◆[山形市]小白川町三・四・五丁目 雪に翻弄される街(2011平成23年1月23日撮影)


「轍(わだち)が三本てどういうごどや?」
「すれ違うのが大変ていうごどっだな」
それでなくても狭い笹谷街道が、譲り合いの道になる。

「宝くじでも落ぢっだが?チュンチュン」
「当選くじんねど意味ないべず」
シャッターを切ったら、あっという間に飛び去った。

「ヘラヘラゆてんなぁ、うるさいったら」
「ヘラはオマエだべ」
昔ながらの雪かきヘラが、箒に返り討ち。

寒風に磨かれて、赤い実はツルッツルになって輝きを放つ。

「重だいのよぅ」
腰を軋ませ折り曲げて、老木は雪の重みに耐えている。

大気の中にツララを突き刺しても、
寒風はスルリスルリとすり抜ける。

「でっかい鏡餅だごどぉ」
「でっかいバニラアイスんねがよ」
つべこべ言ってないで早く雪をどけてくれと、フェンダーミラーが助けを呼ぶように手を振ってくる。

「あっちのダンプは良ぐかせぐごどぉ。
オラぁちぇっと休憩だぁ。無理して腰ば痛めでらんねがらよぅ」
黄緑のダンプは、なんだかんだいって動こうとしない。

「相当居心地いいんだべなぁ。いづまでもどげねもの」
雪は寝そべったまま起きそうもない。

私の髪の毛が風に煽られている訳じゃない。
ましてや毛むくじゃらの猛獣の毛でもない。
公園の蔓がモチャラクチャラと空でこごらけている。

「もうちょっとで地面さ届ぐじゃあ」
「届いだどごで、何がいみがあんのが?」
ツララは退屈なので無意味に伸びる。

「つったくて冷え切った鉄棒なの握んのやんだものぉ」
あんまり寒いのでスパイダーマンも現れない。蜘蛛の巣遊具。

真っ白い道路に並べられた樹木の影は、時が過ぎるとともに静かに少しずつ角度を変えていく。

構図も何も考える前に、突然青空がパーッと広がった。
慌ててレンズを向け、撮り終えて深呼吸する。

「性格は歪んでいねんだじぇ」
磨りガラスは何もかも歪んで映し出しながら言い訳する。
雪をどっさり被った枝は、磨りガラスに構うほど肉体的な余裕がない。

「ちょっとでも押さっだら、すぐ落ぢるなはぁ」
「いいかげん腹ばくくって、落ぢろはぁ」
身もだえながらしぶとくぶら下がる氷柱は高所恐怖症?

「氷柱なのばりおっきぐ映していねが?」
「オレは正直者だがら、素直に街の光景ば映すのが仕事なのよ」
おそらく山形市の人口より氷柱の本数の方がず〜っと多い季節。

「長い道のりだっけまぁ」
「これからもまだまだ長いべっす」
ゆっくりと、そーっと、足元をじっと見つめながら歩いてゆく。

白い河原を右往左往し、黒々と細々と遠慮がちに流れてゆく馬見ヶ崎川。

「橋の上はキロキロて、おかなくて歩がんねまぁ」
「ひころんだりしたら大変だもねぇ」
山形の道路はどこもかしこもツルツル艶々に磨かれ、ヒアルロン酸も必要ない。

さっきまで晴れていたのに、愛宕山方面が白く霞んできた。
橋の上では雪片を乗せた寒風が吹きすさぶ。

「冬の山形では自転車は乗るものんねくて押して歩ぐものだもねぇ」
うっかりこんな道路で自転車を漕いだら、あっという間にひころんでしまう。

「ず〜っと立ってんのくたびっだはぁ」
誰かが作った雪だるまは、
作り手が去った途端ガードレールに押っかがる。

「この場所売られんのがはぁ」
せっかくはるばる遠い空から降ってきたのに、
売却地と知って、看板を覗き込みながら雪が戸惑う。

「つったいつったい足つったいニャ〜」
「ほだな汚っだ足のまんまでコタツさ入んのんねべねぇ」
「きれい事ゆてる場合んねっだニャー」

岩肌が頑なに雪や人々を拒んでいるような愛宕山。

粘強(ねっづぐ)絡みついた雪が、公園の入り口で人が入ることを堅く拒んでいる。
「この雪はすごいディフェンス力だずねぇ。今年のモンテディオみだいだぁ」

「なんぼ雪降ったて、日常品は買わんなねもねぇ」
マスクを掛け、スーパーの袋をたがきながら家路を急ぐ。

「雪は10倍もサービスして降らんたていいがらなぁ」
真新しい幟に誘われ、山形人は足元を気にしながら、ポイントカードを握りしめスーパーへ急ぐ。

TOP