◆[山形市]六椹八幡神社初詣 静穏のうちに幕開け(2012平成24年1月1日撮影)


「今年の漢字一文字は列だべなぁ」
「気が早過ぎっべ」
「んだて、車で行列つくて、それがら参道で行列つくてだじぇ」

「やんばい晴れでいがったなぁ」
「今年は穏やかに過ごすいどいいげんとなぁ」
雪に光が反射して、初詣の人々を明るく照らす。

「悪げんと、満車だがらちぇっと待ってけらっしゃい」
「福が来るならなんぼでも待つっだな」

「まんず、みな滑てっからよぅ」
「滑るのはお笑い芸人だげでいいのっだずねぇ」

青空も広がり、梢の間から柔らかい光がこぼれてくる。

「何ば願うのや?」
「家族の絆が益々固く結ばれますように」
「オマエは?」
「家族の絆がほどけませんように」
六椹の杜は、どんな願い事も平等に受け入れる。

ご飯にふりかけを掛け過ぎたような道端。
人々は黙々と順番を待つ。

「新年になたんだじゃぁ」
車は去年の中に引きこもり、いつまでも引き摺っている。

「あいや、どごまで行っても行列。やっぱり今年の漢字は列で決まりだな」
「この人口減ってどぎ、行列が出ぎんのはありがだいごどっだな」

「なんだが、みんな歩き方が大人しいんだげんと」
「はえずぁんだっだなぁ。さっきから何人もスッテンコロリンだじぇ」
みんな足元にばかり気を付けているけれど、見上げれば真冬に緑の濃さが目に染みる。

「ちゃっちゃど帰て、雑煮食うべはぁ」
「ちゃんと前見で歩がねど雪の穴さ落ぢっからな」
思わぬ所でズボッと足を取られる山形路。

「まずまずの人出でいがったなぁ」
「人いっぱい来てけで、感動して涙目なったのがぁ」
煙は境内を漂うように、冷気の中に人の目に紛れ込む。

「早くて初市がぁ」
なんだかうれしくて、思わず手を伸ばしてしまう。

「出口が空の上なて、まさが車に対してゆてんのんねべ?」
「欲たがりは空の上さ出で行げてっだな」

「あの広場で子供の頃、しぇめっこどがだるまさんころんだどがしったんだっけ」
簡易ベンチに腰掛けて、子供の頃を語り聞かせる穏やかな元旦。

「ありゃあ、ビガビガて金色のおみくじがぁ」
目がくらんで自分を見失い、思わず200円を入れてしまう。

「どうぞ」
アルバイトの巫女さんは、寒いのか慣れないのか、
やや指先が震え気味。

せめておみくじ代分の元を取りたいと、小さな願い事が光りながら連なっている。

「ジャラジャラおっきな音たてねど、願い事も届がねべ」
鈴は休む暇も無く次から次へと振り回される。

「どれ、どだな味だが食せでみろぉ」
「やんだぁ。見るだげならいいげんと」
小さな湯気に小さな幸せを感じる玉こんにゃく。

「思いっきり投げねどだめだがらな」
今年一番の力を込めて、去年の厄を炎へ投じる。

「こいにしてかまさんなねのよ。んだど空気入て燃えっから」
人間も体に空気を染み渡らせないと燃え上がれない。

「オラだはなして燃やしてもらわんねんだ?」
炎の熱を感じながら、黒焦げの体にモヤモヤをため込むダルマ。

「今年こそは粘強ぐだべ」
「粘強ぐは去年の話。今年のスローガンはぎっつぐだべ」
モンテディオの話をしながら、指先に力を込める。

「今日は元旦かぁ。オラだは何にも変わりないげんとなぁ」
「変わりないのがいいごどなのっだな。春なたら子供だ遊び来っから、それまで大人しぐしてっべ」
雪をかぶったブランコは、遠くの賑わいを静かに見守る。

「キケンだがら登るなったて、雪も葉っぱもぞろぞろて登ったどれ」
よくよく見れば人の足跡も見える。
危険という言葉は、人の耳に甘い誘惑を感じさせる。

「破魔矢も買ったし今年は安心だこりゃ」
足元がおぼつかない子供を気にするおじさんの背中には、誇らしげに破魔矢が覗く。

「みんなさっさど帰んのがぁ」
燃えさかる炎は人々が雪を踏みしめる音を聞きながら、時たまパチッとはぜている。

「あっちさ一台分空いっだがらっす」
遠くで誘導の声を聞きながら、雪と落ち葉が混じり合う。

空に大きく広がる梢は、人の見ぬ間に車体にも張り付いて、旺盛な生命力を発揮する。

山形でこれぐらいの積雪なら、雪はまだまだ人々の話題にものぼらない。
ただ、あんまり降って話題にのぼることは是非とも避けたい。

「玉コン誰さも食せねがら」
「ほだな食ねったて、家さ帰っど雑煮あっからいいもねぇ」
「んだんだ。餅も焼いで食んなねし」
「あたしは食べ過ぎだがら、帰たら年賀状見いするはぁ」
正月早々、家族の絆は深まるばかり。

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