◆[山形市]宮町・銅町 両所宮の豆まき(2012平成24年2月3日撮影)


「豆まき日和だなぁ」
窓を開け空を眺めれば、牙をむくツララの向こうに太陽が顔を出す。

色彩を失った両所宮の杜は、豆まきの観客を今か今かと待っている。

昨日からの新雪が屋根に覆い被さり、その間からツンツンと電柱が寒空へ突き出している。

「こだな雪だも、いづバス来っかわがらねぇ」
下半身を雪に埋め、バス停は放心して虚空を見つめる。

「大事なものだがら滑らねように歩がねど」
「父ちゃん、転んでもミカンだげは守れよぅ」

冷気の塊が馬見ヶ崎の上にどっかと腰を下ろして伸びている。

「ったぐ、渋滞でいづ着くがわがらねはぁ」
二口橋の上で渋滞につかまったトラックの向こうには悠然と竜山が煌めいている。

「車走る場所は狭くなるし、人が歩く場所は無ぐなるし、ほんてん雪にはしゃますする」
雪になれたはずの山形市民も、1メートル近い積雪に翻弄される。

「春まで待づしかないべはぁ」
雪にがんじがらめにされ、車は観念して春を待つ。
川向こうの生まれ変わった東小は端整な顔立ちで寒気の中に建っている。

「目の前さっぱり見えねぇ」
車はあたふたしているが、背後の蔵は何事もないように悠然と構える。

「こっだい雪膨らんで、中さ何があんのんね?」
「傘で突いでみっべ」
どこまで突き刺しても雪だらけだし、爪楊枝で風呂のお湯をかき回すくらい空しい。

「行がねわげにいがねべ」
「んだっだ。まめで暮らさんなねがらなぁ」
人の歩く余地のない道を、足元に気を付けながら豆まきへ急ぐ。

「こりゃ大変だっけべなぁ」
両所宮豆まき会場の除雪は、積雪量に比例して普段の倍以上の労力と汗と腰痛を伴ったはず。

西に傾きかけた太陽の下、人々は三々五々集まってくる。

「(ToT)子はいねがぁ!」
近頃の鬼は顔文字でしゃべるらしい。
あ、この鬼はなまはげじゃなかったな。

「え〜今から来賓の方々が多数見えられますので・・・」
「ほだなごどどうでもいいがら早ぐ始めろ〜」
観客は待ちきれず、雪の上で口と袋を広げて待っている。

「こだな豆なのあっという間に無ぐなるっだず」
「今年は豆もらわんねくて泣ぐ子供いねどいいげんとなぁ」
豆をまく側も、緊張で指に力が入ってくる。

観客からは見えないトラックの荷台の上で升と豆の準備は整った。
子供たちは袋を広げたり閉めたりして、受け入れ体制万全。

「どごの袋持てきたのや?」
「うぢはツルハ〜」
「ヤマザワ〜」「セブンイレブン〜」「ジャスコ〜」「大沼〜」「十字屋〜」
ホントはどこの袋かよりも、袋の大きさが大事なんだげんとね。

「豆をまく前に、みんなで神様に拝礼しましょう。」
「え〜、早ぐすっべずぅ」
はやる気持ちを抑えきれず、上目遣いで紅白幕を見上げる子供もいる。

「うわーッ!うぎゃーッ!こっちゃこねぞぅ!どさ投げっだ〜!」
一瞬のうちに阿鼻叫喚の巷と化し、いや沈殿していた冷気がかき回されて熱気が爆発する。

「いや〜、やっと終わたずまず。くたびっだはぁ。」
「大役ご苦労様だっけなぁ。」
雪の上で笑顔が交差し、つつがなく豆まきは終わった。

「早ぐ引き替えすっどごさあべぇ」
なにしろ空くじなしだから、景品引換所は豆まき会場以上に盛況だ。

間もなく日が暮れようとしている。
今日最後の明かりを受け止めて、噴水の飛沫がオレンジに輝く。

「私だばり豆もらてらんね」
少女は凍えるカモへ、食べろと温かい気持ちで手を差し出す。

「オマエシモヤケにならねが?」
「足の色見っどわがっべ」
赤くなった足で呆然と氷の上に立ち尽くすカモたち。

「大漁だぁ!来ていがったいがった。」
景品は段ボールに入れてもらうのだから両所宮は太っ腹。

「どれ、帰っべはぁ。ありゃ、月でっだじゃあ」
三々五々集まってきた人々は、日暮れと共にまた三々五々我が家へ帰っていく。

「なんだて豆まきの歓声すごいっけねぇ」
「オラだも負けねで明日も雪ど格闘だぁ」
一日の仕事を終え、ダンプやスコップは固まったように眠りにつく。

「もらた段ボールの中身ばり気にすねで、足元も気いつけろよ」
ぎゅっと雪の固まった通りを、笑顔を湛えた人々が帰っていく。

雪が防音材となって、街の騒音を吸い込んでしまう夕暮れ。

テールランプが光る頃、両所宮はいつもの静けさを取り戻し、深い雪の中で市民を見守る。

◆窓からの夜景(2012平成24年2月4日午後5時半頃撮影)

窓を開けて愕然。いつも見えるヤマザワ北町店やジャスコ北店の看板も雪霞の中。
明日は駐車場から車を出すことが出来るだろうか。実家の屋根は大丈夫だろうか。
心配事に心配事が降り積もる。
あ〜恨めしい雪が、街を圧する。

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