◆[山形市]六椹八幡神社豆まき 吹き飛ばせ寒風(2013平成25年2月3日撮影)

天気予報では曇りだったのに、空は突き抜けるように青い。
寒風も体に痛みを感じるほど吹きすさび、体を突き抜けていく。

「フムフム、なるほど〜、こだい協賛してもらてがぁ」
氏子さんたちの力と地域の密着力が黄色い札になって、風にはためく。

雲が切れると白い壁面がパーッと浮き上がり、枝葉は壁面をなぞるようにワサワサ踊る。

「寒いどご、ご苦労さま。んだら怪我なぐ、楽しぐ、みんな笑顔で終わるいように頑張っべ」
地域愛があってこそ地域は活性化する。

子供の頃、この鐘楼の石垣から飛び降りられれば鼻高々だった。
今は鐘楼自体に登ることが禁じられ、八幡様で鼻高々になれることもなくなった。

境内の一面に茶色くチクチクした葉っぱが散りばめられ、寒風にひっかき傷を作っている。

「少しでも雪ば削てけっかどもてよぅ」
「堅っだくて分がらねべ」
雪は意固地になって、なかなかスコップの言うことを聞かない。

「半径30センチぐらいしか温かぐないげんとな」
雪の上に置かれた石油ストーブは、
足がしもやけになってしまうと心配する。

「あっづいお茶なんたっすぅ」
この寒さの中では、たった一杯のお茶がほんとにありがたい。

「オマエばりタオル被って、温かそうだなぁ」
御神酒の器は胸を膨らませて、寒さをこらえる。

三々五々人々が集まりはじめ、空に張ったご神木の枝が、事の成り行きを見守っている。

「1等は30キロだがらねぇ」
「子供なの当だたら、持て帰らんねべぇ」

ご祈祷の音がガラス戸を震わせている。
長靴たちは行儀良く外でじっと待つ。

テストが終わった数日後、廊下に成績上位者の名前がズラーッと張り出されると、ドキドキして見たもんだ。
今はそういうことも競争心を煽るということでダメらしい。
あ、全然関係ないコメントをしてしまった。協賛者の名前がズラーッと並んでいたものだから、つい思い出してしまった。

「重だぐなたもんだなぁ」
孫は安心しきって負ぶさっているが、お爺ちゃんの指はヒィヒィいっている。

寒風がテントをはためかせたり、日差しが急に差し込んできたりするなか、豆まきが刻々と近づいてくる。

「どさあるやぁ?」
「ほれほごよぅ」
二人はマスクの隙間から白い息を吐きながら、視線を走らせる。

今年は寒さは厳しいけれど、雪は去年ほどじゃない。
おかげで雪の下に隠れきれない落ち葉がうずたかく積もり、風に身を任せている。

「一回溶けでがら凍った雪はザッグザグだもなぁ」
凍ったつぶつぶはキラキラ輝いているけれど、今日の人々は豆が目当てなので誰も目もくれない。

「ボーリングのピンみだいだぁ」
「誰だず、ほだなごどゆてんのは」
ピンのような影は今は棒立ちだけど、まもなく組んずほぐれつになる。

人々の視線は紅白幕の上に集中する。
みんな頭の中は豆だらけだし、手を開いたり閉じたりして準備運動に余念が無いし、袋の準備も怠りない。

寒いはずの境内は、徐々に熱気が満ちてくる。

火ぶたが切って落とされた。
いや、太鼓の合図で神主さんが最初の豆を空高く放った。

空を見ろ!スーパーマンだ!いや、豆だ!
パラパラ降ってくる豆を追い求め、人々は寒さをとっくに忘れている。

「なんだが優しそうな鬼だずねぇ」
「いいがらやっつけでしまうべ」
ちん入した鬼は、子供に囲まれ追いつ追われつ。

「あ、鬼が角付きカツラば落どしたじゃあ」
カツラを拾って貰い、爆笑の渦の中、鬼は申し訳なさそうに腰を低くする。

子供たちも豆が受け取れるように、第一部は大人も子供も、そして第二部は子供だけ、
そして第三部は豆をまく側を一般の大人や子供ができるという考え抜かれた趣向。

心の底から笑顔を振りまけ、豆よ空に舞え!
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