◆[山形市]七日町通り はたらく車大集合(2011平成23年5月5日撮影)


「こだな都会さしぇでくらっで、おらだは食わっでしまうのがぃ」
「山形市民は、山菜ば食う時だげウワバミみだいなんま」
ワラビは見たこともないビルに囲まれ、小さな掌を縮こませる。

「んだがらゆたべ。今日はホコ天だがら車走らねの」
「ホコ天てどっだな天ぷらっだがぁ」
旭銀座を歩く人々に光が降り注ぐ。

「なえだて朝から騒々しいんだげんと何があるんだが?」
「はたらく車大集合っだず」
「今日は休みなのに働いでんの〜」
ポストはイベントの意味を理解しかねたままぽつねんと立つ。

「見でみろほれぇ、何がぶら下がったじぇ」
「食べんの忙しい」
御殿堰を陽光が滑ってゆく。

「これが父親と子供の理想的な休日の過ごし方なんだがらな。わがたが」
「親子愛はお金で買わんねもねぇ」
子供の放つフェイント言葉を、父親はラケットで拾い損ねる。

格子の隙間から皐月の若葉の匂いが漂ってくる。

山形市はこの辺りが中心地だった。
思わず過去形にしてしまった自分を恥じる。もちろん今でも心の中では中心地だから。

「道路のひび割れば数えっだ訳んねんだがら。真剣に仕事してるんだがら」
いつまでもひび割れを見ていると、にゅるにゅる動き出しそうだ。

「ほれ見でみろ、すごいべぇ」
「こさ立ってポーズとるんだがらな」
「ちょどしてらんなねっだなぁ」
子供より親が興奮してカメラを構える様子が手に取るように分かる。

楽器の先端に映り込む人々を見て、指先に緊張が走る。

陽光がここぞとばかりに、軽快な音色へ割り込んでくる。

「お姉ちゃんだ凄いなぁ」
少年の心をグッと取らえる、山形一小の金管バンド。

「こだいいっぱいの人々の笑い声どが、興奮した声どがば聞くの久しぶりだぁ」
「山形さも人がこだいいだなてしゃねっけぇ」
久しぶりの大混雑に、草花は困惑気味。

「そっくりだべぇ?」
「ううう・・・・んんん。あたしの顔てこいなだっけがぁ?」
似顔絵を見て、喜んでいいのか悲しんだほうがいいのか戸惑ってしまう。

「字読まんね、なんて書がったの?」
「路形山うろ、あ、んねっけ」
「このはたらく車は戦前に造らっだんだべなぁ」
字は読めなくても、とにかく親の要望にこたえポーズをとる。

「このタイヤでっかいがら大人なんだね」
「んだら、うちのタイヤは子供がぁ」
傷だらけのタイヤは、休日も子供へサービスする。

「どうでもいいがらよぅ、早ぐオムツ取っ替えでけろぅ。むぐっだはぁ」
この子は誰にも構ってもらえず、全部出し切ってしまい、ほーっと青い空へ息を吐く。

「お母さん来ねねぇ」
「何時間待たせるんだずぅ」
父子は母親がいないと何をしていいか分からない。

人々のざわめきが漂う中、銀杏の葉っぱは少しずつ青みを増してゆく。

「めんごい格好してみろ」
「ほだな分がらねぇ」
父親は子供のめんごさをガッチリとカメラで受け止める。

「くたびっでわがらねはぁ。なにが子供の日だずぅ」
リュックを地面へ降ろし、親に付き合うのも疲れると内心思う。

「こっち見で手振れぇ!」
「おかなくてほだなどごろんねぇ」
「もっと顔出せぇ!」
「ほろげ落ぢるぅ」

「まんずくたびっだなは」
「この雑踏ば見でっど酔いそうだぁ」
「あたしいづまで風船と遊んでっどいいのやぁ?」
山形人は人混みにあんまり慣れていない。

縁石はときたま人々の椅子になる。

はたらく車の脇ではたらく人がいることを、忘れてはならない。

「オレは桜が咲いてから梅雨に入るまでの季節が一番好きだー!」
七日町の中心で陽光を浴びながら、大きな声を腹の底から出して見たくなる。

「地球は丸かったぁー!」
「子供の日だがらテンション高いごど」
伽藍の中を走り回る子供は、今夜ぐっすり眠れる事だろう。

「狭い路地でも楽しい我が家だすねぇ」
「狭くても見上げっど青空が見えんもなぁ」
もう、父親にちゃんころまいされた記憶は遠い彼方へ去り、目の前の親子を眩しく見守る。

「なえだてミラーうがいずねぇ」
「運転中にどご見っか一瞬わがんねぐならねんだべが」
「ミラーうがいのがはたらくプロの車の証だべず」

「はだらぐ車も大変だげんと、はだらぐ父ちゃんもくたびっでるんだじぇえ」
背中に陽光を貼り付けながら、休日の人々を見守るはたらくおじさん。

「冬はいねぐなたんだがぁ?」
「んだぁ、おらだもそろそろいねぐならんなねんだはぁ」
ベンチの下に隠れながら、皐月の風を微かに受けて去る時を知る冬の花びら。

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