◆[山形市]清住町・春日町・霞城セントラル 冬の音色を聞きながら(2012平成24年12月23日撮影)

人々は師走の忙しさの中に埋没している。
雁戸山や竜山は真っ白に衣装替えをして、忙しない街中を見下ろしている。

「もう一枚多ぐ着てくるんだっけぇ」
商店の軒先でちょっと立ち止まり、服のジッパーを一番上まで上げ、首を亀のように縮こめる。

「二中は三中のライバルだっけもなぁ」
「なして二中ど三中は、あだい近いどごさあるんだっけず」
今風にいえばモンテディオとベガルタのような関係だったのかと、
二中跡地を見ながら思う。

ただ寒さだけを堪えて霞城セントラルへとぼとぼ歩く。
寒風に無駄な贅肉を震わせながら。

「なにケッツ見せでんのや、恥ずがしいったら」
「ちょっと濡っだがら乾がしったのっだな」
まもなく雪に覆われ、そんな事は無駄になる。

幅の広くなった三中の通りに目を凝らす。
遙か向こうの山々に、冷気が青白い塊となって被さっているようだ。

「サンタクロースと妖怪人間ベムのどっちの帽子なんだがはっきりすろ」
「どっちもんね・・・」
空き地のコーンは冷たい空気の中、枯れ草たちと戯れる。

「なしてだがしゃねげんと、南門てたむろすっだぐなる場所なんだずね」
霞城公園南門で学生や子供たちがたむろするのは、山形人のしきたりというか習わしに近い。

「こだんどぎは、みんなそっぽ向ぐのよね」
冬の弱い日差しを浴びながら、氷のように冷たい蛇口が堅く口を閉ざす。

「誰が落どしていったじゃあ」
手袋が片方、冷たく堅い歩道に仰向けになる。

「カボチャ食だいね」
「冬至カボチャがぁ・・・」
冬至も過ぎ、あとは少しずつ日が長くなると、二脚の椅子はか弱い日差しを見つめながら前向きに思う。

「ふぅ、やっと温かいどごさきたぁ」
霞城セントラルのアトリウムへ入り込み、全身から寒気を振り払う。

青白いイルミネーションが、アトリウムの暖められた空気を突っついている。

「今から北高のクリスマスコンサートだどぉ」
「ほだなごど、やねったて知ってだぁ」
床へバーコードのような影を伸ばして歌声を待つ。

「クリスマスずぁ、いいもんだなぁ」
「気持ちがしっとりすっずねぇ」
清らかな歌声は、心に染みる保湿成分を含んでいる。

響く歌声は、空気清浄機のように館内の空気を浄化しているようだ。

「オラだも聞いっだていうごどば、どいにして分がてもらたらいいべ?」
「点滅すっどいいのっだな」
イルミネーションは、いつまでも繰り返し音も立てずに点滅する。

「魔法の指先だずね」

「奇跡の唇だずね」

「うっとりするぅ」
「しぇできた甲斐あったぁ」
「タダで聞ぐいなて、いがったぁ」
つい、お金に換算しようとする人の常。

観衆の顔があきらかにほころんでいる。
冷たい大気の中で、徐々に開く早春の梅の花びらのように。

「いがった、いがった。たまには霞城セントラルさ来てみるもんだな」
透明な歌声を聞き終え、人々は現実へ帰っていく。

耳に残る歌声を反芻しながら、薄墨の覆う道を帰途につく。

さっきまでの輝く山並みは灰色に塗りつぶされ、
街は青白い寒気の底でチカチカと瞬きはじめる。
TOP