[山形市]山大・東原町・もみじ公園 冷気に包まれて(2013平成25年1月19日撮影)

「いやぁ、こだい晴れ渡っど気持ぢいいもんだぁ」
空ばかり見上げて歩くと、東京の人のように転んでしまう。

日差しで暖まった壁へ、枝の影が束になって寄りかかる。

誰が折ったのか、枝は雪原で突っ伏し、青い空へ指先を伸ばしたまま力尽く。

冷気が身に染みる山形盆地。
山大グランドの向こうからは冷気に混じり、緊迫感が棘となってフェンスを越えてくる。
そりゃそうだ。今日はセンター試験の日だもの。

「ほっかむりした泥棒みだいだなぁ」
「失礼だずねぇ。真面目に空き缶ば待ってっど」

透明で静かに流れる堰の中を、
石垣から顔を出した葉っぱが様子見している。

「びじゃびじゃて、やんだごどー」
マンホールの蓋は鈍く光りながら空を向くだけ。

「雲の流れは見えるし、千歳山も近ぐさ見えるし、こだいいいロケーションないべぇ」
山大生がそれに気づくのは、みんな卒業してから。

「全部の看板の字ば読んでがらんねど入らんねんだがっす?」
「いやいや、今日はセンター試験だがら入らんねのよっす」
「んだべなぁ、世界に門戸を開く山大だもねぇ」
錆びた門扉はいろんなルールを背負って重たい思い。

「サドルばトカゲ這ってだど思たっきゃー」
溶け出した水滴は、形を変えながらくっつき合い、やがて地面へ落ちてゆく。

「なんだがポッカリど空いで落ぢづがねずねぇ」
「なじぇ、なるんだべねぇ」
この先にオーヌマホテルがあったはずと市民なら誰でも思う。

「雪の下り坂だげんと、誰も転ばねじぇ」
「んだっだなぁ。東京の人どは歩き方の基本が違うものぉ」
そんなことで自慢してもしょうが無いと思いつつ、ボーッとして足を雪にとられる。

「お母さん、なして雪ばり降んの?」
「それはね、山形だがらよ」
小キリンは納得して、優しい母キリンのまなざしを見つめる。

「ヤツデだら、なして真冬でも元気なんだがねぇ」
「まだ子供なんだべぇ」
ヤツデはムッとしたように、滴をちょいと払い落とす。

「もう駄目だはぁ」
「駄目なごどないっだず」
「んだて折だっだもはぁ」
朽ち折れた枝の周りは、冷たい空気に重苦しい空気も重なっている。

「なんぼ片づげだてしょうが無いんだげんとよ。すねでらんねま」
いくら雪かきしても、翌日にはまた同じ事の繰り返し。

「なしてこだな寒いどぎに試験なのさんなねんだべねぇ」
遠くに山大の正門をみながら、思わず口から言葉が漏れ出てしまう。

「なんだが元気な声が聞こえっど思たら、そり遊びしったどれ」
雪だるまの影に隠れて、声を掛けようか逡巡する。

「格好いいべぇ!」
「おかなぐないがぁ?」
屈託なく笑顔をあたりにまき散らす子供は、ほんとに周りを明るくする。

「アワワワーッ」
「大丈夫だべが」

「テヘヘ、これくらいなんてごどないべしたぁ」

撮影を快諾してくれてありがとう。
五小の校庭に溢れた笑顔は、一時寒さを忘れさせてくれた。

五小から雪を踏みしめ数分。
凍り付いた静寂が覆うもみじ公園。

雲の流れで太陽光は弱められたり強められたりを繰り返し、雪吊は黙して虚空をじっと指し示す。

ボジャン、シーン。
鯉が突然跳ねる。波紋がゆっくりと広がり、また静寂が水面を覆う。

「伸びだなぁ」
「んだっだなぁ、大寒だじゃあ」
みんな縮こまっている冬に伸びるのは、軒下の氷柱と焼いた餅。
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