◆[山形市]文翔館・七日町通り 日本一さくらんぼ祭り(2012平成24年6月23日) 

「なんだべ、あだい文翔館前さ人たがて」
なぜか人だかりができていると、とりあえずそこへ行ってみたくなる。 

「一般人がこだんどごから下ば眺めでるいなて、世の中変わたもんだなぁ」
みんな背中を無防備にして、イベントの様子を見守っている。 

「この間はたらく車大集合のイベントしたばりで、まだイベントがぁ」
ブツブツ文句をいいながらも 、気持ちは歩行者天国へ向いている。

眠気を誘う来賓客の挨拶がやっと終わり、
曇りの空から太陽の日差しが差し込むように 若さがはじける。

「こだいじょんだぐダンスしてる子供ださ、学校の先生はダンスば教しぇらんなねなてなぁ」
この機敏な動きを見て観客は喜び、学校の先生は深くうなだれる。 

「なにが食だいぃ。七日町さ行ぐべはぁ」
縄文の女神は尻を後ろへ突き出し、現代人も腹は減るんだなと、空を見上げながら妙に納得している。

ぶずでっかいサクランボが曇天の空へ担がれて、
落ち着かない気分で地面を気にする。

「今度なにして遊ぶぅ?」
「しぇめっこらすっべぇ」
「意味わかんな〜い」

「人出はまだ今からだべなぁ」
紅白テントも手持ち無沙汰で風と戯れる。 

「手よごせぇ。ほれ繋がたぁ」
「こいなば絆ていうんだが?」
木の幹は思ったより温かく、輪っかの絆ができて益々気持ちは温かい。 

「キュウリば串さ刺して旨いんだべがね?」
冷やされたトマトは、冷やかしのつもりでつぶやいている。 

「はたらく車のイベントより人いねんねが?」
「歩行者天国続きで、山形人もくたびっだんだべはぁ」
「さくらんぼもぎで忙しくて、ベゴの手も借りっだいんだも来らんねっだなぁ」
はたらく車が展示されていないぶん、狭い通りも余裕があったという説もある?

「いい塩加減だずねぇ。がぶっといぐだいなぁ」
突然カッと照りつけた日差しで、食欲にもぐぅっと火が付いた。 

御殿堰のせせらぎの音を聞きながら、柔らかい風が吹き抜けていく。
と言いたいところだが、聞こえてくるのは拡声器の声と人々のざわめき。 

昼近くになりようやく日差しも顔を出し、幟のはためきも活気づいてきた。 

日差しが出てくるとともに人々は木陰へ移動し、次の出し物をのんびり待っている。

田植え踊りの花笠が、風になびいてまぶしく煌めく。 

ガラスの窓際で自分の成長を、首を振り振り確認する蔓。 

太陽がぎらつき、幟が高くはためく。
狭いとおりに匂いが流れ、食欲に負けた人々が次々と露店に並ぶ。

「コーヒーさ入れるやつだが?」
女子高生に嘲笑され、すごすごと引き下がる。

「私さもかしぇでみろぉ」
「やんだぁ、自分のあっどれ」
綿を長〜く伸ばし、口中で溶かしてゆく楽しみ。 

紅花が頭の上に優しく灯っている。近づいてみようか。
いや、紅花にはトゲがあったんだ。

「今日はなんだて賑やかだなぁ」
誰にも構ってもらえないポストは、俯きながら食べ物の匂いをクンクン嗅いでいる。

「なんぼ山形が紅花の産地ったて、街中ではながなが見らんねがらねぇ」
「人間の見方で物ばいうな。オラだも街中さしぇでくらっで困惑してるんだがら」
紅花は堅いアスファルトに置かれ、雑踏の中で当惑している。

建物の隙間にざわめきはズイッと入り込み、日差しがギラッと目に入り込む。

「四面楚歌だげんと見でけろなぁ」
周りを囲まれ孤立無援のはずが、遠巻きの人々のまなざしは温かい。

「それっ!」
ころころ〜。
「ただいまのスピードガンでの測定値は25キロでしたぁ」
思い切って蹴ったはずのボールは、よろよろと重い腰を上げて少しだけ転がっていった。

「明日のヴォルティス戦がんばれよ!」
固い握手を交わし、ディーオは私に勝利を誓ってくれた。

「キャーッ!おかないー!んでもうれしー!」
ディーオは力を持て余し、子供を抱き上げては振り回す。 
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