◆[山形市]薬師町 雪待ちの街(2014平成26年11月30日撮影) |
朝撮影に出かけようとする。 銀杏の葉っぱが孤高の姿で、水玉とともに車の天井に張りついている。 |
市営グランドは歓声間近のようだ。 落ち葉も水玉も、おそらくはこけら落としの試合を見られない。 |
どうにも心が晴れず、鬱屈するような曇天。 道路も家並みも冬を待つ表情でじっとしている。 |
「早くて冬ごもりがはぁ?」 一輪車はヤツデの下に潜り込むようにして雪に怯える。 |
大気は静まりかえっている。 至る所にできた水たまりも無言のまま、さざ波すら立てない。 |
五中出身の方必見です。 「校舎の軒下は欠片が落ぢでくっから危ないぞ」といわれて数十年。 元のグランド側に新校舎が姿を現した。 |
「誰だずね、ギンナンば門柱さ置いでいぐなて・・・」 五中の門柱にカメラをくっつけて、臭いと戦いながら接写する。 |
五中の敷地からは、青春の熱気がフェンスを越えて溢れそうだ。 といいたいところだが、溢れているのは落ち葉だけ。 |
工事中のブルーシートに触れてみる。 ツツーッと自分の方に水滴が流れ出し、カメラが濡れてしまった。 |
「ほだんどごでぽつねんと立って何しったのやぁ?」 「明日から雪だてゆうがら、待ってだのっだな」 道路越しにスコップの明るい声が聞こえてくる。 |
学校周りでの撮影は特に注意しないといけない。 つまらないことで不審者扱いされたら困るしな。 でも、どうしても箒の並びが気になって、ちょっと離れて撮ってみる。 |
落ち損ねた葉っぱが恨めしそうに見つめてくる。 |
「俺って葉っぱだから歓迎さっでるんだべが?」 自転車は不思議な表情を浮かべ聞いてきた。 「んだっだべぇ。ほだい好まっで羨ましいごどぉ」 |
五中敷地の南側はまだまだ工事が続きそう。 クレーンは地面に食いついたままじっと固まっている。 |
冷たい湿気は大気を漂い、路地裏にも染みこんでいく。 |
コムラサキは滴に濡れながら、細い道を通せんぼするように伸びている。 |
町中がひっそりとそのときを待ち構えているのがわかる。 雪を待つ時間は本当に何ともいえないズネーンとした気持になってしまう。 |
甍の波に銀杏が積もる。 |
「もうダメだはぁ」 チリトリはこれ以上無理と仕事を放擲し、箒も力が尽きたように柱におっかがている。 「うそだべぇ。ただ、早ぐ初孫飲むだくて疲れたふりしっただげんねがよ」 |
あかちゃんの産毛に似た頭髪のように弱々しく伸びる。 |
「こごも変わったずねぇ。ずっと北進一方通行だっけのにぃ」 新築西通りからは完璧に昔の面影が消え去った。 |
「だ〜れも歩がね。だ〜れも通らね」 薬師公園といえば薬師祭り。あの喧噪とは対極に位置する季節。 |
「俺の気持ちにもなてみろず」 蛇口は冷たい体を天に向け、落ち葉の数を数えているだけの一日が過ぎる。 |
薬師公園前も道路が拡幅され、印役町側から来るときも薬師町側から行くときも便利になる。 でも、薬師祭りの露店がゆったりと配置される事が一番のメリットかも。 |
「みんな同じ方向ば、同じ気持ちで見でるんだね。なんだが羨ましい」 「山形県民だて、今はみんな同じ方向ば見で願てっべ」 「なして分がんのや?」 「んだてモンテディオの試合で大盛り上がりだどれ」 |
「棘があっからバラなんだっけべが?」 よく見ないとなんだったのか分からないほど朽ち果てた姿を、あんまりじっと見るのは失礼か。 |
秋色から冬色へ変わろうとする水面で、気ままに波紋を立てている。 |
スイッと伸びていた水面の樹木の姿が、カモたちにぐにゃぐにゃに乱される。 |
「カモばでも狙ったのが?」 猫は警戒して、木陰から視線だけをジーッと寄越す。 |
「落ぢっどれはぁ」 数秒後には池に落ちる水滴が、最後の力で周りの光景を映し出す。 |
体を膨らまし、たった一本の足で微動だにしない。 一本足で何分も立てるってことは健康の証だな。 |
落ち尽くした葉っぱ。粒子状の冷たい湿気が音も立てずに空間に浮遊する。 |
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