◆[山形市]鳥居ヶ丘 まぶしい年の瀬(2014平成26年12月28日撮影)

これ以上ない光が山形盆地に降り注ぐ。
竜山は青白い光を柔らかく放っている。

年の瀬にこの好天。
天は今年最後の大盤振る舞いをしているようだ。

二階から下を見てみる。
雪は自分の意思で舞い降りる場所を選べないんだな。着地点を黙って受け入れるしかないんだ。

住宅地の中に忽然と現れる石鳥居。
過去に何回も地震に遭ったに違いないのに、この毅然と立つ姿はどうしたことだろう。

竜山川の河原に出る。
視界がパッと開け、寒気に混じって光が降り注ぐ。

「何しったのや?」
「かまくら作ったの、後がら中さ入て遊ぶんだぁ」
屈託のない笑顔が雪原で弾ける。

「おんちゃんどごから来たの?」
「わすっだはぁ」
子供って外で遊んでいるときはホントに活き活きしてるなぁ。

お父さんは汗を掻き掻きスコップを動かす手を休めない。
ここぞとばかりの子供たちへの大サービスと、父親の偉大さの見せ所なんだな。

「雪さ埋めて冷やしったの」
「おんちゃんさおせっかぁ。ほんとはもっと隠しったのあるんだぁ」
その言葉に、初対面なのにちょっとだけ信頼されたみたいで嬉しかった。

親子に別れを告げ竜山川を遡る。
河原の雪は、モコモコのマシュマロのように膨らんでどこまでも連なっている。

「こだい寒いどぎ干したら、カピカピに凍ってしまうべはぁ」
タオルは対岸の家並みをまぶしげに見つめるだけ。

「落ぢる落ぢるぅ。ティッシュないのがぁ?」
鼻水がツーッと糸を引く姿に、雨樋は風邪気味なのかと思ってしまう。

「なんだがくたびっできたなぁ。んだて靴さ雪が絡んで一歩一歩がキツいのよぅ」
くるぶしくらいまでしか積もっていないのに、この歩きづらさはなんだ。
もっと痩せましょうねと、お医者さんから言われた言葉が胸を刺す。

千歳山がだいぶ近づいてきた。
熟れた柿の実は光を吸い込み、青い空を笑顔で空中遊泳している。

珍しいものを見つけるとすぐ撮ってしまう。
珍しいと思うのは自分だけで、この辺の方には当たり前の光景かも知れないが。

これだけ光が強ければ、ずり落ちるのは時間の問題。
屋根へしがみつく雪とツララは、落ちるその瞬間を緊張して待っている。

「太陽なのに日陰さ隠っで何しったのや?」
昔懐かしい森永のマークが、笑顔はそのままにひっそりと余生を過ごす河原の袖。

「ツララがぶら下がる季節なんだげんとなぁ」
「これだげ天気いいごんたら、洗濯物だて陽ば浴びっだいだず」

河原を離れ、日大山形へ向かう。
でもその前に食堂の看板や登りが見えて、腹がきゅーっと鳴ってしまう。

ウドの木の枝の影は、雪原をソロソロ伸びて白菜にちょっかいをかけようとしている。

「いづのこめが、こだい立派な建物がでぎではぁ」
校舎の壁は光を反射しまぶしく発光している。

暖かいのか冷たいのか触ってみないと分からない。
蓋たちはただ黙って太陽の光を反射するだけ。

まっすぐ行けば文翔館へ突き当たる。左へ曲がれば産業通り。
日産の塔も含めて、ある意味山形の定番ポイント。

「もさもさて床屋さ行ってこい」
「ほだなじぇねない」
間もなく新しい年を迎えるというのに、床屋へも行けないのは俺と同じだな。

通りを走る車の誰が気づくだろう。
小さなザクロの木は、うらぶれた姿で乾いた通りを見つめている。

山と積まれた福袋。
その硝子に映り込むパレスグランデールの建物。
だからどうしたと言われればそれまでだけど・・・。

「雪ばどっさりど被てんのど、顔がぶじゅぐっでしまうのど、どっちいい?」
「ほだなどっちもやんだべしたぁ」
山形に選択肢はない。少なくとも顔は守れても、雪を被るのは決まり事。
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