◆[山形市]はたらく車フェス 五感が満点をつけた日(2015平成27年5月5日撮影)

「道路の真ん中でぇ、大丈夫だがぁ?」
「今日は歩行者天国なんだじぇ」
道路の真ん中でしゃがめるなんて、なんとなく落ち着かずこそばゆい。

皐月のそよ風が、大正ロマンをくすぐってゆく。

帰命院の木陰に逃げ込む。
ひんやりと空気が冷たくて清清しい。

街中には空き地が目立つ。
日傘も太陽光を反射して目立っている。

枯れた堰に光が落ちる。
野の花は光を吸い上げる。

「しぇまこい道だっけげんとなぁ」
「完成すっど便利になるっだなぁ」
細い路地が消えるのは寂しいが、やむなしと思いつつ、ボーリングでストライクを取りたくなるようなコーンの列を眺める。

再び木陰へ。
今度は大日堂。
中年太りの散歩は遅々として進まない。

ふと下を見る。
日陰の地面に俯きながら、可憐なスズランがひっそりと息を潜めている。

「山形ずぁよ、東さ向かう時はくたびれんのよねぇ」
扇状地の街だから、奥羽の山並み方面に向かう時は自転車のペダルを漕ぐのが辛い。

歩行者天国だから人々が嬉々として群れているのは分かる。
そのどさくさに紛れて電線の影もおおっぴらにぬだばている。ま、いいがぁ。

ちょっと風変わりな建築様式の明善寺。
門をくぐるとすっかり青葉の銀杏の木が迎えてくれた。

金属のぬめりを、すっかり力を付けた太陽光が滑ってゆく。

「日陰が恋しい季節っだなねぇ。オラだは無理だげんと・・・」
壁へ染みのような影を垂らして卑屈になる計測器。

「衣紋掛げがまぶしそうだずねぇ」
「衣紋掛げって何?ハンガーならぶら下がてっげんと・・・」
ハンガーは衣紋掛け、カレンダーは暦、ベストはチョッキ、ホッチキスはジョイントと言い直そう運動。

「泣く子はいねがぁ」
おまわりさんも大変だ。
泣く子や迷子を捜し、自分の子供の休みに付き合えず治安を守る。

またしてもヒンヤリした空間へ逃げ込む。
どうも賑やかすぎるのは苦手なんだなと気づく。
太陽に照らされた通りから、ビルの隙間へ喧噪がワヤワヤと流れ込んでくる。

「見せもんじゃにゃいぃ、みんな上から目線だわーん」
太陽がぎらついても、目をぱっちりと開けながら人々の足音を聞く。

「一番綺麗に洗わんなねどごだねぇ」
あかちゃんは大事なところをまさぐられて、口をアポーッと開けている。

自分より小さな子にやさしくするのは人の常。
でも、大人になると年齢ではない上下関係が生まれる。

「昭和の頃はこの賑わいが当だり前だっけねぇ」
遠くを見つめる目になって、眼下の一番町通りを見下ろす。

「やんだぐなたはぁ」
それでも風船はしっかりと握って離さない。

麦わら帽子とかき氷。
みんな夏の季語なんだべずねぇ。

「いが、言うごど聞がねど、ゴミ収集車で持てってもらうがらな」
ゴミ収集車へ入れられているのが、ばあちゃんでなくて良かった。

七日町通りは南北に延びている。
だから太陽が南に達したときは、通り一面に日陰が無くなる。

「まだ日陰さきてしまたぁ」
「んだて日陰さ来て、一歩引いた形で行き交う人ば見でっど、おもしゃいんだじぇ」

「ほだごど蹴飛ばしたらダメだべしたぁ」
はたらく車は休日返上で子供たちに触られまくる。

「おらぁ毎日夕方にとてけろコーナーの写真ば見でっから」
NHKさんもどうやらたまに「山形市の街並み」を見てくれているようだし。

「鯉のぼりだ気持いいべねぇ」
「んだて繋がっでで、どさも行がんねんだじぇ」
親はしっかり子供と手を繋ぎ離さない。

店のガラス貼りに映る自分の姿を見ながら歩いたことがありますか?
そりゃあ誰だってあるに違いない。でも、それって店内から見られてるんだずね。
ということは、映る姿を撮っている自分の姿も店内から見られているってごどだべした。

日本人は等間隔に、しかも前後に迷惑を掛けずに並ぶことに慣れている。
この等間隔は人間本来の美しい姿なんだべが?

「おらぐうの音も出ねずぁ」
首をくくられたような土嚢は、暑さに参ってへたり込みそうだ。

一小の壁と付かず離れず、チューリップはみんなで空を目指す。

小さな池に花びらが疲れて集う。

風さえあれば鯉のぼりは元気。
人間は何さえあれば元気になれる?愛?金?「俺は頭痛薬と中性脂肪値を下げる薬だべな」

ハナミズキはアメリカから頂いたありがたい植物。
日本の鯉のぼりと、ハナミズキのコラボとは時代だなぁ。

まなび館の窓枠には涼やかさが漂っている。

「なんだてヌメヌメだずねぇ」
「んだら、除菌もできる洗剤で洗たらいいんのんねがよ」
車のフォルムの話だし。

ゼンマイと靴下が同じ空間で干されている。
そして、ボンベの鎖の影がくたびれてずり落ちそうになっている。

盆栽はじっと黙って動かない。影はジリジリと気づかれないように壁を這う。

「家さ帰ったら何くだい?」
「うーん、コゴミがウコギがいい」
子供の食欲を乗せて、バスはあっという間に走り去る。
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