◆[山形市]幸町・八日町 爽やか色に染まる初夏(2011平成23年6月19日撮影)


あの震災で日本人の心がグラリと変わったような気がする。
「がんばろう、東北!」今年の流行語というか、自然発生語大賞はこれで決まり。
ちょっと安易に使いすぎる嫌いはあるけれど。

山形駅の南側にできるアンダーパス工事が急ピッチで進んでいる、いや遅々として進まない?
どちらかは分からないが、とにかく土塊が熱い日差しに呻いている。

「なんだが股が痛っだいのよう・・・」
「食い込んでだどれはぁ」
土嚢はじっとりと汗を掻きながら痛みをこらえる。

フェンスの網目が二重に見える昼日中。

「オラだが日差しば受け止めでけるっだな!」
べろらっと体を広げ空を向いたフェンス。
「ざる以下だもなぁ」
日差しはあざ笑うように網をすり抜け工事現場を熱くする。

朝顔の蔓の先まで壁を這う。

「こごは私道だがら通てダメっだなぁ」
「ゴメンなさい。道に迷って入り込んでしまたっす」
首筋を流れる冷や汗を拭きつつ、暑いねっすといってすり抜ける。

見知らぬ人について行かない、良いしつけ。
見知らぬ人でも助ける、もっとよい良いしつけ。

「階段が暑すぎてぐんにゃり曲がったじゃあ」
「違うべぇ、太陽が影ど遊んでだだげだぁ」
「んだがしたぁ。太陽さもほだな暇あるんだ」
退屈しのぎと暑さしのぎに、箒やチリトリが興味なさげに口を動かす。

影の一部を切り取るように、鋭角的に食い込む直射日光。

バーベナがチロチロと集団で歌う姿を、考えることを放棄してタイヤのホイルがぼんやり眺めている。

「この門の前さ銀杏の木が二本あっけのよう」
「ガギベラだ、ほごでよぐ遊んでだっけまなぁ」
今は銀杏の木も無く、ガギベラもいない宝光院の前。

八幡様の森が六小への通学路だった。
先生にごしゃがっで帰るときも、友達とけんかしたときも、小便がむぐりそうなときも、
濃い緑の中を潜っていくのが当たり前だった。

「背中暑っづいぃ」
「んだっだなぁ、太陽から追っかげらっでだどれ」
八幡様を縫うように子供達は走り回る。

地面の斑模様が微かに揺れる。
頬を心地よい涼しい風が撫でていく。

光は緑のフィルターをすり抜ける。境内はグリーンの膜に覆われる。
今流行のグリーンカーテンの何百倍の大きさで。

茅の輪を潜り、今年の夏も無病息災。
人々はどうにも茅の輪をくぐらないと夏を迎える気がしない。

くぐればくぐるほど精神が浄化されるようだ。
だからくぐり過ぎはいけない。浄化されすぎて体が無菌状態になってしまう?

「お母さん、ほだい頑張て大丈夫だが?」
「子供の頃ばちぇっと思い出したがら」
がんばろう、お母さん。がんばろう、東北。

「ほれ!腹さ力へっで、こいに足ばぁ!」
「無理無理ぃ、お母さんあどいいはぁ」
なんだかんだいいながら、親子の絆はぎっつぐ結ばれている。

「落ぢねように足ば押さえででけっから」
「足押さえっだら登らんねぇ」
親が押さえなくても子供はいつの間にか巣立っていく。

「鳩ばびっくりさせだらかわいそうだべずぅ」
「運動不足で太てっから、敏捷性ば養なてけっだの」
餌に群がる鳩は、逃げる振りしてすぐ戻ってくる。

「お父さん、凄いべぇ!見でけっだ?」
「あ?うんうん、凄いのば見っだ」
少女は髪の毛を地面に付けるくらい頑張り、お父さんは携帯に目を釘付けにして頑張る。

「蒸し風呂さ入ったみだいだぁ」
「好きで入ったのんねがしたぁ」
草花にキッと睨まれ目をそらす。

「重だい〜、暑い〜」
どこから声がするのかと不思議がりながら、
布団を乗せた自転車の脇を通り過ぎる。

「山形人さは、ゴミ投げんなていわねどわがんねべぇ」
捨てるな!や置くな!では、山形人にはなんの事かわからない。

「じゃんけんぽん!あっち向いてホイ!」
二人の蔓草は看板を覆い隠し、遊びに夢中。

「バキャーて突然なにごどや?」
「イケネェついつい暑くてぇ。日焼けがイテテ」
看板は日陰に行きたくても逃げ場が無く癇癪を起こしている。

「じっとしてっどやんばいだげんと動くど不快だぁ」
二小のグランドにジリジリ照りつける日差しを眺めながら、顔に吹き出す汗を拭く。

たらーりと地面にたらづく一本。
黄色と緑の縞模様コーンは、じーっと蔓の先を見つめている。

二小の正門前は山交のバス駐車場。
その先はアンダーパス工事中で、今景観が激変中。

太陽が直滑降で地面に日差しを叩きつけている。
ほどなく30度になろうとする街では、エアコンが省エネの言葉に後ろ髪を引かれながら街へ熱風を吐き出す。

「気付いだら街のど真ん中だどれぇ」
タンポポはビル群に見おろされ、少しばかり狼狽しながら風向きを調べる。

「別に重だぐはないげんと、人目があっべず」
自転車にとって荷台の段ボールはかなり目障り。

「お洒落などごさいっど自分もお洒落になたみだいだぁ」
自転車はお洒落なところへ行くのがお洒落だと思い込む。

「暑くて我慢さんねま。え〜とじぇにこじぇにこ〜」
小銭を探す間にも首筋を汗が流れる。

紫外線がぶつかっては弾け飛び、熱気の中を右往左往する。

やっと木陰が恋しい季節になってきた。
女子高生が屈託なく笑いながら通り過ぎる。
屈託だらけ汗だらけの顔で見上げれば、空は晴れ渡り、山形駅はドーンと構えている。

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