◆[山形市]馬見ヶ崎川 秋色探索(2014平成26年10月30日撮影)

対岸を見ると子供たちがヒーハーいってる。
いかにも走らされている感が強いけれど、先生がにらみをきかせているので手は抜けない。

枝葉の隙間をかいくぐった一筋の光が、一枚の葉っぱを狙い撃ち。

土手から双月町へ下っていく小径。
落ち葉は風に乗ってどんどん小径の奥へ入り込んでいく。

コスモスもそろそろ終わりが近い。
表情からも寂しさが伝わってくるし、背景も冬に向かう色になっている。

「ひなたぼっこがぁ?」
「ほだなだったらいいげんと・・・」
乗り捨てられた自転車は、主を失い地面の輪っかの影をじっと見つめる。

「オマエ先に行げぇ」
「オマエこそ早ぐ落ぢだらいいべしたぁ」
みんなだらんとぶら下がり、誰が次に舞い落ちるか牽制しあう。

「月山もあだい真っ白だじゃあ」
長閑な大気の中に冬の気配が入り交じる。

「月山ばり写してっど、葉山がごしゃぐべな」
馬見ヶ崎の向こうに月山と葉山。いわば定番の光景だな。

「なにしてるんだべなぁ?」
子供の頃、一人で河原に出かけ遊んだ記憶は、山形人の心の奥深くに刻まれている。

こんな日和の日はチョウチョも毛虫も忙しない。
迫り来る冬に追い立てられるように、花へ群がる。

どんよりとした曇り空の日は下を向き項垂れ、太陽が顔を出した途端顔を上げ全身で喜びを表す。

か細い茎を張り巡らせて、風をいなしながら最後の日差しを名残惜しげに楽しんでいる。

「雪降ったら、あたしはどうなるんだべ?」
そんな心配を心に秘めて、木彫りのウサギは盃山の方を見つめている。

冷気を絡めながらドードーと流れ落ちる。
一刻も早く最上川へ合流するために。

光が揺らぎ、色づいた葉っぱをトロッと溶かす。

「こちょびたいずねぇ」
「そろそろ交換時期だぞて、急かしったつもりなんだべが」
タイヤは重い腰を上げる時が近づいたのを感じずにはいられない。

見慣れた工業高。
市内はあちこちが道路拡幅などで変貌しつつあるが、この一角だけは昭和から変わりない。

「いづ新しい橋がでぎるんだべねぇ」
仮の橋の上を、おじさんは日差しを楽しむようにゆっくりと走り去る。

これまた山形定番の構図。
薄青い竜山と千歳山。それに盃山が見え、馬見ヶ崎川が流れているんだから山形人の琴線に触れない訳がない。

せっかくだからちょっと望遠で月山を観察する。
あいかわらず柔和な表情で山形を見守っている。

「山形ば離れている人はなんだべと思うべな」
馬見ヶ崎橋の印役側は、橋の付け替え工事ということもあり、昔の光景とはかなり違ってしまった。

薬師の森が赤く燃えあがる。その手前に赤く際立つ護国神社の鳥居を見て、七五三だなとちらっと頭をかすめる。

ドラム缶の中に日だまりができる。
葉っぱは自分の影を覗き込みながら、日だまりの中へ誘い込まれる。

「くたびっだぁ、ちぇっと休んでいぐがぁ」
ベンチに座り河原を眺めるおじさんから離れて、箒は退屈そうにぶら下がる。

風が止み、ススキは縦直線の姿勢を保つ。
ひと風吹けばあっという間に斜線になるというのに。

馬見ヶ崎橋から見える木立がいつも気になっていた。
草を踏み分け近づこうとする。私の移動とともに太陽が木立の中へ入り込んでくる。

水の流れに混じり、サワサワと枝が鳴る。
河原の中にあって異空間を守り続ける木立の中。

ピントを合わせるのが難しいほどに、穂は騒ぎ立て左右に揺れる。

「青い空でも映えっげんと、錆びたトタンが背景でもいいもんだべぇ」
丸々と太った柿の実は、トタンの斜線になぜか調和する。

「なして猫がいねんだど思たら、そういう訳だっけのがぁ」
「たまに見に来る人にとってはめんごいばっかりだげんと、地元の人は迷惑っだなねぇ」
「文章全体から怒りが立ちのぼってるもなぁ」

「猫いねがらしょうないべ。チョウチョでも撮っか」
チョウチョは迷惑げにパッと花びらから飛び立った。

青い空が水面に映り込む。
浅い川底の石ころが陽に照らされて冬を待つ。
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