◆[山形市]千手院 仙台に一番近い村(2015平成27年6月7日撮影) |
線路を越えると、そこは仙台に一番近い村「千手院」だった。 「一番近いのは関沢だべ」 「確かに車で行ぐごんたら関沢が一番近いべ。 んだげんと、道路さ出でる標識で仙台市までの距離て書いであったら、仙台のどごまでだが分がっか?」 「市役所のごどっだな」 そこで、地図を広げ、千手院からと、関沢からの仙台市役所までの直線距離を測ってみた。 「ん〜、微妙」 |
風の力にも及ばない弱々しい浮力で、チョウチョが舞っている。 「すぐ近ぐば仙山線が通てっから、高圧電線と電車の風圧さ気ばつけでな」 |
山寺のひしめく観光バスや、そぞろ歩く観光客をすり抜け、 車で数分走ると、そこには観光地擦れしていない山村の原風景が広がっていた。 |
「山寺は相変わらず賑やかだっけなっす。」 「はいずぁ、んだっだ。」 おばちゃんはあまり興味なさげに、とにかく農作業に没頭する。 |
「なでしこだべ?」 道ばたに咲く花びらはウンともスンとも応えず、木漏れ日をじっと浴びている。 |
草花が陽光を分け合うように浴びている、その真ん中に、 座布団がデンと構え、足を平らに、いやまっすぐ伸ばしている。 |
なんぼ周りを山や川に囲まれているといっても、それはそれ。 家の周りをそれ以上に緑で囲むのは人々の常。 |
シャスターデージーが道ばたに溢れてきたら夏。 空を目指すその姿に一途さを感じる。 |
集落のどん詰まりにやってきた。 面白山の石碑がドンと立ち、オマエは何者だと顔に書いている。 この先が面白山なのは分かるが、二口峠の方ではないし、そこを越えて仙台へ行く峠ってあったっけ? |
鋭く切っ先を空へ突き刺す屋根。 雲はすぐ近くを流れ、その切っ先へ引っかかるんじゃないかと心配する。 |
ガラスの向こうに緑が透けて見える。 その涼やかさと木枠の柔らかさが心地良い。 |
掃き溜めに鶴。 暗がりにキツネノテブクロ(ジキタリス)。 |
「珍しい人間だニャー」 見たこともないような都会人風情が現れたものだから、警戒心を露わにしているに違いない。 |
「撮んなずニャー」 人間にも撮るなと言われたことは何度もある。 しかし、後ろ足で遮られたのは始めてだ。 |
通りの家々には必ず小さな四角い洗い場?がある。 落ちた花びらは、沈もうか流されてゆこうか、揺れる波紋の上を漂いながら思案する。 |
「グダーッ、あど動がんねぇ」 日曜日くらい休ませろと、口を半開きにして草むらに身を沈める。 |
ダニよ、自然へ帰れ。 観光客もここまでは来ないし、布団もノビノビとひるがえる。 |
「なんのごどだがサッパリ分がらね」看板を数秒見てあきらめた。 でも、今は錆びているけれど、かなりの要職に就いていたに違いない看板。 |
スイセンノウの花びらは赤いフィルムのように透けて、自分のガクを薄赤く染めている。 |
「虫ワサワサたがったどれ!」 虫は欲たがり。 |
思わず頬が緩む。歩く速度も緩くなる。 なんだべ、このゆるり感は。 |
「なんだ、なんだ、なんなんだぁ」 後ろからも、その後ろからも頭を突き出して、好奇の目を向けてくる葱坊主。 |
この写真を見て何か気づきませんか? ヒント:ここは仙山線のすぐ近くです。 答え:あのゴミ集積場の柱はどうみても線路の枕木んねがっす? |
花びらたちが賑やかに手を振る姿など気にもとめず電車は走り去る。 毎日通勤通学で仙台へ向かうみなさん。居眠りこいてないで、たまには車窓ば見でみっべ。 |
撮り鉄のようなマニアではないとわきまえているつもり。 列車が来たら、マニアは撮りすぎ。私は通り過ぎ。のつもりでいた。 でも、目の前を通ったらやっぱり撮ってしまうのは人の常。 |
なんの変哲もない?、最上三十三観音のひとつ千手院。 鳥居の右側の柱へ抱きつき、「ついてる」と十回となえると恋愛運が良くなります。 左側の柱へ抱きつき、「ついてる」と十回となえると金運大吉になるそうです。 |
さて、この女の子はどちらへ抱きついたでしょう? もちろん左側の柱です。近頃の女の子はやっぱり現金なのです。 |
この千手院にはとっても危険な特徴があります。 写真をご覧になって分かった方も多いでしょう。 そうです。踏切すら無い線路をまたいで行かなければならないのです。 電車が来ても警報器すら鳴りません。行かれる方はどうか気をつけて。 |
線路を跨ぎ、階段を登りクターッとなり足下を見下ろす。 そこには同じようにクターッとなったシャスターデージーが石段に重い頭をくっつけようとしていた。 |
先に訪れた客が御朱印をいただく場所で話し込んでいる。 今日も次々と煩悩を引き摺った人々がやってくるものだと感じつつ、植物たちは風に吹かれて知らん顔。 |
「そろそろ11時41分山寺駅着、山形行きの電車が、こごば通りすぎるな」 緊張を身にまとい、カメラをしっかりと構え直し、電車の音が聞こえないかと耳を澄ます。 いつまで経っても木立の葉擦れの音しか聞こえない。 待ちくたびれた尻に石段の冷たさが伝わってくる。 狐につままれた気分で時刻表を見直す。 ◆印…運転日注意(運転しない日があります) 相変わらず間抜けな自分ではありました。 |
TOP |