◆[山形市]花小路・寺町 夏至近し(2015平成27年6月14日撮影)

「壁さ書いだ人は、かなりごしゃいっだんだべねぇ。文字から怒りの湯気がたってだもの」

シネマ旭があったはずの空間は、ポッカリ空いて、むなしくフェンスの針金が伸びるだけ。

「週末の夜にこごさ来る人は、このアーケードば見で、飲むぞーって思うんだべねぇ」
真昼の花小路に人影はまばら。

「切り株さ座て、蚊取り線香ば焚いで、なにするんだべなぁ」
「何にもすねっだな。夜の空気さ当だんのが気持いいのっだべ」

油絵の題材になりそうな壁と自転車。
この色は早々簡単に出せる色じゃない。
この色になるまで何十年とかがたんだべがら。

「なんて書がったんだが分がらね」
「ほだなごどより、このピリピリなめくれ感と周囲の雰囲気がマッチしていいのっだべ」

「今日は雨降っていねんだげんとなぁ」
よく分からないが、駅前には自転車がたむろし、図書館前には雨傘がたむろする。

「あの親子は何ば待ってだんだべね?」
図書館前の二人の像は、人に聞こえないほどの小さな声で囁く。
もちろん、図書館へ訪れる人も二人の像には気づかないふりで通り過ぎる。

三島神社から遊学館を見る。
「緑が滴って、まるで仙台の定禅寺通りみだいな雰囲気だどれ」
山形の通りは確かに緑が異様に少ない。
しかし、なにも仙台を真似ることもない。

「花ば撮っだいんだげんと車が邪魔だぁ」
仕方がないので、ウインドウ越しにコンタクトを試みた。

「花ば撮っだいんだげんと車が邪魔だぁ」
ブロックは車から小さな花を守るように、注意を喚起して黄色くなっている。

「ありゃあ、大失態だべ」
「んだて自分ばガラスさ反射させっだどれ、みだぐないったら」
せっかぐの教育資料館が、親爺の麦わら帽子と重なってしまっている。

北高生御用達の通り。
なだらかな下り坂が、扇状地の街を彷彿とさせる。

「車さ気ぃつけで自転車さ乗らんなねがらな」
母親のお決まりの言葉に、オダマキは頷いている。

「昔よ、両手の人差し指ば尖らせで、友達のケツさかんちょー!てすねっけ?」
「友達でいがったな。先生さなのしたら、とんでもないごどになっけべず」
無花果の下で、なんとなく昔を思い出し、人差し指を嗅いでみる。

「どう見でも名犬ラッシーだべ」
「んねべぇ、ハチ公がご主人さ走り寄って行ぐどごだべぇ」
いずれにせよ壁に絡まった蔦は、顔が右側、尾っぽが左側の犬に成長したようだ。

定番の専称寺を見ようかと足を踏み入れてみた。
専称寺北側の幼稚園では、ミニ運動会で親も子も大盛り上がりだった。

ちょっと恥ずかしげだが、子供の成長が嬉しくて仕方がないという親の表情は隠しきれない。

「おらぁ、白線引いだがら、あとはずーっと休憩だぁ」
お互い背中を向け合って、白線引きは石垣を向き、親は子供だけをじっと見つめる。

「なんだず股さ挟んでよぅ」
「こだんどごさ置いで、なぐなてもしゃねぞぅ」
丁度良い場所に、丁度良い具合に股がさけている。

日曜日は親子が笑顔でいられれば、それ以上のことはない。
保育士さんは大変だべげんと。

緑の滴が降ってくるとは、昔の人の表現はすばらしい。
「ほだごどして空ば見でっど、鳥の糞が降ってくっからな」

「あそごばくぐって行ぐどごば狙ってが」
「あれ?すぐ脇が物置なんだどれ。しゃねがったー」
世の中、親爺の思ったように事は進まない。

定番の専称寺に来たからには、相変わらず定番の緑の紅葉を撮らねばならない。

前庭では黄色い花が首をひょろひょろと伸ばし、ちょっとした背比べ。

もしかして、住職さんは猫派で、しかもサッカー好き?

いつの間にか、大つくばいに金魚が泳いでいる。
いつきても空っぽだったのに。
やはり現地に来ないと分からないことがいっぱいある山形。

「オマエだ、後ろばっかり向いでねで顔ば見せでみろ」
地蔵さんたちは、御殿堰の流れをじっと見つめて、振り返りもしない。

ということで50メートルくらい迂回して御殿堰の下流側に来てみた。
「おお、なんだみんないい表情してるんだどれ」

郊外の新興住宅地とは一線を画す、味わいが染みこんだ街。

「昔と何にも変わらねずね」
確かにほとんど変わらない光景。でもシネマ旭がない。
心の中にある子供の頃の思い出がすっぽり抜け落ちてしまったように、そこはただの空間になっている。

昼寝を決め込む提灯。
暑くて敵わないと、影をダラーッと下へ伸ばす窓。

「頭ボサボサの箒さん。変な事考えっだのんねべな」
「大人しく篭さ入てっがど思たら、すっぽり首まで嵌まって首つり状態になてしまたのよぅ」

どっこい屋根の植木も生きている。
「冬の間はなにしったんだっけべ」

真昼の花小路にはゆったりした空気が流れている。
手すりにスリッパが乗っかり、壁の影は伸び放題。

盛りを過ぎた花びらだろうが、日差しは容赦ない。
昼寝中の花小路にも、太陽は夏を止めどなく届けている。

夜になれば息を吹き返し、チカチカと瞬くのだろうか。
夜行性のためか、ピクリとも動かない。

日が暮れてから、ほろ酔い加減で訪れる人には分からないだろうが、
真昼の飲み屋街の、けだるそうな雰囲気が堪らない。

夏至も近い。
けだるさの漂う花小路の一角で、花びらだけが爽やかさに包まれている。
  
[山形五中卒の方だけに]

花小路と寺町の撮影を終え、自宅へ帰るとなると五中前を必然的に通る。
子象が親象の鼻に守られているような重機が並ぶ、五中新築工事の現場。

この間まで、ボロボロになりながらも現役だった校舎が遂に消えた。周りの樹木とともに。

五中卒業の方には感慨深いものがあるかも知れないと思い掲載しました。
あ、そういえば思い出した。
五中って、市内で一番最後まで男子が丸坊主の学校じゃなかった?
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