◆[山形市]両所宮例大祭 蒸し風呂の中を練り歩く(2014平成26年8月1日撮影)

今日は子供たちが待ちに待った、いや親でさえも待った両所宮年一回のお祭り日。

随身門に飾られた国旗が、いやが上にも祭り気分を盛り上げる。
「電信柱と電線がちぇっと邪魔だげんとな」

真夏のお祭りは周辺の空気まで浮き立つように替えてしまう。
その向こうに七日町のビル群が霞んで見える。

「丁度いい案配に、子供御輿がきたりゃあ」
「どれ追っかげで行ぐごどにすっべ」と桜の木の下から飛び出していく。

幟の立った通りへ太鼓の音が響き、周辺の家々から人々が顔を出す。

「後ろ、ちゃんと付いできったが?」
これから宮町の小路まで、道をうねうねと練り歩く。

まだまだ御輿の行列はスタートしたばかり。
子供たちの顔にも笑顔が見える。

「昔は担いで歩らたんだじぇ。ほいずば引いでいぐいようにお金掛けでタイヤ付けだのっだな」

太古の響きと子供たちの声に、サルスベリも首を伸ばして笑顔で見守る。

本当に裏道まで入り込む子供御輿。
街は蒸し風呂状態。子供たちはそろそろバテてきた。

休憩と号令が掛かると同時に、公園で遊び回る子供たち。
「子供だの興味と体力は無限大だずねぇ」
大人たちは汗を拭き拭き嘆息する。

鳳凰はいついかなる時でも羽を休めることが出来ない。
ただ、じっと子供たちの成長に目を細めるばかり。

「どいづいい?」
「こいづいい」
「ほいずとってけろ」
「うへっ、冷たい〜」
こんな言葉が、実は共通語で交わされる。(私はちょっと悲しい気分になる)

鈴が鈴なりで、まとわりつく湿気と熱気に耐えている。

「ちぇっとくたびっだげんと、アイス食て後半戦に突入だぁ」
子供たちは友達同志が集まって、あちこちでアイスを突っつく。

遊具に絡まりながら、会話をするでもなく黙々と体に冷気を取り込む。

蒸し風呂の中でブランコに揺れながら、空気を少しばかりかき回す。

「手さ甘ごいのくっついだじゃあ、ペタペタするったら」
今の時期、水ほど気持ちいいものはない。

「どーれ、後半戦スタート。みんな気ぃつけであべなぁ」
太鼓の元気な音が、再び宮町に響き渡る。

宵っ張りの月見草は日中しぼんでいる。
しぼんだ花びらは太鼓の音で微かに震えている。

「おお、来た来たぁ。頑張れよー!」
声を掛けられ、気恥ずかしげに御輿は進む。

まとわりつく熱気の中で退屈していたアザミは太鼓の音に目を覚ます。

「もう少しで次の学区さバトンタッチだぞぅ。ガンバレー」
数キロの道のりを子供たちは笑顔で終えようとしている。

「こだい集またよー、おじさんからは?」
「ゴメン。百円玉で勘弁してけろ」

直径20センチ近くはあるだろう、芙蓉の花びら。
車が通るたびブハラブハラと揺れ、花びらを支えるのが大変だ。

「御輿行列も終わたし、早ぐお祭りさ行ぐびゃ−」
この暑さの中、子供たちはどこまで元気なんだ。

氷の文字は子供たちを誘うように揺れている。

コンクリのオブジェは両所宮定番の休憩所。
ある子は腰掛け、ある子は登り、ある子は上から見下ろしながら祭りの雰囲気に浸っている。

噴水が涼しさを醸し出す。
目の前にあるだけで体感温度が数度は下がる。

社務所内の暗がりに、涼しさを求めてしまう紅葉の枝。

「んだがらよぅ、何回もゆうげんと、こごさはミツバチの巣があっから近づぐなず」
狸はウソじゃないと狸寝入りもせずに、何年も訴えている。

なんだかんだいっても、随身門をしげしげと眺めたことがなかった。
狛犬も象も、なんという迫力だろう。こんな暑い日なのに、緑の目に睨まれると背筋から冷や汗が流れそうだ。
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