◆[上山市]足ノ口・高野・甲石 初夏の発色(2011平成23年5月15日撮影)


リナワールド(山交ランドといった方がわかりやすい年齢)の観覧車と月山を、
不思議なものでも見るようにして雲がゆったりと通り過ぎる。

目を転じれば、上山の市街地が山並みの麓に身を寄せ合ってへばりついている。

「太陽ば浴びんのが、オラだの仕事だがら」
道端のタンポポは太陽にだけ花びらを向け、カメラのレンズなど見向きもしない。

小高い丘に石段が伸びている。
目の前に石段があったら登らずにいられないのは人間の性。

「排水溝さ流っでいぐのば待ってだのがぁ」
「涼しいがらみんな集まったのよぅ」
背中が汗ばむと思ったら、今日は24度を超えたらしい。

「こりゃ凄い大木だぁ」
支えられながらも矍鑠とした体は、緑の光を降り注いでいる。

「赤いべべ着て、ねむかげなのしてねべね」
上山の街並みには興味を示さず、日焼けを気にして屋根の下にいる。

ビニールに反射する光が、初夏の陽光の強さを物語る。

「片眼隠して何しったのや?」
「世の中、見えすぎね方がいいどぎもあっべした」

「なんだて危ないんねがぃ」
「町衆は近づがねごどだな」
黒く脂ぎった体が今まで働きづめだったことを物語る。

乾いた登坂が続く。
影たちは滑り落ちないようにしっかりへばりついている。

自分の艶やかさを見て欲しくて、塀を乗り越え首を伸ばしてくる花びら。

「田舎の香水の臭いするんねが?」
乾いたアスファルトの先を思いながら鼻をヒクヒクさせる。
でも、それよりも強いのは昭和の匂い。

「どだなもんだ?たいしたもんだべ?」
堂々と直立し、誇らしげに青空を突く。

「風雨が壁や障子ばゴシゴシもづぐてったんだべなぁ」
菜の花と青空が、廃屋を慰める。

「うるさくて耳ふたいでらんなねみだいだぁ」
「何にも聞こえねげんとなぁ」
草木がはしゃいで萌え盛り、そのさえずりがワッと覆い被さってくるらしい。

「私綺麗?」
日陰の好きな内気なシャガがそっと囁いてくる。

青い空を山吹色に染めようと、ヤマブキが空をなでつける。

「これだがら都会っ子はダメだずねぇ」
「別に都会育ちでもないし、もちろん子供でもないっす」
なんの木なのかわからず戸惑う私を、赤い花?が悲しげに見つめてくる。

「こごは小学校の敷地だがら、勝手に入てきてダメだぁ」
黄色いペンキで塗だぐられたタイヤは、恥ずかしげもなくぞんざいに注意する。

破れた金網からモダンな校舎を覗き見る。
教会のような塔では風見鶏が風を受けている中川小。

「オラだが水撒いでけねど、土は干上がっべはぁ」
「土さ水撒く前に、オラだの腹がすっからかんだじぇ」
夏日寸前の気温に、如雨露は気が気でない。

「あっち向いだり、そっち向いだり大変なのよ」
常に風に正面から向かう姿勢は大いに買おう。

「あの雲ば引っかげっど、綿飴になるんねがぃ」
火の見櫓は退屈しのぎに妄想を膨らます。

陽の当たる軒下は日差しで白茶け、
軒に日差しを遮られ影になったガラスには、仄暗い室内から浮かびあがる干からびたステッカー。

「なえだて今日は暑いもなれぇ」
手ぬぐいを頭に巻いたおばちゃんは、日差しに背中を押され自分の影を押して歩く。

「喉渇いでわがらねぇ」
「長靴なの履いで、喉の渇きより足の蒸れが気にならねがよ」
繁忙期なので、ドライブスルーの様に飲み物を買い、あっという間に走り去る。

「ありがだい、ありがだい」
両の掌を太陽にかざし、溢れてこぼれ落ちる光を受け止める。

「みな首もがっでかわいそうだごどぉ」
「残たのはオラだ二人だげがぁ」
どんな境遇になろうとも、残った二人は空を見上げて生きていくしかない。

「おっとぉ。勢いよぐ漕いだら足外っだぁ」
すれ違い様に目が合った時は不審の表情だったけれど、手を振ったらバイバイと振り返してくれた。

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