◆[山形市]両所宮初詣 穏やかな幕開け(2011年平成23年1月1日撮影)


穏やかに明けた平成23年。
薄日も差し絶好の初詣日和となった。もちろん道路はビジョビジョだが、そこまで山形人は高望みしない。

至る所から新年への希望に胸膨らませた人々が湧きだし、静かだった街に活気が蘇る。

去年から山並みにまとわりついている雲も、新年と知り日差しが徐々に追い払われてくれるだろう。

「元旦からこだい陽が差すなて珍しいもなぁ」
柔らかなベールをまとったような街並みを、薄着で散歩したくなる。

「去年の元旦なて吹雪なんだっけじぇ」
「んだがら吹雪みだいに猛烈な一年だっけどれ。バガみだい暑いっけし、懐は悲しぐなるくらい寒いっけしよぉ」
青空も顔を出し、希望の芽が膨らみ始める山形市内。

「歩行者天国んねんだがらよぅ」
「随分懐がしい言葉ば知ってっずねぇ。七日町なのしょっちゅう歩行者天国があるんだっけぇ」
車の排気ガス天国の道路も、十年後にはどうなっているか分からない。

「あいや、あだっぱい人並んでだじゃぁ」
年の初めから列の最後尾につくのは嫌だが、割り込むわけにもいかない。

「こだんどごさ置がっで、オラだの人生は風前の灯火だぁ」
「風前の灯火どごろが、紅蓮の炎だじぇ」
「オラぁやっこぐなてきたぁ」
「いっだべ。やっこぐなたら誰が食てけんべ」

空に竜が登るように、おみくじが寒風を舞う。

「かぶづいでけっぞー」
「誰もオレの呟きなんか聞いでいねが」
あまりの人出に、口を半開きにして呆れている。

景気が良いから売れるのか、悪いからみんなが求めるのか。
とにかく我先に縁起物を買い求める人々の心理。

「両所宮てゆたら甘酒っだなねぇ」
「冷ったい指先が温まっど安心すんのよぅ」
まずはこれを頂いて喉から心の中へトロッと流し込まないと新年が始まらない。

境内のあちこちから甘酒の湯気が立ち、柔らかい日差しの中へ消えてゆく。

「いがったまんず。これで今年も安心だぁ」
「毎年自分の足で歩いで来るいのは、ほんてん幸せなごどだぁ」
地面や建物の軒先に日差しがこぼれ、初詣を終えた人々の顔から笑顔がこぼれる。

雑踏のざわめきが、つくばいの水面に浮いた葉っぱを微かに揺らす。

「入たが入らねが見えねぇ」
「心配すっごどな〜い〜。神社の人が全部あどがら拾い集めでけっからぁ」
賽銭箱はまだまだ入るから心配するなと大口を開けてどんと構える。

「離すだぐない。幸運が逃げで行ぎそうだも」
「我が儘いうなぁ、他の人が鈴ば鳴らさんねどれぇ」

「ほだいオレの方さ寄ってきて恥ずかしいべず」
「臭ぐないが嗅いでみっだっけのよぅ」
「ほだんどぎしか近づいでこねんだがら」
夫婦はつかず離れず。

「オマエみだぐないったら、たらづいっだどれはぁ」
「オマエなの早くて燃え尽きそうだどれはぁ」
たかが蝋燭にもそれぞれのプライドがある。

「右側の方、何人来た?」
「三千と・・・あぁわがらねぐなたはぁ」
ちゃんと数えでらんねべしたぁ」
賽銭箱前にでんと並んで構える門松が、一人一人をチェックする。

このドロドロが、いかに暖かい元旦を迎えたか如実に物語っている。

ゆるこぐ結ぶ者、ぎっつぐ結ぶ者、それぞれの個性がずらっと並ぶ。

「二回礼して二回手ば叩いで、一回礼するんだがらな」
拝礼の仕方を孫に教えながら、孫の幸せを願うじいちゃんの気持ちに炎も揺れる。

「去年の物なのみな燃やし尽くさんなねっだなぁ」
「去年はろぐだなごどないっけがっす?」
去年の穢れを吸い取ってくれたお守りやお札は灰となり、一年の役目を終える。

「この際だがら、オラぁどだな役目でもするっだな」
駐車禁止の帯をぐるりと巻かれ、
それでも嫌がらない神社の巨木。

「春にはオラだも消えで無ぐなてっべはぁ」
「んだずねぇ。早ぐ寝だほうがいいなはぁ」
去年一年を振り返りながら、葉っぱは静かに眠りにつく。

「なえだて今年は雪降らねくていがったまんず」
「初詣客の出足もバンバンだどれぇ」
さい先良いスタートに自然と顔がほころんでくる。

「早ぐ行がねど神様が待ちくたびっでやんだぐなるはぁ」
「ほだい慌てねったて、神様は逃げでいがねがらぁ」
人出の多さに連られて、自然と足が速くなる。

「早ぐ済ますべはぁ」
「何ほだい急いでんのや?」
「んだて、いまから雑煮作らんなねし、年始にも行がんなねしで忙しいんだがらよぅ」
噴水は人々の会話をかき消すほどに、年の初めから勢いがある。

「去年一年間、ピクリとも動がねでこさいだのが?」
「こだな姿ば、ほだいジロジロ見ねでけねが」
いつの日かピカピカに磨かれ、颯爽と風を切る日を夢見て一年が過ぎた。

「今年の水は冷ったいが?それとも暖かいのが?」
何の答えも示さず、どこを見ているのか分からない目をして、ゆらゆらと波紋を残しながらオシドリは泳ぎ去る。

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