◆[山形市]第5回 ハロウィンパレードin山形(2013平成25年10月19日撮影)

「ありゃあ、なんだべまんず。お祭りでもあんまいし、すごい人だかりだぁ」
ビル街の裏にひっそりと広がる第二公園に、突然人々が集結した。

露店まで出た祭りの趣に、心が躍る。

「みんな角ば生やして、なにがごしゃいっだのんねべね」
「早ぐお菓子けろー!」
ごしゃいではいねげんと、やっぱり気持ちは急いているようだ。

とんがり帽子は天を突き、突かれた空はハロウィンを祝うように青空になった。

「ウガガー、泣く子はいねがぁ」
「なまはげんねず」
包帯男が大人しくスタートを待つ。

「おお犬神家の一族のスケキヨか?はたまたオペラ座の怪人か?」
「かわいぐ撮ってけろニャー」
いやが上にも高揚感が湧き上がる仮装。

かわいい悪魔たちの影は、地面へビローンと伸びてスタートを待っている。

「ほれ、ちょどしてろ。街中さ行ぐ前に記念撮影だがら」

汽車のある公園(第二公園)を後にして、ぞろりぞろりと出発だぁ。

「なえだべまんず。めんごいごどなぁ」
窓から顔を出したおじさんおばさんが、温かいまなざしでグダグダの行列を見守る。

「どさ行ぐんだべねぇ。ワクワクするぅ」
言葉と裏腹に、行列は乱れっぱなし。

「まだスタートしたばりだがら元気だずねぇ」
親はもうちょっとしたらチャンコロマイ(おんぶ)してけらんなねのを分かっている。

「ほだい着飾て、衣装が重だぐないが?」
「おじさんなまってるぅ。ハハハ」

「けろーけろーお菓子けろー」
「おまえだは蛙が!」

いくら怪人でも、子供の面倒はキチンとみてやらなければならない。

「ほれ、信号赤なるはぁ」
お母さんは子供の尻を叩きながら先を促す。

「このおっちゃん誰?」
「目合わせんなな、かぶづいでくっど悪れがら」
私はゾンビか!

怪人が見下ろしてくる。
でも怪人の子供は微笑みを投げかけてくる。

「むむー、道のりは長いようだ」
怪人は夕日を浴びながら遠い道のりを思案する。

かぼちゃお化けの背中を、秋の日差しが暖める。

傾いた太陽の光を浴びながら、
おばちゃんはたまげて自転車のハンドルをキュッと握り、
行列はひたすらお菓子を目指して行軍する。

「なんだべこれ」
「蜘蛛だばぁ」
「さわてみろぉ」
この後、ちょいと触れて、みんながのけぞったのはいうまでもない。

「モグモグー、フガフガー」
ぐるぐるの包帯巻きで、なにかつぶやきながら黙々と、トボトボと歩く。

「お菓子のためだガンバレー!」
お母さんはコースからずれないように子供を前に進める役目。

新しく出来た駅南アンダーの上を通過する。
影がうどん並みに細く長く伸びてきた。

背中にお母さんの愛情をくっつけて、おぼつかない足取りで行列に付いていく。

「駅前さ出だねはぁ」
「半分くらい来たんだべが」
そろそろ日暮れも近い。

「あれ?ずっと寝っだんだっけが、今寝だんだっけが?」
とにかくハロウィンがなんだかも分からないうちにイベントは終わりそう。

「やんだぐならねが?足痛ぐないが?まだまだ歩ぐいが?」
母親は子供の様子が気になって、自分が楽しむどころではないのかもしれない。

「ほだんどごで何しったの?」
「葉っぱば踏んでだの」
子供の意味不明な行動に、母親はイライラしながらも、愛情が上回るまなざしで見守る。

「やっぱりチャンコロマイさんなねぐなたがぁ」
子供はお父さんの頭へ必死にしがみつく。

「ほだいみんな一斉に手ばつだしても、配るのは一個ずつだがら」
子供たちは一直線にお菓子へ強烈な視線を向ける。

「掃がっで落ちでくんのよねっす」
「掃がれだらただの人だべず」
怪人は仮面を付けても付けなくても、なかなかいい男であり、いいお父さんだった。

「まさが山交ビルのバスターミナルの中まで通ていぐなてしゃねっけぇ」
バスを待つ人々が好奇の目で見ていたのはいうまでもない。

「包帯マンの顔はめんごがった」
ヘタウマなオレンジのベストも、おじさんきゃわいぃと思う。

「お母さん空中浮遊しった?」
確かに地に足が付いていない。
実はお母さんは人間じゃないのよと、答えたかどうかはわからない。

「ほだい急ぐなぁ、あぶないべなぁ」
ちびっ子お化けが走り出したその脇で、二人は甘い空気に包まれている。

「どいずいいべ。目移りすっずねぇ」
「迷てるうぢに溶げでしまうべな」
子供は甘い物には目がないはずなのに、目が輝いている。

「今日だげんねくて、明日からも来てけろよー」
お店のご主人も笑顔を振りまき大変だ。

「おぉ、山形の元祖ゆるキャラだどれ」
子供たちは豆に群がる鳩のように、でんちゃんへ殺到する。

ハロウィンの興奮が冷めやらぬ第二公園。
ふと地面を見ると、確かに秋は深まりつつあった。

太陽が山際から山の向こうへ隠れた頃、市民会館の駐車場へと、とぼとぼ歩く。
三人の乙女の象はおじさんを無視し、暗くなっても世間話に花が咲く。
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