあんなに明るい。 でも、この南高生の匂いが染みついたような暗がりに、光が漏れこぼれる様も捨てがたい。 |
一点の曇りもない空。 ガス灯も電信柱も信号も、いつもとは違い浮き立つ気持を空に向けている。 |
南高角の十字路からは駅方面がまっすぐ見える。 「諏訪神社の先は稲荷角で、その先は専売公社で、その先に白蝶っていう店があっけ」 頭の中は小学生に戻り、昭和の頃を思い出す。 |
「夢はでっかぐっだなぁ」 「んでも、いっつも夢で終わんのよねぇ」 夢を買ったつもりが現実になった、という日は訪れるのか? |
応援団らしい高校生のだみ声?が鼓膜を振るわせている。 太陽と千歳山はいつもの光景だと微笑んで見守るだけ。 |
土埃にまみれた分だけ強くなる? 「ほんてん?」 「ほいにゆったほうが格好いいべした」 |
遠くには躍動する生徒たち。手前にはゆったりとのた打つフェンスの影。 |
網目の破れから十代の熱気が吹き込んでくる。 まぶしくて目を開けていられない。 |
「こだい天気いいどぎに何してんのや?」 「そういえば高校の頃、つかして変なごどしてんのもいだっけなぁ」 「うるさいがらあっちさ行ってけろっす」 椅子の考えていることが分かろうはずもなく、その場を後にする。 |
まぶしすぎる光は、家並みの影を益々強め、街並みはコントラストが強くなる。 |
南高生の部活動の声が響く度に、落ち葉はカサコソと地面を移動する。 |
蜂の巣のような下駄箱は、蓋がばたばたと元気いい。 枠の中では青春の臭いを染みこませたシューズが尻を向けて寝ぼけている。 |
袋はぼうっと発光し、日陰の椅子はいじけるようにそっぽ向く。 |
南高は守りが堅い。 有刺鉄線まで張り巡らせて構内に入るのを拒んでいる。 そんなことに興味を惹かれるでもなく、秋の草花は青い空を泳いでいる。 |
網目にテニスボール。 「誰がしたがしゃねげんと、学校では定番の光景だべ」 |
「近頃の高校生だは何考えでっかしゃねげんとよ、ほんでも柿は毎年なんのよねぇ」 |
南高からすぐ近くのきたうら公園に足の向くまま入り込んでみた。 滑り台がぬーっと現れ歓迎の意を表したつもり。 |
「土仕事でもしったっけのが?」 「ん〜ねぇ。主人の手が湿っぽくてよぅ。逃げるみだいにして日光浴しったのよぅ」 |
ハンドルがキラキラとまぶしい。 真新しい自転車の先に南原の街並み。 |
「ワイワイ騒ぐな」 高校の頃よぐごしゃがっだような口調でエノコログサを叱ってみる。 |
右側は喜びに満ち、左側は陰鬱な空気をまとっている。 日陰と日向では気分まで違うのが如実に分かる。 |
「おまえよぅ、今頃なに夏の太陽ば捜してるんだず」 ヒマワリは咲くのが遅かったかと後悔しつつも、秋の空をいつまでも眺めている。 |
山商の敷地も色づき始めた。 「あ、ゴメン。市立図書館てやねど今の人にはわがんねっだなねぇ」 |
「目はどごさあんのや?はぁ?ほいずは触角だべ?」 目なんかなくても十分に紅葉は満喫できるんだといいたげに首を伸ばす遊具。 |
木に寄りて読書とは風流だな。 確かに木の根っこに座って半日くらい読書ができる人生は豊かだと思う。 |
ぬるりとぬめった市立図書館の池に、剪定済みの枝葉が映り込む。 枝葉は綺麗に刈られた新鮮な体を、どろりとした池にさらすのをちょっと嫌がっているようだ。 |
「千歳山さ帰っかぁ」 違う違う。ただ単に帰る先に千歳山が見えるだけ。 |
「曝書週間だがっす?」 「今日は南部公民館のお祭りだがらぁ」 本の背表紙はさぞ太陽がまぶしいだろう。 |
「ほごの犬ころ。鉄パイプさスリスリして気持ちいいのが?」 テントの屋根に覆い被さって、樹木の影は犬ころの恍惚とした格好に笑いをかみ殺している。 |
「ちゃんとイカ入ったねっす。」 「んだがらんまいのよっす」 お姉さんの笑顔には、食べる予定もなかった自分の財布を自然に開けてしまう力があった。 |
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