◆[山形市]気仙沼さんま祭りin山形 天高く食欲たちのぼる(2014平成26年9月21日撮影)

「まだまだ青いなぁ」
「遊んでだ子供だが?」
「銀杏の葉っぱよぅ」

「秋の日差しば浴びながらソフトボールの試合なて最高の休日だべ」
おじさんの野太い声がグランドの砂煙の中を舞い、強烈な日差しは真っ黒な影をあちこちに造っている。

「おらおら〜、ほだな試合してっど夜のビールがまずぐなっぞー」
ヤジ飛ばしは足を投げ出し、樹木の地面へ影を伸ばしている。

影はサークルからはみ出し、強気の姿勢でバット振る。

まだまだ濃い緑に覆われた霞城公園内の児童遊園地。
緑に圧倒される人も遊具も小さく見える。

この列車もどきというか、トンネルで遊んだ記憶がある。
「しかも40年以上前の話だじぇ。凄いど思わね?」
「40年も経つのに遊具は昔のまんまだげんと、そこで遊んでいた俺は・・・(T^T)」

「9月は蜘蛛の季節だずねぇ。ほっちこっちさうじゃうじゃ湧き出るんだもの」
蜘蛛の巣はキラキラと輪っかを造り、蜘蛛はじっとそのときを待つ。

「うひゃ、チョウチョになるんだべが。それとも蛾?」
草むらに入り込み、大人の人差し指くらい大きい毛虫を見つけた。
草むらの中で周りをそーっと見渡す。
「ぎゃーッ!どこもかしこも毛虫だらけッ!」

市営グランド脇の日陰にひっそり咲いている曼珠沙華。
なんぼひっそり咲いていても目立つので人目を引いてしまう。
しかも、ご丁寧に誰かが周りに棒を立てテープで囲っているし。

「外野のそのまた外野が、大変だなぁ」
いくらフェンスの外側でも、そこに人が必要だから配置される。腐る必要は微塵も無い。

人々はマタタビに憑かれた猫のように公園内に入り込む。
「オラだのごどなの誰も見でねがら去るびゃー」
「去るびゃー、んねくてサルビアだべ。大人しく咲いでろ」

筋になって立ちのぼる煙。と思って上を見上げる人々は誰もいず、みんなサンマの焼け具合に眼のピントを合わせている。

あまちゃんを始め、軽快な音符が煙とともに人々の隙間を舞い踊る。

大漁旗に白い雲。そしてキラキラ輝く金管楽器。
これだけ揃えば、人々は我を忘れてサンマに群がること必至。

「なんといっても炭で焼ぐんだがらねぇ。そんじょそこらの家庭の味とは違うんだっす」
炭のくせに隅に置けない大きな存在。

サンマは雁首並べてそのときを待つ。
人々の長蛇の列はどこまでも続く。

扇風機が煙と匂いと熱気を辺りに攪拌する。
焼き係の人たちは背中に汗が染みだしているのも気づかず、黙々とモクモクの中でサンマと戦う。

「海賊?山賊?」
「ゴメンゴメン。んでもこの格好でどごがさ行ったら、染みづいだ匂いさ誘わっで猫がいっぱい寄ってくっべなぁ」

真剣に焼け具合を確かめる眼は鋭い。
こっちに向かうサンマのくちばしも鋭い。

「ちぇっと撮影させでもらわんねがっす?」
「ダメよ〜、ダメダメ」
「いーじゃないの〜」
これ、ホントの会話。それだけで打ち解けた雰囲気になってしまった。

目の前にあるのに食べられないもどかしさ。
ここはカメラをギュッと掴んで、ぐっと我慢する。

「おにぎり持てきたんだじぇえ。あはははぁ」
「なんだて準備いいねっす。サンマばおかずにして最高っだなぁ」
顔を出さないでといわれたけれど、あんまりいい笑顔だがらつい撮ってしまった。ごめんなさい。

「並ぶ?」
「どうすんべ・・・」
お年寄りにはあまりにも過酷な長すぎる行列。
もっと行列が早く進むような配慮か、高齢者専用の列を是非設けて欲しいな。
スタッフの方々がとても頑張っているかは分かるけど。

「混乱すっから大手門の前でちぇっと待ってけらっしゃい」
本丸を多くの市民に取り囲まれて、最上義光もさぞや肝を冷やしていることだろう。

「何人来たど思う?」
「しゃねぇ、数えでみろぉ」
「やんだぁ。めんどくさい」
もう、面倒くさくなるほどの大行列。

「どごまで続いっだんだべ」
「たまげだなぁ。後ろの方なの霞んで見えねも」
通り過ぎる高校生も、呆れたように笑うしかない。

「昔はデパートの記念品もらうのさ、凄い行列でぎだっけげんとねぇ」
「今はほだなごどないびゃあ」
県体育館の階段の上から見ても、まだまだ最後尾は見えない。

本丸の漆喰が白くまぶしい。空が青く澄んでいる。
そしてサンマの芳しい匂いが漂う。
本丸を取り囲むのに槍や楯はいらない。サンマの匂いがあればいい。

「おお、やっと最後尾」
サンマの尻尾はピンと伸び、行列の尻尾はだらだらと伸びている。

食べ終えれば木陰で腹ごなし。

「なんだが旨そうな匂いがしてくるんだげんと・・・」
「おらだの匂いはもっと強烈だがらね」
日差しをたっぷり浴びながら、臭いを振りまく日を銀杏は虎視眈々と狙っている。
TOP