◆[山形市]柏倉 富神の麓に花萌える(2015平成27年5月17日撮影)

「明日は快晴の予報だがらねぇ。撮影が楽しみだぁ」
沈みゆく太陽を見つめながら柏倉の撮影に思いをはせる。

「公園で子供がいっぱい遊んでるなて珍しいずねぇ」
この頃の公園は人気の大規模公園を除けば、誰もいないことが多いのでなんだかウキウキしてしまう。

バイクが坂を下ってゆく。
真っ正面に千歳山を眺めながら。

柏倉はどこからでも富神山が見える。
富神山は西山形地区の精神的な支柱でもあるんだな。

もし私が山形坂道百選の選定委員だったら、まちがいなく選出する。
正面に千歳山が見え、山形の街並みも眼下に広がり、坂道沿には花が萌えている。
選定から外す理由が見当たらない。

柏倉八幡神社は建設中。
誰もいない境内では白いシートに木陰が踊っている。

富神山さえ見えれば気持は落ち着く。
西山形地区の誰もが思う。

柏倉八幡宮から竜山を望む。
銀杏の枝は巨大な団扇のようにバサバサと大気を扇いでいる。

ポタポタ落ちた花びらは、小さなつむじ風に乗って坂道を下ってゆく。

「まんず勢いあっごどなぁ」
小さなパラボラアンテナは、グングン伸びて太陽へ近づいていく。

シャスターデージーが何かわめいている。
「電信柱邪魔だぁ」
「気持は分がっげんとなぁ」

地元の方ならすぐに分かる場所。
「ああ、あそごがぁ」とすぐに分かる頭に焼き付いた光景だろう。

オダマキが輝いている。
背後の静かな柏倉の街並みに見守られながら。

郵便局の南側に入り込む。
建物や樹木が、街中にはない空気感を醸している。

グイーンと伸びてポンと咲く。
そんな感覚を覚えるほど伸び盛り。

「あの長い柄杓は何に使うんだべなぁ?」
山形市内を歩いていろんなゴミ置き場を見たが、あんな長い柄杓は初めて見る。
ゴミ置き場ウオッチャーとしては気になるところ。

「こごはおらいの土地なんだげんと・・・」
「え?あ、すいません。あんまり眺めが良いので入り込んでしまたっす」
結局入り込んだことは不問にされ、快く入らせてくれた。
今日の山形のように気持ちのいい方たちだった。

どこにでも無遠慮で生えてくるハルジオン。
当たり前のように山形の大気を満喫している。

ドラム缶は大欠伸。
これだけおいしい空気を腹一杯詰め込むなんて、相当の大食らいだべな。

ボロボロの傘が気持ちよさそうに広がっている。
なんぼボロでも壊れていても、大気を思いっきり浴びたいこともある。

いったいどれだけの雨に打たれ、風に吹かれ、吹雪に翻弄されたのだろう。
葡萄棚の支柱は、喉の奥からうなり声を発している。「ウオーッ、今日は気持いいーッ」

破れたビニールだって気持ちいい。
体は破れても気持だけは敗れない気概を感じさせて風にたなびいている。

風にたなびくこともままならない針金たち。
それでも体をくねらせ、タクトを振るうように空へ伸びている。

「ったく暇な人はいいずねぇ」
そんな声が聞こえてきそうで、そそくさと後にする。

「なしてほだんどごさ隠っで、こっちば伺ってんのや?」
「んねのよぅ。オラだの場所さこの車が被さてきたがら、仕方なぐ隙間から出てきたのっだず」
笹の葉は窮屈そうにモサモサとタイヤに被さっている。

「ほだんどごさ隠っで、郵便物ば配達すねつもりが?」
屋根に葉っぱの影を貼り付け、郵便配達車は地面と樹木の中へ縮こまる。

「今年の田植えは例年より早いんだがっす?」
「んだねぇ・・・」
一応返事はしてくれたが、忙しくてそれどころじゃないんだと背中が語っている。

目に鮮やかな濃い青は、村の中で一際目立つ。
といいつつ、いまだにアヤメ・カキツバタ・ショウブの違いが分からない。

土塀にしがみつくテッセン。
ハシゴや横棒や柱はテッセンにしがみつかれまんざらでもない。

驚きの青さ。こんなに綺麗なせせらぎは見たことがない。
山形市内でも五堰が綺麗になりつつあるけれど、それは人目に付く観光地的要素があるところだけ。
柏倉のせせらぎにはとても及ばない。

ゆらゆら揺れる藻?の上に乗っかって、太陽からこぼれた光は立ち去りがたく揺れている。

こんなに散策心をそそる道ってそんなにないだろうと思う。
私が山形散策路百選の選定委員だったら、一押しだ。
でも、有名になって人が押し寄せても困る。

ポタポタ落ちる花びらは何故みんな下向きなんだろう。
人為的に下向きにされたとも思えない。
きっと落ちてしまった自分の素顔を見られたくないからなんだろうな。

ボールがコロコロと私の足下へ転がってきた。
ありがとうございますと言いながら子供は仲間たちの所へ走り去った。
去り際に振り向いた子供の顔には、不審なおじさん?と書いてある。

初夏なのに全身に霜を貼り付けたようなラムズイヤー。
間もなく花は咲くのだろうが、その前にもっと空へ伸びたいと全身で意思表示している。

「おじさんと遊ぶだいのが?」
「退屈だがら、変な人間ばちょっと見に来ただげだニャー」
やがて興味を失った猫は、塀の影に隠れてしまった。

しっかりと枯れ枝を両腕で抱え、あたりの様子をうかがっている。

「おらだの季節なんだがら邪魔すねでけねケロケロ」
蛙と対峙し、先に視線を逸らした私はすごすごと帰ることにする。
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