◆[山形市]城西町三・四・五丁目 防寒着よさようなら(2011平成23年4月6日撮影)


窓を全開にすると、青空も全開で迎えてくれた。
月山はなだらかな稜線を空の縁に浮かべ、子供達は我慢できずに外へ飛び出す。

「やっと山形のスーパーも落ち着いできたんねが」
「んだぁ、売るほど物あんもの」
陳列棚に並んでいるのが当たり前だった事を、いまさらながらありがたく思う。

「グオオオーッ、ゲホッゲホッ、オラだはなんでも吐き出す仕事だまぁ」
排気口は青い空へ向かって大口を叩き続ける。

「ほごの電柱の影ぇ、オレさおっかがんなず」
電柱は真っ黒い影を青いドアへべったりと押しつける。

「私たちって黄色い糸で結ばれっだっけのねぇ」
「ちぇっとぎっつぐ結ばっで息苦しいげんとなぁ」

ゲートボールの乾いた音に驚いて、花びらがほころびだす城西町のあさひ公園。

「なえだてじょんだずねぇ」
「よくたがっどダメよぅ」
青空の下に笑顔と軽口が飛び交う。

「なんぼ漕いでも影が追っかげでくるぅ」
影は付かず離れず地面を揺れる。

「キャッホーッ!空がグルグル回るぅー!」
引力を引きちぎるくらい思いっきり空へ飛ぶ気持ちよさ。

「こいに天気いいどぎは待ってんのも楽だぁ」
「ポカポカて眠たぐなるぅ」
ゲートボールの終了を待つ自転車たちの数台は眠かげ中。

庭木にも生気が蘇り、
道路へぴょんぴょんと跳びだしていく。

雪のない街並みの心地よさを満喫しながら歩く。
これで余震が無ければ何も言うことがない。

「まんず忙しくて座てる暇なのないのよぅ」
今年も土との対話ができることがありがたい。

「シカシカて眩しいったらぁ」
自転車たちは眩しすぎるブルーシートから顔を背けている。

「どだな隅っこさも春は来るんだじぇ」
小さな花びらは嬉しそうに日差しを浴びる。

「止まれなて言わっだて止まらんねぇ。部活さ遅れんまぁ」
ノンストップで春が押し寄せる街角。

「もうちょっとで空さ届ぎそうなんだげんと」
どこまで追いかけても空は逃げてゆき、どこまでも青く深い。

パキッと晴れ上がった空が、藤棚を定規に見立てて地面へ直線を引く蛍ヶ丘公園。

青空には笑顔が似合う。遊具で遊ぶ親子も笑顔。
桜の枝も体をくねらせて、咲き誇る笑顔を早く見せたがっている。

「だれもいねこめちぇっと休ませでけろ」
枝の影もベンチにもたれかかり、うたた寝をしたくなる。

「あ〜寝だ寝だ。あれっ?もう片一方はどさいった?」
雪融けと共に目が覚めた手袋は、切り株に乗っかり途方に暮れる。

鉄パイプにガッチリ守られ、
小さな土筆が顔を出す。

「ワオオオ〜ン」
「いまのは欠伸が?それとも腹減ったのが?」
こんな空を飛び回ってみたいと、じっと空を見上げる犬ころたち。

全てがのどかに映ってみえる街並み。
あの厳しい光景は夢だったんだろうかと、ふと冬を振り返る。

「痛っだいずぅ、なしてこだな仕打ちば受げらんなねのやぁ」
「オラあ痛さより、腹減ったずぁ」
「オマエだらガスボイドだずねぇ」
紐でくくられぶら下げられる手袋と発泡スチロールは、なんだかんだ言いながらも春の陽気に浮かれている。

「あの丸い建物の中はどうなてるんだべなあ?」
印象的な丸い建物に心が動き、覗いてみたいもんだと思うけれど、
不審者扱いされたら大変だと遠くから眺めるだけにする。

「冬服なの着てくんのんねっけはぁ」
あまりの暖かさに嬉しい愚痴をこぼしながら自転車が走り去る。

「ハウスの中は夏だはぁ。半袖でもいいくらいだま」
冬の間封印されていた半袖という言葉がこそばゆい。

「急げ急げぇ、ゆっくりなのしてらんねぞぅ」
春はわらわら追いかけてきて、あっという間に山形を呑み込んでしまう。

「なんだべその艶めかしい格好は」
「土暖かくて気持ちいいがら寝そべったっけのよぅ」
足を組み、土の付いた尻を露わに見せて寝そべる大根。

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