◆[山形市]嶋公園 子供たちのシルエット(2014平成26年4月14日撮影)

嶋地区のシンボルタワーは永い影を公園内に落とし、そろそろ今日も終わりだと告げている。

竜山は雪をほのかなピンク色に染め、遂に開花宣言のあった山形市を見下ろしている。

いつのまにやら巨大な遊具が極彩色でそそり立つ。

「ちゃんと網さたづげよぅ」
「さっぱりおかなぐないもん」
冷たくなってきた空気に、指はかじかみ、足下はプルプル。

「オマエ、やくさら揺らしてっべ」
「ほだごどないずぅ、勝手に揺れるんだずぅ」

遊具に斜め下から夕日が入り込み、そのままくぐり抜けていく。

「こだな子供だましだずぅ。簡単に渡るいずねぇ」
中学生くらいになると、変に背伸びした物言いをしたくなるもの。

「ギャーーーーッ」
ぶら下がった子供の声が、糸を引くように遠ざかる。

銀の鎖は夕日にキラキラ輝いているけれど、握るとヒンヤリ冷たい。

子供たちの歓声は隣の「おーばん」まで流れ、遊具の影も「おーばん」まで伸びている。

「おんちゃん邪魔」そんな声が聞こえてきそうな雰囲気を醸し、カメラの脇をすり抜け子供が滑り去る。
「おんちゃんも滑てみっだいなぁ・・・」やっぱり恥ずかしさには勝てない。

「あびゃあ、あびゃあ」
「んだずね、寒くてわがらね」
「寒くて、しょんべむぐれっかぁ?」
夕日を背に家路につく子供たちの声を、山形弁に変換してお送りしています。

四人みんな揃って、夕日に向かってお手上げか。

「UFO落ちたんだが?」
「おんちゃんの詰まらね冗談ば無視して、遊ぶべぇ」

頂に立ち、シルエットたちはなにやら算段をしている。

「オー、ロミオ〜、ロミオだべ?」
「お、オレ違うんだげんと、しかも日本人だし・・・」
少女の演技は指の先から髪の毛の先まで迫真に満ちていた。

「飛雄馬もうやめて!」
「ね、姉ちゃん、止めねでけろ」
夕日に髪の毛が浮き立ち、変な熱演が続く。

「キャーッ、ジャイアンだぁ、逃げろー!」
女の子は夕日を踏んづけ、一目散に走り回る。

ワッと驚かそうとしているのか、ソッと慰めようとしているのか、
この後のストーリーを考えながら、太陽は山陰へ消えようとしている。

「もっとギュンギュン〜!」
際限を知らない子供たちは、冷たくなった風に気づかずに漕ぎ続ける。

徐々に闇が忍び込み始める。

街並みはオレンジ色に染まり、一日が終わった安堵感に包まれる。

西日を受けて、街並みが一瞬だけ浮き立つ。

遊具は黒く冷たい影をまとい始める。

「この頃に出来た友達は一生もんだがらな」
「ほだごどゆたて、まだ分がらねべげんとよ・・・」

シルエットはみんな笑顔。
オレもあの頃に逃げ込みたい。ってが。

「今日は満月なんだべが・・・」
風が一層強く冷たくなってきた。上着の襟を立てオレも帰ることにする。
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