◆[山形市]門伝 日本中が騒がしい日に(2012平成24年12月16日撮影)

「なんだず、ほだんどごで日向ぼっこがぁ?」
「としょたドラム缶は、丸ぐなて暖かいんだじぇ」
雪で全身ズブ濡れだった軍手は、気持ちよさそうに空を向く。

「こだんどぎカメラなのたがてる場合んねべず」
「い、いや、ちゃんと撮影終わたら行ぐがらっす」
陽の当たる街を遠くに眺めながら、自転車を漕ぎ選挙へ急ぐ。

「今日は暖かいま、なれー」
「んだずまー、ぽかぽかだものほれー」
背中に枯れ草のぬくもりを受け、
二人はジンワリと会話を楽しむ。

「なんだて、ゴミ分別への執念ば感じっずね」
「あんまり看板があって、どご読んだらいいが分がらねぐなる」
看板の威圧感効果で、人々はキチンとゴミをなげるようだ。

「おらぁ、行ってきたじゃぁ。オマエも早ぐ行げ」
「んだがら、撮影終わたら行ぐずぅ。年寄りはせっかちだもなぁ」

走り回るバイクは、
車体の下に影をくっきりと張りつけて引っ張っていく。

「大根漬は食べ始めっど、パリパリて止めらんねぐなる」
「オマエだのために育てけだんだがら、少しは感謝すろよ」
大根はザンバラ髪の隙間から顔を覗かせて、まぶしげな顔で苦言を呈す。

「毎年こいにぶら下がって、富神山ば眺めんのが恒例よぅ」
柿の実は変わらない光景に安心して、やがて地面へ還っていく。

「ぎっつぐ結ばっで窒息しそうだぁ」
「ほだごどやねでぇ、こぼれ落ちるよりいがんべ」
軒下の雪に視線を向けながら袋たちは縮こまる。

「誰さへっだ?」
「ほだな教えらんね」
夫婦でも、やんねごどはやんね。

冬の弱い日差しにも、ありがたいことだと感謝しながら艶々光る。

「ボダッ、ビチャッ」
空がこんなに青いのに、柿の実には熟して落ちる選択しかない。

門伝の旧街道は、山形の中心部を眺めるように造られた?

「ほごの板ぱんこ邪魔邪魔。春の準備しったいい顔ば撮ってもらうんだがら」
「オレだて好ぎで立ってんのんね」
パリッとしたアジサイの立ち姿に、板ぱんこは怖じ気づく。

太陽が雲に隠れた。
明るく浮かび上がっていた街並みは、再び沈黙を守りながら沈んだ表情へ変わる。

真冬のきら星を見上げるために、柿の実たちは落ちずにじっと夜を待つ。

「スルメみだいだなぁ」
色合いや湿度を感じながら、この光景を評してみる。

山形人に生まれ育ってしまった以上、脳裏からこんな光景が掃がれ落ちることはない。

「よそ者だずね」「どごから来たんだべ」「餌けねんだごんたら帰れ」
警戒心をむき出しにして視線を外さない。
同じ土俵に乗って、いや、同じ白線に乗って話し合おうと思ったのに。

「粉吹いっだんねがぁ」
「んだのよ、乾燥肌だがら冬は大変よぅ」
甘みを増す柿の実からいわれ、乾燥肌が益々痒くなってくる。

「暖かくていいねぇ。ひなたぼっこだがっす?」
「うるさいがら脇でゴチャゴチャゆてんな」
ガチャガチャにいわれるとは心外な。

だらだらの下り坂を、ゆるりと溶け出す数日前の雪。

「腹減ったぁ」
まぶしげにバス停はぼそっとつぶやく。
確かに腹の時刻表は空白だらけだった。

「冷ったくてよぅ。早ぐ剥がしてけねがなぁ」
冷たいガラス面にぴたっと張りついてみたものの、ステッカーは年を経て気持ちも劣化する。

がしっと空を掴むように枝を伸ばす。
「なんぼ頑張ったて、葉っぱないど寒々しいぞ」

「こごらげでぇ、わがらねぐなたもはぁ」
選挙もおなじで、誰さ入れだらいいかこごらげで分からない。

「箱さは里芋て書がったげんと違うがらな」
段ボールの中で、白菜は自分を認めてもらいたくて念を押す。

「こだい狭い道で車どすれ違ういんだべが?」
「ほごは譲り合いっだな」
冬の日差しを全身にまとって、山校バスはゆったり進む。

「夏の間はあだいしつこいっけのになぁ」
今は寒さに縮こまって、カラカラとか細く鳴いている枯れ草たち。

「こごからだど盆地の上ば流っでいぐ雲がよっくど見える」
八坂神社は門伝とその向こうの空を毎日見続けている。

憑き物が落ちたように、サバサバした枝の向こうに富神山。

「霞城セントラルと背比べしったのが?」
「んだ。なんぼがオレの方が高いみだいだ」
柿に木には、ずっと真実を知らせずにいようと思う。

「カンラカンラ」
「高笑いしったつもりが?」
風が吹けばペットボトルが乾いた声を上げながら空回り。

「なんだべ、人の心を持ち帰ってだど」
「心当たりの人だず」
読み違えと解釈の仕方で意味深になるゴミ投げ場の看板。
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