◆[山形市]印役町・双月町 霧も晴れずに(2013平成25年12月18日撮影)

「なんだず、晴れるていう天気予報だっけどれぇ」
馬見ヶ崎の土手に上がり、辺り一面真っ白な光景を目の当たりにしてため息が出る。

雪のマフラーをまとい、枯れ果てた草木は寒風をしのいでいる。

道路の真ん中がゴミ集積所。
「いいんだが、われんだがわがんねげんと、こうなてしまたのよ」
温かい家から追い出されたゴミたちは、道の真ん中で自分たちの運命を嘆いている。

「なんぼ寒いったて、犬の散歩はさんなねがらねぇ」
寒気に包まれた路地に、白い息が浮かんでは消える。

「真っ赤なのはしもやけなたがらだが?」
滴を垂らす赤い実を茶化したが無視された。

相変わらず霧が晴れる様子も無い。
寒気の沈殿する街並みは、じっと光を待っている。

大気はその動きを止めて、木の芽を冷たい手のひらで包み込む。
時折身震いするように、木の芽は小さく揺らぐ。

「12月なて、降っどぎは降っげんと、すぐ溶げるもんだげんとなぁ」
この雪を見て、まさか今年の雪が来年まで溶けないんじゃなかろうかと不安が襲う。

「雪だら、だいなしだずぅ」
どんなに少しの雪でも、山形人の心には黒雲が湧き上がるばかり。

タイヤ交換も終わったし、漬け物も確保した。
冬を乗り切る準備は各家庭で済んでいるけれど、この天気ではどうにも晴れない心の中。

ヤツデはチロチロと空気をいじっている。
車が風を巻き上げ走り去り、ヤツデが縮こまる。

「気分も体もズネーンとしてるぅ」
グレーの空を見ていると、体も気分も重くなる酒瓶たち。

「わがたがら催促すんなずぅ」
真っ赤な口を開けて、年賀状と言っているポスト。
はがきすら買っていない身にはプレッシャーがのしかかる。

「どだごどなるんだがなぁ」
今まで親しまれた橋は撤去され、仮設の橋が架かる馬見ヶ崎橋。
橋のたもとの家並みも激変しようとしている。

「上の段の字は読むいげんと、下の段は文字なんだが?」
どうでもいいと思いながらも、心に引っかかる図形。

山寺街道の向こうへ目を転じれば、やはり霧は晴れそうにない。

風を遮るものもない河川敷へ出てみる。
薄墨色に染まった空が屋根のすぐ近くまで覆い被さっている。

「こだんどぎ出がげんのもやんだげんとぉ」
「んだずねぇ。しょうがないっだべ」
こたつに入ってミカンでも囓っていたいのに、人にはいろんな用事がある。

「たまげだぁ。んだてゴミの檻から子供が飛び出すのば注意すろて書がったじぇ」
寒いとつまらない考えが頭を巡るようになる。

「ブランコさ乗ってんのは雪だげがぁ」
「しょうが無いんだあ。オラだは乗る者を拒まずだもの」
遊具は冷え切った体をどうにもできず、子供の温かい尻をいつまでも待っている。

結局晴れなかった山形市内。
土手を走る自転車が、薄い靄の中へ消えてゆく。

「ったぐよぅ。仕事中に電話よごすなず。手つったくて指がんまぐ動がねどら」
新馬見ヶ崎橋の基礎が姿を現し始めている。

「こだんどごで工事ば見でおもしゃいが?」
「好ぎでこごさぶら下げらっだのんね」
傘も人間も置かれた場所で耐えるしかない。

「杭の人生ば全うしたんねがぁ」
「まだまだ現役。新馬見ヶ崎橋が完成するまでは頑張らねど」
風雨にさらされた体に、まだまだ頑張るという気が微かに残っている杭。

「葉っぱもすっかり落っだし、気持ちまで寒ぐなるなぁ」
彩りの消えた河原に黒い枝が垂れ下がる。

「鼻水も凍てしまたずぁ」
「よんだれんねがよ」
木の芽が鼻水を垂らすとは知らなかった。

枝に付着した雪が溶け、そして凍って垂れ下がる。
誰も通らない土手の道にも物語はある。

「おっきな愛だなぁ。」
寒くても山形人のハートは温かいという証明が河川敷に残されている。

「来年に向けた準備に入たんだがぁ?」
黒い節々には冬を耐える力と、春へ準備する力が漲っている。

「水滴ば振り払うど思たら、凍てしまて振り払わんねぐなたはぁ」
「あんまり頑張んなぁ。自分が落ぢでしまうじゃあ」
新年まで落ちずに耐えてくれるか、この枯れ葉。
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