◆[山形市]旅篭町・大手町・相生町 寒波が来たりて迫る雪(2011平成23年12月24日撮影)


「今日は何の日だが知ってだ?」
「クリスマスだてがぁ。ほだなごど知ってだて口さ出してゆうな」
市役所脇の木の実たちはつまらなそうにプラプラ揺れる。

「年越しそばだどはぁ」
「今年も終わりがはぁ」
山と積まれた段ボールが、日差しを受けながら秒読みを開始する。

「旅篭町ずぁ、旅籠があったがらいうんだべずね」
「クリスマスに当たり前のつまらねごどゆてんなず」
バス停は道路拡幅と共に変わる街並みをぼんやりと眺めている。

「いやぁ、しぇわすないったらよぅ。年末になっど仕事が舞い込むもんだま」
忙しい忙しいと言いながら、一輪車はシートにぬだばり手足を伸ばす。

旭銀座のビルの隙間から顔を出し、きらきら光る雁戸山。

先陣で到着した雪は、道端の隅っこや瓦の襞にくっついて、
寒波の親玉を待っている。

「へなちょこツララだもなぁ」
「ほのうぢ、太っとぐギンギンになっから待ってろ」
小指でも払われるようなツララのくせに言うことだけは勇ましい。

「オレ使われ方間違ていねが?」
スキーのストックは不満げながらも紐を支える。
不満を抱えていても、いずれそれが本職になってしまうんだな。

体を硬直させながら寒さに耐え、靴に踏まれ、やがて土に還っていく。

「何食だいのや?」
「わがんね・・・」
「わがんねごんたら何にも食んねっだな」
親子は目を合わせずに歩道に目を落とし、手だけはぎっつぐ結びあう。

入り込んでくるのは遠くを走る車の音と、冷え切った風だけ。

「いやいやどうもありがどさま〜」
「ほっだな当たり前のごどっだなぁ。んだら来年もよろしぐ」
という会話か分からないが、そんな雰囲気が二人の周りに寒気と共に漂っている。

「オラだの役割てなんなんだず」
「見ての通りだべず」
張り紙たちは日差しに体が透かしながら、
少しばかり将来を案じている。

わずかな雪が歩道の目地に沿うように、
人の見ぬ間にそろりと這いでる。

「こごは昔クランクなんだっけべした。」
「あー、んだがらその名残で道がカーブしてるんだがしたぁ」
「昔はスズラン街から宮町さ抜げっどぎはめんどくさいっけのよねぇ」
カーブになったおかげで生まれた歩道のベンチも、この寒さでは誰も座らない。

太陽に向かって光る粒々に、師走の車は目もくれない。

「オマエなに枯れ葉の上で、気持ちよさそうにしてぇ」
「ほんてんほいに見える?」
好きで捨てられたんでも無かろうに、ファンタのペットボトルはどうやって冬を越す?

「この枯れた雰囲気がいいのよねぇ」
「おだぐ、おらだの身にもなてけろず。」
枯れ枝や赤い実、植木鉢は氷に固められ身動きも出来ない。

「ほごの雪、枯れ草の上でふんぞり返てる場合が?」
「ちょっとチクチクすっげんと気持ちいいじぇ」
「ほだごどしったら、ほのうぢ溶けでしまうべ」

「ゆたべぇ、んだがら日陰なのやんだんだす」
フェンスに絡みついた蔓は氷にガッチリ掴まれ、
後悔しても後の祭り。

細道に細長く入り込んでくる光は、
雪を溶かす威力もなく、あたりをほんわか明るく染めるだけ。

「足冷ったくて、せめて靴下でも履ぐだいぃ」
自転車は板塀におっかがりながら、雪に触れるタイヤがしもやけにならないか心配する。

なんだか落ち着かないのは師走のせいではない。
道路の拡幅工事は雑然とした空気を辺りに漂わせる。

だから街歩きはやめられない。
街にはハッとする芸術や、ニヤッとするオブジェが埋もれている。

どんな街の隅っこでも軒下でも「がんばろう」の大合唱。
がんばらないと置いて行かれる。

霜柱に押し上げられた落ち葉は、
一瞬だけ胴上げされた気分を味わい、やがて深い雪の下に埋もれる。

「ほんてん四小名物は困ったもんだずねぇ」
「四小ば非難するつもりなのが!」
「んねんね。足元の銀杏よぅ」
撮影を終え家に帰ってからも、どこかから銀杏の臭いが漂ってきた。

バイクにかぶせたシートには、冬の日差しが降り注ぎ、
雪は滑り落ちないように必死にすがりつく。

「寒くて今日は休みなんだべげんと、通常仕事で気を付けていることはなんだべっす?」
「んだなぁ、墓穴だけは掘らねごどだべ」
寒い時に寒い笑いをありがとう。

「ソーリ、ソーリてうるさいったらどごがの議員か」
「ソーリーだず。オラだは謝り続げんのが仕事なの」
にこにこ笑って謝り続けるカエルたちの本音はいずこ。

「オマエだくっつがねど、影だてくっつがんねっだず」
冷たい雪の中なんだから、せめてそっぽ向くのはやめっべと影もいう。

冬のか弱い日差しだけでもありがたいと、花びらは目をそらしひっそりという。

年末に文翔館の正面から七日町の通りを見渡す。
太陽は眩しいし、なんだか来年こそはという気になってくる単純さ。

「んだごんたら、そろそろ閉めっから」
平成23年もカーテンが閉められるように間もなく閉じようとしている。

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