◆[山形市]馬見ヶ崎ライトアップ 舞い散る花びら、舞い上がる人々(2014平成26年4月25日撮影)

「こっちの方が綺麗だぁ」
「あっちも綺麗だじぇ」
あっちもこっちもどっちも綺麗で人々は浮かれまくる。

空に赤みが差してきた。
まもなく暮れようとしている。6時半のライトアップに向けて桜は緊張を強いられる。

西の山並みに傾き始めた太陽は、馬見ヶ崎の水面を照らし、光を辺りへ散乱させている。

「かえずは日時計だべ。見方がよっくど分がんねげんと、このまま読めば4時半か」

「なんでだ?女子高校生たちが集い始めたじゃあ。夜の大宴会がぁ?」
自分の影を地面に伸ばして、次々とジャバの橋を渡ってゆく。

この桜のトンネルを走り去るのはもったいない。
自転車からおりて、ゆっくりと上を向いて歩こうよ。

上を向いて歩いていたが、降り積もった花びらにも目を向け、西日の当たる桜の脇で手のひらにすくってみる。

子供たちがワイワイがやがやと走り去る。
花びらはちょっとだけ舞い上がり、興味を失い再び地面に戻る。

「なんだて雪でも積もったみだいだねぇ」
踏むのをためらわれるような花びらの絨毯。

「気持いいくて、なんぼでも走られるんねが?」
「口開けで荒い呼吸してっど、花びらば吸い込んでしまいそうだず」

「ほだい急がんたて、春は去らねがら」
「ほだごどない。桜はあっという間だがら」

橋のたもとに置かれたバイクに光が反射する。
まぶしげに西の空を見ている自転車が、車列が空くのを待っている。

とりあえず定番の位置から撮ってみる。
ライトアップにはまだ早い。

「夕食はなんだべなぁ」
「うちではふき味噌だじぇ」
「おらいではうこぎご飯」
みんな腹を空かせ、馬見ヶ崎の水面を見ながら家路につく。

「なんだが青い山脈的雰囲気だずね」
「古ーい」
青い山並みに桜に女子高生の組み合わせが美しいのは普遍だべ。

「見でけろ、こだいじょんだぐ登るいじゃあ」
「あ、なにがゆたが?」
桜の木の周りでは、いろんな人間模様が繰り広げられる。

今日最後の光を放つ大空で、鯉のぼりは口をパクパクし、微風に揺れる。

ライトアップされた花びらは華やかだが、夕日に映える花びらも儚げで美しい。

人々は日中モードから、夕暮れモードに気持を切り替え、桜とともに静かに呼吸を整える。

風も止み、辺りがオレンジ色に染まる頃。
女子高生の嬌声が、馬見ヶ崎の流れの音を圧倒する。

「あれが雁戸山だべ。あっちは笹谷峠だがら」
山並みを眺めながらライトアップを待つ期待感。

「これはどう見ても太陽に吠えろだべ」
真っ赤に燃える太陽が異様に大きく膨らむのを見て、どうしても太陽に吠えろのテーマソングを口ずさんでしまう。

ついにライトアップが始まった。
桜にとっては眠りを妨げられて迷惑だろうが、人々は宵の散策に繰り出してくる。

闇が静かに深くなる。
桜の柔らかな囁きと、馬見ヶ崎の流れの音が河原に満ちる。

川風は一気に冷え込んでくる。
桜は震えながら水面を見つめる。

桜に囲まれて、人々は思い思いに宵の時間を満喫する。

橋の上をそぞろ歩きながら、光の帯を眺める幸せ。

「届いだぁ」
「あたしさも触らせでぇ」
なぜ桜の花びらには、みんな触れたがるのだろう。

「寒ぐなてきたはぁ、そろそろ帰らねがぁ」
「あたしは心がぽかぽかだげんと・・・」
男女の意識の微妙なずれを、宵闇が包み込む。

「ちぇっと待ってぇ、綺麗に撮ってがら帰る」
「わがた、待ってっから早ぐな」
男が待つ方が世の中うまくいく。
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