◆[山形市]南一・二・三番町・南栄町 冬の遠慮(2011平成23年12月13日撮影)
真っ白になった竜山が太陽にキラキラ輝いているというのに、 今日は平日だから、みんな目もくれずに師走の街を忙しく走り回る。 |
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「ど〜れ、そろそろ出番かぁ」 白くなった竜山を見て、待ってましたと力を全身に漲らせている。 |
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なんぼお昼近くても、太陽は低い位置から光を差し伸べる。 まだ乾いている道路には、建物の影が梯子のように黒々と並んで伸びる。 |
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誰もいないみなみ公園の地面を、カチャカチャと乾いた音が這う。 |
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「俺ってこだい足長いっけがぁ」 自分の影に驚きながら天沼の畔に近づいたら、カモたちが驚いて逃げ出した。 |
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青い空や近所のビル、そして樹木を映し込みながら水面が揺れる。 カモたちは何が楽しくて、こんな小さな沼に集まっているのだろう。 |
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「みな腹パンパンだどれはぁ」 自分の腹周りが近頃とみに気になりだしたものだから、 つい、目は腹回りに向いてしまう。 |
「足痒いのが?」 少女は天沼の水面を見つめながら、 無意識に右手で足をさする。 |
「ほだい等間隔に並んで行儀いいずねぇ」 「別にオラだが自主的に並んだのんね。植えだ人が几帳面なんだっけべ」 樹木は落ち残った葉をカラカラ震わせながら雲を追う。 |
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「どさでもあるマンホールの蓋だど思わねでけろ。ちゃんと山の文字が真ん中さあっべ?」 「ほだな山形市のマークなの見ねったて、この冷たく湿った地面と水溜まりば見っど山形だて分がるっだず」 雪が積もる前の地面は悲しげに弱々しい光を反射し、雪に隠れる日を諦めの境地で待っている。 |
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これでもかという勢いでフェンスに絡みついていた蔓も今は昔。 赤い自転車に見つめられながら、カチャカチャに干からびて冬の日差しを寂しげに受け止めている。 |
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「かあちゃん吹っ飛んで行ぐはぁ」 「とうちゃん頑張てしがみつげぇ」 洗濯物は風に翻弄されながら踊り続ける。 |
「お互いに頭さ鉢巻き巻いで、なにが頑張るつもりなのが?」 「こだな平日に茶化す暇あっごんたら仕事すろ」 道端の水神様は痛いところを突いてくる。 |
笹谷峠の方は真っ白。 ジワジワとにじり寄る雪は今のところ遠慮気味だが、降り出したらあっという間。 |
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「寒いなてゆてらんねっだず。師走は忙しいんだがらよぅ」 鼻水をすすりながら川面を眺めていた横を、自転車がスーッと通り過ぎる。 |
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「オマエだがなんぼ穂さ光ば溜めだて、家の電力ばまがなわんねしなぁ」 「人間中心に物事ば考えんのやめでもらわんねがっす。おらだは太陽さ感謝して光てるだげなんだがら」 柔らかい白熱球は、ふわふわ揺れながら辺りに光をまき散らす。 |
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「なえだべずねぇ。この忙しい時にカメラなのたがてぇ」 雪が遠慮している間に、山形人は忙しなく働き回る。 |
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低気圧が奥羽山脈を越え太平洋へ抜けると冬型の気圧配置。 そうなったら早々見られなくなる竜山を、空が青いうちに撮らえておくか。 |
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「なえだて真っ白になたずねぇ」 「んだっだなぁ。ゴズゴズもずぐて洗てもらたもの」 綺麗さっぱりと泥を落とされた大根は、体内に光をため込んで旨みを増していく。 |
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「こっちゃこ〜い、こっちゃこ〜い」 橋の上を次々と走る車は、穂がいくら手招きしても無視して走り去る。 |
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「雲はいいずねぇ。どさでも吹飛んであるぐい」 「雲は悩みなてあるんだべがねぇ」 ヤマゴボウは空を見上げながら、日陰でブツブツと恨み言をいいつのる。 |
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竜山川を寒風が吹き渡り、一斉に空へ向かってオギ(ススキの仲間)は手を振る。 |
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「全部抜げ落ぢだら役目は終わりだぁ」 「ほだなごどオレの前でいうなず。髪の毛気にしてるんだがら」 タンポポの種は風に吹き飛ばされるのをじっと待っている。 |
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「お、今日は豊作だんねが?」 「なにこばくさいごどゆてんの。あいずはだたのゴミだじぇ」 樹木の影が側溝からズルリと這いだして、ゴミ集積所へ枝を伸ばしている。 |
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真っ白い漆喰には枝がひび割れのようになって張り付いている。 もしこんな穏やかな冬の日が毎日続けば、山形人は我慢強くなくなってしまう。 |
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「たまには河原ば歩ぐのもいいもんだべ」 「たまにはて、雪降ったら歩ぐだいったて歩がんねべず」 雪の積もる前に、真っ白い竜山を眺めながら河原を二人で歩く幸せ。 |
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◆[山形市]桧町 (2011平成23年12月17日朝撮影) | |
ああ、遂に白魔が降りてきたぁ。 単純に綺麗だぁという気持ちと、これからの真冬の生活を思う気持ちがない交ぜになる複雑な心境。 |