◆[山形市]初市 氷点下の賑わい(2014平成26年1月10日撮影)

「空は明るいんだげんと寒い寒い〜」
竜山に引っかかる雲は、はぎ取られるように背後へ去って行く。

「今のうちに撮っておがんなねべなぁ」
山新角から旅篭町四辻まで拡幅された道路は、いずれここまで達する。

「あだい細いっけ道が、見通しいいぐなたどれはぁ」
うっすらと積もった地面の雪がまぶしく輝く。

「済生館の西側もみごどに広ぐなたなぁ」
大沼デパートの駐車場は解体の真っ最中。

暖まった牛乳に膜が張るように、まだまだ山形の雪はうっすらと幕を張っている程度。
その膜の上をタイヤはしわくちゃにしてしまう。

白い屋根の隙間にも、まだ正月気分が漂っている。

寒いと近くなるのが人の常。
駐車場のトイレを借りて、ホッとしながら隙間の向こうを見れば警備のおっちゃん。
こんな寒気の中、トイレには何回行くのだろう?

トイレの窓に微笑ましい光景。
「いづまでも仲良ぐな」

フロント硝子に綿菓子のような雪が付くころ、人々は七日町大通りを目指す。

「どさいったんだずぅ」
「しゃねずぅ、捜してこいぃ」
「寒くてやんだぁ」
子供たちの声が、凍てつく路面を伝わってくる。

人の手を暖める手袋がポールの上で凍えている。

「ちゃんと並んでな。ペラカラしゃべてんなよ。迷子なっからな」
ペラカラしゃべてんなとはよく言われたが、それは昭和の山形。

「まだぬるこくてわがらね。さっぱり湯気たっていねもの」
一升瓶はジワジワ暖められて、少しずつ気分が良くなってくる。

「ゆるきゃらいだ〜!とりあえず撮っておぐべ」
「鶏冠(とさか)がかわいい〜」
「鶏冠んねず。紅花だず」

おがぐらからかぶづがっでも、チョコバナナとカップはしっかりと握って離さない。

「かえずなのなんたや?」
「いやこっちだべ」
「こいずばここで直接履いでってもいいんだが?」
「もちろん。代金さえ払てもらえれば・・・」

「みごとだずねぇ」
そう思って眺めるのは自由だが、彩りの無い季節に原色は目に痛い。

「けろけろー金けろー」
「蛙んねんだがらよ、招き猫だべぇ。あれ?犬も紛っでだりゃ」
「ま、いいっだな初市は無礼講だべ。ん?」

「ちぇっと撮影させでけろっす」
「いがんべ」
「あのー、さっき支払った千円札は仕舞ってもらわんねべが」
木の雪かきを購入したあとに、撮影を頼んだのでした。
※木の雪かきはプラスチック製より、五倍長持ちするとのことでした。

しな垂れかかる団子木は、粉雪の中をゆらゆら揺れる。

「縁起物だがらよ〜」
「んだずね〜」
人々の会話が、粉雪に紛れる初市はたったの一日。

「人がいっぱいあらぐげんと何したんだ?」
「初市っだな」
「まだ寝でっだいのっだなねぇ」
小さな蕾はまだまだ固い。

道ばたの生け垣に日差しがパッと降り注いで、雪が真っ白に輝く。
人々のマスクの隙間からは白い息がちょろっとはみ出す。

「天気もいいんだが悪れんだがわがらねずねぇ」
「んだぁ、突然粉雪が舞うがど思たら、陽も差すし」
気まぐれ天気でも初市は大盛況。

「おまけしてもらて、いがったなぁ」
子供はちっちゃな手に握り、にんまりと頬を緩める。

「どんどん前に進んでくださ〜い」
納豆汁の湯気に誘われて群がる人々の行列は、最後尾がどこかわからないほど。

とかく衛生には気を使うご時世。
不謹慎だが、なんとなくゴムの手袋が気に掛かる。何かあったら大変だがらしょうがないんだべげんとなぁ。

AZ前のあちこちで小さな湯気が立ち上る。
寒い中での納豆汁が胃の腑に落ち着けば、心にポッと火が灯るような感覚。

「お、なめこ入ったりゃ」
一瞬自分で食べるか迷うじいちゃん。

「なめこ食ぇ」
「孫ずぁ、ほんてんめんごいもんだまぁ」
孫が口を開けるときに、お母さんも口を開け、おじいちゃんも口を開ける親子三代。
TOP