◆[山形市]はたらく車大集合へ山形市民も大集合(2012平成24年5月5日撮影)


雨降って街の空気はしっとりと落ち着き、旭銀座の緑が濃くなってきた。

「ほれ、子供だ待ってだじゃあ、早ぐすろぉ」
「ほだごどゆたて、後ろよっくど見えねもしょうがないべず」
誇らしげに車体をピカピカ光らせて、衆人の中をゆっくりと定位置へバックする。

曇天模様の空の下。
それでも鯉は空へ登ろうと身をくねらせる。

この間まで窓へ映るのは寒そうに震える枝だけだった。
今日は新緑の枝と、大勢の山形人が窓を賑わしている。

「食だいっけ?食せねぇ。んだて食たっけもはぁ」
ハナミズキの下で人々は思い思いに休日を楽しむ。

「じょんだなぁ。何描いっだの?」
「自分でもよっく分がらね」
少年はお兄さんが描いてくれた絵には目もくれず、墨汁をぼたぼたこぼす。

「どれぇ、見せでぇ」
子供は身を乗り出してのぞき込む。
「まだ完成してねがらダメ。本人よりめんごぐ描いでけっから。

「ちぇっと寒いが?」
「ううん、ちょっと首ばすぼめるくらい寒い」
子供たちはどこの路地にでも座り込み、自分たちの世界に浸ってしまう。

「まさしぐ、山形のスカイツリーだべ」
「あだんどごさ登たら、ちびってしまうべな」

「上から人ば見るていうのはいいもんだな」
「おまえも上さ立つ人間にならんなねがらな」
「んだら、なるべぐ高層ビルの上で仕事する」

肌寒い大気の中で、ざわめきが灯りの周りをたゆたっている。

「こいにして紐ば緩めで、そーっと優しぐな」
赤ちゃんはされるがままになって空を見上げている。

「お湯あぶせでけっどぎも優しぐな」
赤ちゃんはくすぐったいのか微かに笑う。

「ほごは綺麗にもずぐて洗てけらんなねんだ。大事などごだがら」
少女は不思議なものに触れながら、それでも丁寧に洗ってあげる。

「お母さんとお父さんばり興奮してよぅ」
「んだずねぇ。オラだば置いてきぼりなんだもの」
子供たちには食べ物を与えておけばおとなしい。

「んまい水だべ?」
「もっと暖かいどぎだど旨いんだげんとな・・・」
こんな時代だから経験しておくのも悪くない。

「いざていうどぎこだっぱい人が来たら、給水車の人も大変だべずねぇ」
「大丈夫だぁ、んだて日本人はきちんと列ばつくって大人しく並ぶものぉ」

「人混みに酔ってしまうはぁ」
あんまり人混みに慣れていない体は、すっとビルの影に入り込む。
深呼吸をして、再び人混みの中へ入るため気合いを入れる。

「この車て高いんだべなぁ」
「んだっだな、あだい高いどれ」
梅雨にでも入ったような空へ少しずつ近づいていく。

はたらく車のイベントとは何が関係するのかよく分からないが、大道芸が始まった。
この方たち曰く、背後にある駕篭(カゴ)がはたらく車らしい。

見栄を切る視線の先には薄墨色の空。

「格好いいなぁ、似合うぞぉ」
「ヘルメットがふがふて顔が隠っでしまうぅ」

はしご車がズドーンと七日町通りに伸びている。
山形市ですら高層ビルが増えているんだから、はしご車の役割は大きい。

「迷子にでもなたがぁ?」
「赤いタイヤもがんばてるなぁて、見どれっだっけの」
「おんちゃんはYAMAGATA RESCUEのマークがサッカーチームみだいで見どれっだっけはぁ」
子供と大人は視点が違う。

雨雲が払われ、夏の日差しがぱーっと七日町通りを照らし出す。

「おらだは毎日見でっからなんとも思わねげんと、普通の人だは珍しぐ思うんだべずねぇ」
携帯で我が子と消防車を撮らえる姿を、優しいまなざしで見守る消防士。

「七日町・本町通りがこだい黒山の人だかりになんのは、あど初市んどぎぐらいがぁ」
これはという企画さえあれば、人はどこへでも集まってくる。

「ほれぇ、こっち見で。顔笑ってぇ」
身振り手振りでお母さんが奮闘し、子供はちょっと困った顔になってしまう。

新緑の中をそろりと進む人力車。
たしかにエコなはたらく車だ。

「みんなから見らっでちょっと恥ずがしいんだげんと・・・」
「ほだごどゆうなぁ、こだな経験滅多にさんねじぇ」
新緑がそろりと揺れ、人力車はそろそろと進んでいく。

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