◆[山形市]高瀬・スポセン 紅花とアジサイの二本立て
◇高瀬・紅花編(2013平成25年7月14日撮影)

「ちゃーっす」
「おだぐ挨拶が軽すぎるんねが?」
軽すぎる挨拶を、笑顔でお地蔵さんが注意する高瀬の風立寺。

「ふわーっ、よぐ寝だぁ」
深い木立の中はさぞ安眠できることだろう。

地蔵さんたちがなにやら会議を開いている。
アジサイは聞き耳を立てるが、湿気がわだかまりよく聞こえない。

「なに、じっと考えっだのや?」
「選挙さ行ぐが行がねが悩んでだのっだなぁケロケロ」
「ほんてん?」
「単純な親父だなぁケロケロ」

「んまさ乗るいがら、孫ばしぇで来たのよぅ」
「んま?」
「パカパカていう馬だずぅ」
時折差す日が背中を炙る。

「まんずよぉ、しゃますさんなねまなぁ」
「んだが、んだが、頑張ってけらっしゃい」
警察は人を宥めるのも仕事。

「撮影するに、おらだいねほうがいがんべぇ」
「ほだごどないっす。紅花の引き立て役でいでけろっす」
もしかして失礼なことを口走った?

「あどいいずぁ、暑いしこわいしぃ」
紅花の束を貰い、安心して涼む親父さん。
向こうの画面では「おもひでぽろぽろ」しったよっす。

ハイエナ!
まさにカメラという武器を持って獲物にたかるハイエナだ。
かわいそうにモデルは愛想笑いで、助けてと懇願してる。

他のカメラマンを批判しておきながら、俺も遠慮がちに撮ってしまった。

「やっぱり若い娘はいいもなぁ、蓮の葉っぱみだいに水弾きがよさそうだもぉ」
「俺なの汗かいでもダラーッと垂れるだげだじぇ」

暑さのためか、親父の舐めるような視線のためか、
頬や耳たぶがほんのり上気する。

視線を逸らし、思いは一つ。
「早ぐ親爺だいねぐなて、精神的に涼しぐなっだいなぁ」

「早ぐあべはぁ」
「あべったて、どさ行ぐだいのやぁ」
むせ返る暑さの中で子供はだれてしまい、家に帰れば親たちがぐったりするだろう休日。

「んだんだ、ほごどほごば合わせで畳むのよ」
伝統行事は後片付けが終わるまで気が抜けない。

「人ば呑むくらいな気持ちで踊らんなねのよぅ」
「はえずぁんだげんと、その前に冷たいお茶ば飲ませでけろぅ」

「あ、なにが虫見つけだ」
子供は自分の世界に浸り、カメラ親爺はモデルに色めき立っている。
同じ高瀬の空気を吸いながら、まったくの別世界にいる子供と親爺。

「高い高いぃ」
「きゃーっ×●△#♪」
孫は目に入れても痛くないし、目の高さより上に持ち上げてみたい。

「痛いの痛いの飛んでいげぇ」
「痛いのながなが飛んで行がねぇ(T^T)」
痛みはノロノロと歩み去り、徐々に笑顔が戻ってくるはず。
  
◇市スポーツセンター・アジサイ編(2013平成25年7月16日撮影)

「早ぐ夏休み来ねがずねぇ」
「早ぐ来たら早ぐ終わてしまうじゃあ」
下校する四中生は、アジサイなど眼中になく歩き去る。

西日が道路にバーコードをこしらえる。
バーコードの橋桁を踏んづけながら、四中生は下校する。

傾いた陽を斜めから受け、今日も1日が終わるかとアジサイは安堵する。

「まんず今年はダメよ。例年と比べでも花が小ぶりだし、
まばらだものぉ」
いつも散歩するらしいおじさんは、延々と解説してくれる。

「なんだべ?卵?」
「あらぁ、トマトの自販機がぁ」
帰ったら母ちゃんさ教えでけらんなね。

夕方近く、逆光になったからか、アジサイは淡い光を身にまとい、
ゆらゆら揺れながら、帰り道の人々を優しく見守っている。 

梅雨なのに日差しがギラリと侵入してくる。
アジサイは日差しと車の排気にさらされて顔を背ける。 

サッカー少年たちの声が、枝葉をくすぐって流れ込んでくる夕方。 

サッカーシューズが残した水たまりを、夕方近くの雲がゆっくりと流れてゆく。 

「子供ずぁ、なしてほだい元気なんだべ」
べたべたと汗が体にまとわりつき、ボードの裏で深くため息をつく。 

そろそろ日没。周りのライトが点灯し、子供たちの闘争心にも火が灯る。 

空へ弧を描いた水は、喉を潤し手を冷やし、タオルを生き返らせて役目を終えた。 
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