◆[山形市]市営グランド・薬師公園 日差しは穏やかに(2013平成25年11月2日撮影)

「ちぇっと危ない!ダンプ来っからて!」
「なんだべず。秋の一日ばのんびり堪能すっど思たのに」
なんぼ天気が穏やかだろうと街は動いているし、働いている人もたくさんいる。

足元に絡みつく落ち葉を後にして走り去る。
背中には木の枝の影を張りつかせながら。

「この頃は女の子がサッカーしてでも珍しぐないもなぁ」
緑から黄色に変化し始めた河川敷から歓声が響いてくる。

「入ってはいけません!て強ぐ書がったべ?」
「太ってはいけません!て書がったどもて、ドキリとしたぁ」

「薬師町の看板が泣くべずねぇ。真ん中から折だっで錆びっだじぇ」
「ほだごどないっす。壁さおかがて陽浴びでっど気持ちいいばりだも」
市営グランドの周りは工事中の槌音が日差しに混じっている。

「私だはただぶら下がてる傍観者だげんと、
新しい市営グランドがどだなごどなるんだが、少しは気になんのっだなね」

「いづ完成するんだっす?」
「来年完成ったな、人工芝なんだど」
たっぷりの日差しを浴びながら、市営グランドのことを教えてくれた。

「このグランドで昭和27年に国体が開がれだのっだなね」
60年の月日が流れ、またひとつ街並みが変わろうとしている。

工事現場の脇で、カチャカチャに乾いた夏がこごまっている。

「ただ立ってんのもしんどいべぇ」
「ただ立ってんのんね。こだい天気いいのに仕事してるんだじぇ。分がてけろ」

「ぺしゃんこだどら。それなのに気持ちは澄みきってんのが?」
「あんまり踏んづげらっで、痛いのも忘っだぁ」

澄み切った空に赤い実が散りばめられる。

離ればなれになっていた鎖は、ファスナーのように閉じられる日が来るのだろうか?

「葉ボタンたら、冬の代名詞だべはぁ」
なんだべとバイクは振り返り、日差しの中へ走り去る。

八百屋さんの店先に庄内柿。
街中に住んでいると、季節の訪れは店先で知る。

「ほだんどごさいっど、踏んづけられっぞ」
葉っぱたちは後先考えず、日向の温もりの誘惑に負けてしまう。

ぐるぐるの渦巻きは、クレマチスの種。
綿毛にはたっぷりの日差しを貯め込んで冬に備えているようだ。

晩秋の澄んだ大気の中で、夏の残骸が青息吐息でフェンスにへばりつく。

フェンスを覆っていた夏草はカチャカチャに乾き、しかもスカスカになっている。
スカスカの心の中を光の帯と微風がすり抜ける。

公園の木々は夏にへばりつくもの、一足先に冬へ迎合するものとで対処が分かれている。

「温かくて眠てしまいそうだぁ」
ベンチはふんぞり返るような体勢で、全身に光を浴びている。

風が吹く度にあちこちで、カサコソと今年一年の思い出話に花を咲かせる落ち葉たち。

「天気いいくて、洗濯物乾いだどれはぁ」
ススキたちは早く取り込めと、人ごとなのに手を振っている。

晩秋の日差しは低い位置から光を投げかける。
エノコログサの草地には放射状に黒い影が伸びている。

「乾燥肌なんだが?」
「なして?」
「んだて、さっぱり艶がないどれ」
消火栓は光沢の無い顔を黙って向けてくる。

「薬師町は今、あっちこっち掘り返して大変なんだず」
「道路が広ぐなて、便利にはなっべげんともなぁ」

「こごもいずれは道路工事がはじまるんだべ」
細い路地から、まだ青い銀杏の木を見つめながら感慨に耽けてみる

「ほんてん頼むず、頑張ってけろモンテディオ」
一度J1の味を知ってしまい、あの興奮を再びという気持ちがステッカーからも伝わってくる。

「今日は休みが?」
「当たり前だべず。こだい天気いいんだじぇ」
スコップは一輪車に腹ばいになって甲羅干し。

薬師公園に足を踏み入れる。
すっかり暖色系に染められた園内からは、落ち葉の囁きしか聞こえない。

梢の隙間からこぼれ落ちた光を、いとおしいものにでも触れるようにありがたがる落ち葉たち。

手水舎の水の中に落ち葉が隠れ、揺らめく水の波紋をじっと見つめている。

「おらだはいづまでぶら下がてっどいいんだ?」
ぶら下がっていることに不満はないが、ただ、この先どうなるかだけが心配のタネ。

光り輝く黄金色や朱色は、車体にも張りついて覆い尽くそうとする。

「おらだばカメラが狙ったば」
「気にすんな、ただの親爺だどれ」
周りのことなど知ったことかと、黄金色に染められた水面にを悠然と泳ぐ。

毛繕いしているカモは、水面が金色に染まればやがて雪が降ることを知っているのか知らないのか。

透き通った水面の底に落ち葉がたゆたっている。
時間は好意的にゆっくり動いてくれているようだ。

近郷近在から釣り好きが集まってくる薬師公園。
主を待つバイクのヘルメットには、青空と赤茶けた樹木がぺったりと張りついている。

「この静かな空気と時間の流れが好きなのよぅ」
間もなく雪が訪れることを知っているからこそ、今この瞬間が極上だと思える。
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