◆[山形市]紅花まつりin 高瀬 雨上がりに輝く(2012平成24年7月8日撮影)

昨日まで雨が降り続き、山々や田畑は水分をたっぷり含んでいる。

目の上のたんこぶ。頭の上の石ころ。

「七夕飾りだど思たら、扇風機だどら」
「ちぇっと雲ば動がしてみっかどもてぇ」
夢に終わんなよと声をかけ立ち去る。

「鼻先まで伸ばして、あがすけ臭いなぁ」
「自分が薄ぐなたがらて、ひがんでんのが?」
「床屋さでも行ってきたらいいんねがよ」
夏が終わるまで頭のフサフサは続きそうだ。

「この〜実なんの実、気になる実〜♪名前も知らない実だからぁ♪」
ゴリゴリと音を立てそうなくらいびっしりと実が連なり、蒸し暑い空間に存在感を示す。

「まだ居だぁ。おまえだ夏になっど、どさでも現れっずねぇ」
直立して空に突き刺さるようなタチアオイは、夏の象徴。

「ばぁ〜!撮ってけろー」
目立ちたがり屋のタチアオイが、レンズに鼻をくっつけるくらい近づいて覗き込んでくる。

「紅花も見だし、あどどさ行ぐべ」
「目の欲求ば満たしたがら、今度は腹の欲求ば満たさんなねべ」
「脳の欲求はどうすっどいいのや?」
「んだら冷やしシャンプーすっどいいのっだな」
欲求の赴くままに山形を満喫して欲しい。

観光客の来ない鳥居を、涼やかな風が通り抜けていく。

涼風に頭を撫でられながら、
青々と広がる田んぼを見つめる石碑たち。

絡まり合い、のたうちながら、地面をガッシと掴む。
そうして基礎を固めたからこそ、枝葉も安心して空へ伸びることができる。

青空が現れるとともに、山や田畑に含まれていた水分が空中に吹き出し、
一気に額や背中が汗ばんでくる。

「今日、来ていがったべ?」
「いがったいがった。こだいして母ちゃんと真っ正面で向ぎ合うなて滅多にないがらなぁ」
家の中で向き合うのが面倒くさくなったら、田んぼの真ん中で向き合おう。

「なんなんだず、このカメラ小僧(大半中年)はよぅ」
「紅花が主役のはずなのに、紅花娘ばり狙てぇ」
この群衆にとって、高瀬は単なるモデル撮影の場所でしかない。

カメラ小僧と同列にされたくないと思いつつ、
いつのまにかかわいらしい紅花のカチューシャを狙っていたのは男の性?

「いでッ」
カメラ小僧から紅花に触れてと注文され、トゲに触れた指がビクッと引っ込められる。

笑顔を振りまきながらも、額や頬を汗が流れる。
紅花に隠れて見えないけれど、足にはゴム長を履いている。
もちろん虫除けスプレーを腕や首筋に吹き付けている。
なんとモデルとは大変な仕事なんだろう。

「頭に手をやってぇ」「少し屈んでぇ」「目線こっちぃ」「ちょっと笑てけっかぁ」
カメラ小僧は言いたい放題。紅花娘はくたびれ放題。

こういうカメラ小僧たちは、モデル以外に興味は無い。
高瀬を楽しもう。紅花の歴史を知ろうなんてまったく思っていない。
こんなことにだけ使われているカメラもかわいそうだし、モデルも呆れているはず。

「紅花娘さ群がる男どもば撮ってけっかど思てぇ」
麦わら帽子に真夏の日差しが絡みつく。

「紅花も巻かれてなんぼのものっだなぁ」
「ひとづ500円だがら」
それが高いか安いかは、買った人の価値観次第。

紅花と娘。団子とおばちゃん。
「あ、ごしゃがねでなぁ。なんの悪意もないんだがら」

「あいやや〜、あだい人たがったがぁ」
遅れてきたおじさんは、握るカメラに力を入れて小走りになる。

合歓木からサラサラとこぼれ落ちる光の粒子が心地いい。
そろそろ淡いピンクの扇子のような花を咲かせてくれる頃。

「いいごど、いいごどぉ。かえずぁ傑作だぁ」
無理な体勢をしたおじさんが、腰を痛めないように祈るばかり。

「紅花祭りはワイルドだぜぇ。んでも高瀬はもっとワイルドだぜぇ」
ポーズを撮る少年。かき氷に舌鼓を打つ少女。黙ってじっとカメラを見つめる少女。
自分の世界に浸ってどこかを振り返る赤ちゃん。温かいまなざしで見守るお母さん。
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