◆[山形市]宮町・両所宮例大祭 日差しが棘に変わる日(2012平成24年8月1日撮影) | |
「どうれ、明日お祭りがぁ。暑いどごやんだげんと撮影さんなねっだなねぇ」 夕方近く、便所から窓の外を眺めながらつぶやく。 蜘蛛の糸は獲物を捕らえずに、暮れゆく光を捕らえて虹色に煌めいている。 ※この写真のみ7月31日撮影 |
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「いやぁ、スカッと晴れだごどぉ」 言葉とは裏腹に、これから汗みどろになることを想像してげんなりする。 |
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「オラオラー!みんなオレの温度ば見ろ〜!参ったかぁ」 道路脇の温度計は、人々の顔をしかめっ面にするためには十分すぎる。 |
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大通りから小路に入る。 空に向かって体のすべてをさらけだすサルスベリは、暑さなどどこ吹く風。 |
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ダクトの上に雲が湧き上がる。 熱気で盆地は沸騰し、その湯気が立ち上っているようだ。 |
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さび付いたトタン板にも容赦なく、路面の照り返しがぶつかっていく。 さびは暑さに負けてポロポロと地面へ還って行く。 |
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「ズガズガて体さ棘刺されるみだい暑いげんと何ともないの?」 これ以上の心地よさはないと、ユリはパキッと咲いている。 |
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「やけどすっだぐないごんたら、オラださ声掛げんなよ」 一輪車とゴミ篭は、誰もいな公園へ向かって熱い息を吐く。 |
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「普通だらグダラーってなっどごだげんとなぁ」 塀に斜線を描きながら、植木たちはそれでも青々としている。 |
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枝振りのいい松の影に覆われて、ブランコはだらりと腕を垂れている。 |
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ノウゼンカズラは夏になれば、日差しとともに空から降ってくる。 |
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奥羽本線の影が地面に張り付く北町と宮町の境。 |
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破けた穴に、太陽の光は入り放題。 |
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木陰に見つけた水飲み場。 ちょろっと出して口を潤す。 |
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「昔はトンネルの中ば堰は流っでだし、痴漢は出るしで、 おかない場所だっけのよぅ」 堰は蓋をされ、真っ昼間の痴漢もないだろうと、 涼しげなトンネルをのぞき込む。 |
フェンスの網は、 暑さのせいでぐんにゃりと歪んでいる。 |
「この暑さなのに、なしてほだい元気なんだがわがらね」 「人間ずぁ弱い生き物だずねぇ」 雑草魂と暑さには、まったく太刀打ちできない。 |
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今日の暑さはフェンスさえもボロボロにしてしまうほど強烈。 太陽に顔を向ければ、剣山で撫でられるように痛い。 |
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「去年もでっかい花ば咲かせっだっけずねぇ」 毎年巨大な花びらをゆさゆさ揺らすフヨウの花。 |
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道路を挟んで工場の機械音が流れてくる。 ヤマゴボウは我関せずと、ボツボツの実を煮えた大気の中で揺らしている。 |
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ムクゲの花の先に旗が揺れ、両所宮の杜から雅楽がゆったりと流れてくる。 |
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「ちぇっと待ってけろぅ、靴さ石ころ入たぁ」 「ほだな待ってらんね。お祭りさ早ぐ行ぐだくて気もめでんだがら」 容赦ない日差しと声。 |
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「昔はこの辺の道路ば通行止めして露店が並んだんだげんとなぁ」 信号を待つあいだにも、太陽はジリジリと背中を焦がす。 |
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異空間への入り口に立ち一息つく。 くぐり抜けた先には、時間の流れの違う世界が広がっている。 |
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「暑いどご悪れげんと、テーブル運んでけろ」 「顔さ髪の毛が張りつくし、サンダルが汗でペタペタするぅ」 窓には紅白幕がペタッと張りついて揺れている。 |
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「冷ったくて気持ちいぃ」 ちょぼちょぼ水音のする手水舎は、むわっとのしかかる大気の中で小さなオアシス。 |
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涼しさとはかけ離れた風がねっとりと絵馬へ絡みつく。 |
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「ほだい、わにねったていいんだじぇ」 「わにねって何?」 レンズに狙われ、表情をどうしたらいいか分からないし、恥ずかしさが先に立つ。 |
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木陰に立つとスッと汗が引く。 やっぱり楽な位置からまぶしいところを見ているのが性に合っている。 |
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「とりあえず登てみだげんとよぅ、あど何する?」 別に何をするわけでもないのに、お祭りは心が浮き立つ。 |
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「オマエ漕げぇ」 「暑くてやんだぁ。オマエこそ漕げぇ」 氷の幟の元で、だらだらと回りながらだらだらと無駄話をする貴重な子供時代。 |
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「いやぁ、ご苦労様ぁ、暑いっけべぇ」 「しゃますしたぁ、アスファルトの照り返しがキツくてぇ」 町内を一周してきて汗みどろ。 |
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御輿はギラギラとまぶしく、太陽もお盆過ぎまではまぶしく降り注ぐだろう。 |
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「なしてこだな暑いどぎにお祭りなのっだがねぇ」 「暑いがらいいんだべよ。オラだも熱ぐなれるし」 御輿の担ぎ手の血は、祭りがあれば沸騰するほど熱くなる。 |
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